懐かしきかな月曜日
大人になっても月曜日は嫌なものだ。
学生だった頃は、月曜日は憂鬱で退屈だった。また窮屈な箱に押し込まれるのかと、溜息を吐いていた。
それでも、どこか楽しさを感じていた。昨日会った友達や、気になるあの子とか。変わらぬクラスに安堵した。
教室に響く笑い声が絶えない。無邪気に笑うあの子を見た。将来なんて何処にもない。
ただ、今を生きていた。
今思うと、眩しい毎日だった。
あのころは何もかも新鮮で、自由で、空が青く見えた。
今はどうだろう。空を見上げることは減った。
晴れていたら、太陽の熱で体が溶けるような気がする。
あの時漕いだ自転車を恋しく思う。吹き抜ける風は、不安ごと飛ばしてくれそうで、力強くペダルを踏んでいた。
ましてや、雪なんて降ったら通勤の心配をするだろう。
学生の頃は、雪を丸めて空へと投げた。今は触ることなんてない。感じるのは体の凍えだけだ。
通勤中、電車の広告を眺めて、あの時の空を思い出した。
吊革がゆれ、ありもしない風を感じる。ここは教室。空いた窓から暑い熱を感じる。煩く感じたクラスのざわめきが遠く聞こえる。
授業なんて聞いちゃいなくて、放課後何しようとか考えてる。
授業はいつ終わるのかと、時計を眺める。
まだ5分も経っちゃいない。
ここでは無い何処かに抜け出したい。そんなことを考える。
暇だしさて先生の話を聞くぞと腰を据えても、ちらちら時計に目がいってしまう。
「次は勝田駅〜勝田駅〜」
無機質なアナウンスが僕を今へと引き戻す。時計の針は7時半を指している。まだ目的駅には着かない。
いつから日々が色褪せてしまったんだろう。今の方が自由なのに、何も出来ない。
お金があっても、どこか出かけたりなんてない。家でゲームしても笑ったりなんてしない。笑った気持ちになるだけ。
忘れたくないと僕が言う。
大事なものがあったはずだろうと。
どこにいった青春。心が鉄のように重い。
会社に行きたくないなと、腕時計を眺める。
まだ5分も経っちゃいない 。
会社に行きたくない。何処かに逃げ出したい。
海にでも、街中でも何でもいい。
あの5分を思い出させてください。
僕の思い出まで色褪せてしまいそうだから。