動乱の魔法少女
「私が魔法少女だと......」
ほほほ、季代の乾いた笑いが、響き渡る。しかし誰もそれに同調するものはいない。何故ならば、彼女自身が魔法少女であることを皆の眼の前で証明してみせたからだ。銃弾の防御魔法を無意識に発動することによって。
「言い逃れはできないよ。生徒嬉河季代。すでに調べはついている。やさか、報告を」
見知ったような呼び名で、検事やさかを促す唯依。その呼びかけに検事やさかは、はいと礼儀正しく返事をして帳面を取り出した。
「生徒嬉河季代。本校ヴィヴォンヌ集会会長代理の役職にあるが、それは世を忍ぶ仮の姿。江戸の世に『魔法少女裁判』を取り仕切っていた高家嬉河家の子孫であるにも関わらず、魔法少女として生を受けこの女学校に入学する。その目的は――この国に『動乱』を起こすこと。欧州大戦も終わり、平安に酔いしれるこの帝都で革命を起こし、そして内戦を引き起こそうとしていた――」
「その足がかりとしての聖アリギエーリ高等女学校だったわけだ。日本の華族の子女のみが集うこの女学校で、生徒を洗脳しその思想によって革命の手足とする――まあ、悪くない考えだ」
検事やさかの説明に唯依がそう補足する。
「証拠はすでに収集済みです。油断しましたね。生徒季代」
検事やさかはそう言いながら、風呂敷包みをとく。そこにはいくつもの帳面や写真が山のように重なっていた。
「お前......私を裏切るの......」
季代の言葉に無言で首を振るやさか。
「裏切ったわけではない。やさかは最初から私の部下だ。そして」
後ろを向き、伊集中佐を唯依は一瞥する。
「伊集中佐もな。頭はいいようだが、会長代理は政治には疎いようだ。内務省に現役の陸軍軍人が所属するわけもない。その程度のことも知らずに、革命魔法少女気取りとは片腹痛いな」
ぐぬぅ、と鬼気迫る表情を浮かべる季代。歯ぎしりの音も聞こえる。
「......この国に必要なのは戦乱なのじゃ。わらわが、嬉河家に生まれしは天保の初め。嬉河家では女子は忌むべき魔法少女の赤子とされ、出産まもなく殺されるのが常であった。しかし、父は私を生かした。外国船が来航し、幕府の弱体化も顕になっていた江戸の幕末。いずれくる動乱を予期して、私を『魔法少女』として育てたのじゃ。楽しかったのう、あの幕末の動乱は。あれこそが人間の生きる世界というべきじゃ。欧州大戦が終わりを告げた今、この日本を戦場として亜細亜大戦をひき起こしてやろうかとも思っておったのじゃ!」
禍々しい笑い声とともにそう叫ぶ季代。
すざくは震えながら唯依のそでをギュッと掴んでいた――




