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5、Project H(ハーレム)1:優男への八正道~Yasao is right(モテるためには優男になろう)~その1

やっと本編に入れます!

が、想像以上にくだらない内容になりました。

ま、コメディだもんね、なんでもアリよね。


寛大な心でお読みください。


まだ日が昇りきらない早朝の1年E組の教室に全身を漆黒に包んだ二人の男がいた。


「ブツは手に入ったか?」


二人の男は黒いサングラスにマスク姿、いかにも怪しそうな格好だ。


「ああ、ばっちりだ。でも、高くつくよ。」


答えた男は紙袋を取り出した。


「手に入れるの苦労したんだよ、“““一週間でマスターできる優男の極意~改定版~”””」


怪しい男その1――青野が満面の笑みで分厚い本を袋の中から取り出した。


「おお~、すげぇ――!これが伝説の恋愛師『レンアイワ・ダ・メンチ』の最新作!」


怪しい男その2――冴英皇は目を輝かせる。


「うん、なんか恋愛ダメそうだけど……。大丈夫だよな……?」


冴英皇に言われるがままに“““一週間でマスターできる優男の極意~改定版~”””を買ってきた青野は早くも不安になる。


「なに言ってんだよ、彼こそはハーレム界に誇る画家、彫刻家であり科学者、技術者、哲学者としても名高い偉人。あらゆる方面に能力を発揮したため、恋愛における典型的な「万能人」と称される、『メレンゲ・デ・ポンチ』!!」


―うわぁっ、うさんくさ!ヨーロッパルネサンス期にそんな画家いたよね。きてる気がするのは気のせい?そもそも……


「『レンアイワ・ダ・メンチ』じゃなかったのかよ!どっちにしろダメそうじゃねぇか!」


青野は勢い余って“““一週間でマスターできる優男の極意~改定版~”””を机に叩きつける。


「やめろ。これは貴重なものなんだ。晃汰だって手に入れるの苦労したって言ってたじゃないか。」


「絶版だったからね!」


「………」


一瞬、時が止まった。


「さぁさぁ、早く勉強を始めよう。


『優男になるために絶対に外せない“八正道”

 其の一、人の気持ちを優先

 其の二、困っている人を見たら声をかける

 其の三、聞き上手

 其の四、言葉選びが慎重

 其の五、怒っても表に出さない

 其の六、人として尊敬される

 其の七、感謝の気持ちを持って生きている

 其の八、「ね」「よ」で会話文を締める   』


なかなか参考になるね!」


―そうか?なんか8つめ無理やりじゃね。数あわせにしか見えないけど。


「『優男になるための基本は八正道を極めることだが、レベルアップするためにはさらなる厳しい規律を守る必要がある。それこそが“四諦”

 

 其の一、自分を主張しない

 其の二、汚い言葉を使わない

 其の三、髪を染めない

 其の四、池袋に行かない  』」


―やっぱり最後だけ数合わせ感が否めねぇ!


「『四諦の真理に目覚め、八正道の実践を行うことによって、苦悩から解放された涅槃の境地を目指す』」


―もう優男忘れて涅槃とか言っちゃってんじゃん。この本虚偽と剽窃の権化だろ。

(この夜、冴英皇は夢の中に現れた仏陀さんに腹パンされたのでした。)


「なかなか厳しいな。でも、この厳しい規律を守抜いた先にきっとオレのモテ男人生が待っている!」


―うん頑張って(棒)


そんなこんなのうちに人気のなかった教室にも生徒が集まってきていた。


「優翔、早速実践だ。くれぐれもこの計画のことは言うなよ。あくまでも『自然に』だ、いいね。」


「わかってるって」


青野は優翔のウインクを軽くよけた。


「そうしたんだい、三条君。何か悩みがあるのなら言え。」


これは『“八正道”其の二、困っている人を見たら声をかける』の実践である。


ーよし、一つ目クリア。


「このチョー絶クールでイケてるオレ、冴英皇が話を聞いてあ……」


青野は急いで『“四諦”其の一、自分を主張しない』のページを遠くから指す。


「いや、失礼。悩みがあるなら聞くよ」


机に突っ伏していた三条が顔を上げる。


「実は、恋愛研究会の部費が削減されることになったんだ。俺はこの活動証明書をもって講義しに行った。毎日のモテ男観察録、数多の恋愛相談解決実績、恋占い信憑性検証。あれにはオレたちの活動成果がぎっしりと書かれてた。

でも、あれを見た先生は生徒の成長が期待される活動が見受けられないって破り捨てたんだ。僕たちは青春を捧げて恋愛を研究しているというのに。」


「お前らそんなことに青春捧げてるの。バカじゃない。」


―お前も似たようなもんだろ!


青野は心の中で冴英皇にツッコミをいれると


『“八正道”其の一、人の気持ちを優先

     其の二、聞き上手    』


の項目を指さす。


「って、いうのは冗談で、それは災難だったね。君た

ちの頑張りを無下にする先生たちはひどいよ。」


慌ててフォローに回る冴英皇。青野は素早く手でグッジョブマークを送る。


「わかってくれるか。これはある種の暴力だと思うんだ。何が生徒の役に立つかは先生の決めることじゃない。僕たちは理不尽な理由で行動を制限されたんだ。」


三条の言葉に熱がこもる。


―いい感じで話を聞き出せてる。


青野は小さくガッツポーズをする。


「大丈夫、オレは君の味方だ」


「本当か!オレが恋愛相談にに紛れて女子たちにカップ盗み聞きしてるって言っても。」


ーはぁっ?変体だろ。それは否定しろ冴英皇。


「ああ、問題ない。オレだっていつも聞いてる!」


―おい!何適当なこと言ってんだよ、バカ!

 (これは冴英皇の名誉のために言っておくが決してそんなことはない。彼は相手の気持ちを考えることに必死なのだ。)


「実は女子更衣室2回くらい覗いたといっても?」


―お前はお前で何やってんだよ。人間として腐ってる

だろ。部費削られて当然だろうが。


「全然問題ない!なんだったらオレなんて下着と体操着盗んで額縁に入れて家に飾ってる!」


―問題だらけじゃねぇか!いい加減ちょっとは否定しろ!周りの女子たちが睨んでるじゃんか。

(もちろん冴英皇に盗みの趣味はない。彼は聞き上手になろうと必死なだけだ。)


「僕なんて盗んだ体操着を常に触ってたいからハンカチに作り替えたんだ。ほらこれ!」


ーキモッ!気持ち悪ぅ〜。さすがにないわー。


「ナイスアイディア、センスの塊~!」

冴英皇はハイテンションで三条の方に腕を回す。


ー誰かあいつを黙らせろ。


「心の友よー、ああ、嬉し涙が。」

何故か泣く三条。熱く抱擁2人。


ーオレが泣きたい。


必死に『全部を肯定しなくてもいい』という落書きボードを掲げる青野の姿はもう冴英皇の目には入らない。


―おお、オレ今いい感じに優男になれてるじゃん!


あまりにも上手くいったので冴英皇は有頂天になっていた。



――パシン!


ふいに冴英皇の頬にクラスの女子の平手打ちが炸裂する。


「サイッテー」


それだけ言い残すと女子は教室を出ていった。


ぶたれた頬を涙目でさすりながら冴英皇が青野のもとに帰ってくる。


「なんでなんでなんで。オレ今ちゃんと優男だったじゃん。三条の気持ち考えて心の中で思った『キモイ』とか、『変体』とかいう言葉のみ込んだよ。あいつのこと傷つけないように気を付けたよ。なんで―!」


冴英皇は地団太を踏んで悔し涙を流す。


「あのね、『其の一、人の気持ちを優先』『其の三、聞き上手』は付和雷同しろってことじゃないの。相手の気持ちを推し量りながら正直に自分の意見を伝えればいいの。それが相談にのるってこと。」


青野は今目の前にいるバカが小学生であるかのように優しく諭す。(小学生でもこれしきのことわかると思うが。)


「そうか、わかった反省する。」


―素直なことだけは取り柄だな。

「オレ今まで世界はオレ基準に回ってるって思ってたから人に気を使うとかよくわからなかった。これから気を付ける。」


―前半すっごくむかつくこと言ってたけど後半に免じて許してやろう。


「おい、ちょっと待てよ。じゃあ、本当は僕のことキモイって思ってたのかよ。う、うわぁ~ん」


―あ、忘れてた(by冴英皇)

―あ、忘れてた(by青野)


大声をあげて泣き叫ぶ三条を見て二人は顔を見あわせる。


「あー、ダメだこれは」

「あー、ダメだこれは」



この後二人は放課後まで三条を慰め続けた。

無事仲直りして家に帰るころには、真っ赤な夕日が三人に長い影法師をつくっていた。



最後まで読んでいただきありがとうございました。


こんなどーしようもない作品ですが少しでも面白いって思ってくださったら嬉しいです。


星、ブクマ、感想いただけると励まになります。

(↑どの口が言うんでしょうね笑)

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