6.ProjectH(ハーレム)1:優男への八正道~Yasao is right(モテるためには優男になろう)~その2後半
続き。
―まずいこのままでは『冴英皇、優男化計画』がばれてしまう。うまくごまかさないと。
何と言っていいか分からずもごついてしまったところに栗山の親友の笹野が現れた。
「やっと元気になってくれたか―、くりくり~」
そういって栗山の頭をなでなでする。くりくり、とは栗山のあだ名である。
「うん!身体測定のことで落ち込んでたんだけど、冴英皇くんがそれは私の個性だからいいんだって言ってくれたの!」
笹野は驚いたような顔で冴英皇を見た。
「元気になってよかったヨ!やっぱり栗山さんは笑顔がにあう人ヨ!」
「そうか!ありがとな。お前実は結構いいやつだったんだな!……ところでその変なしゃべり方はなんだ?」
ギクッとする青野。
「ええーっと……これは、その」
「優男ネ!」
―おい!なんで言うんだよ、極秘って言ったろバカ!せっかく何もかもうまくいったっていうのに全部水の泡じゃないか。
「優男?」
不思議そうに聞く栗山さん。
「ハレンチ・ナ・アケチさんの本で勉強してるヨ!」
―誰だよ!もはや原型とどめてないよ。っていうかそこまで言うな!
「ふーん、冴英皇くん。優男になりたいんだ。」
栗山さんが本をじっくり見てから言った。
―今、絶対軽蔑したぞ。だってそうじゃん。女子ってさ『気の利く男子がいい~』とか言いながら、明らかに意識すると『あいつ、あざとくって無理~』とか『なんか女々しい〜』とか言うじゃん。
「でも、私は今の冴英皇君が好きだよ。」
栗山が優しく微笑む。
「えっ。」
―えっ。
予想だにしなかった言葉に冴英皇も青野も驚く。
「冴英皇くんは冴英皇くんのままでいいと思う。
付け焼刃の優男術で私にあんなにやさしくできないもん。もともと冴英皇には思いやりがあるんだよ。
冴英皇くんには冴英皇くんの良さがある。だから無理に変わろうとしなくてもいいんじゃないかな。」
栗山はあっけにとられる二人をよそに
『あっ、次の授業始まっちゃう。私、行くね。元気でたよ、ありがとう。』
と言って笹野と一緒に去って行ってしまった。
その後ろ姿を見送りながら二人はあったかいような、何とも言えないような気持ちになっていた。
「なぁ、晃汰。今日学校帰り池袋寄ろうか。」
「ああ、オレもそう言おうと思ってた。」
万事が丸く収まった……と思われたが実はその裏で二つの事件が巻き起こっていた。
それは数分前の廊下のことである。
『それと一緒ネ!人にはそれぞれに個性があるネ!身長が低いのも栗山さんの個性ヨ!だから落ち込むことはないネ!栗山さんはそのままでかわいいネ!』
教室から聞こえてくる冴英皇の声に一人の上級生が足を止めた。
「あいつ、この間ちょっと話題になってた冴英皇だよな。」
「ああ、一年の。」
「あいつハーフだったんだな。ほら、あのしゃべり方。」
「ほんとだ!まえから純日本人にしては整った顔してるな―って思ってたけど、ハーフだったんだな―。納得。」
とんでもない思い違いが起きていた。
「そういえば今度の英語ディベート大会一人欠員でたって困ってたよな。ハーフなら英語喋れるだろ。補欠冴英皇でいいんじゃないか。」
「それはいいアイデアだな、そうしよう。」
とんでもない思い違いがとんでもない事態を生んでしまっていた。
英語力皆無の純日本人冴英皇優翔が英語ディベート大会で大ピンチになるのはまた別の話である。
(そもそもハーフが全員英語喋れるというのもとんでもない思い違いである。)
そしてもう一つの事件。これは数分前の教室で起こっていた。
『やっと元気になってくれたか―、くりくり~』
「おい、見ろよ。笹野さんが冴英皇たちと楽しそうに話してるぞ。」
「おい、まじかよ。笹野さん大人っぽくていいなって思ってたのによ。」
「オレも笹野さんクールな感じでタイプなんだよ。なんたって急に。」
「よくわかんねぇけど、冴英皇たちから『優男』ってワードが聞こえるぞ。」
「笹野さんは『優男』がタイプってことか?」
ここでも飛んでもない思い違いが起きていた。
「『ハレンチ・ナ・アケチ』ってワードも聞こえてくるぞ。」
間違いはさらに拡散されていく。
正しくは『レンアイワ・ダ・メンチ』である。(ぶっちゃけどうでもいいけど。)
「冴英皇なんかに負けてらんねぇ。俺たちも『優男』になってやる。」
「そうだー!」
「やるぞー!」
かくして地獄の『1年E組全男子優男化計画』が始まるのだった。
前半、後半両方読んでくださりありがとうございました( ^∀^)
相変わらず勢いだけの作品です笑
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