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002 謎の超パワー!

 ああ……もうダメだ……


 真司は頭をフル回転させて突破口を見出そうとするが、良い考えが思いつかない。

 自分はこのままここでゴブリンに殺されるのか……


 「お母さん……イリヤちゃん……メイちゃん……」


 エレナが絶望し、泣きながら膝から崩れ落ちる。

 

 この子もゴブリンに殺されるのか……


 前から、後ろから、合計10体のゴブリンたちが近づいてくる。ゴブリン達は一切のデフォルメが施されていない、恐ろしい風貌をしていた。まさに、全ての生物を殺すためだけに存在する魔物。そんな風に感じられた。


 このまま諦めても良いのか?


 なぜだろう?

 真司は気分が次第に高揚しているのを感じていた。命の危険を目前にしておかしくなってしまったのだろうか。


 どうせ、殺されるなら……


 普段なら、こんなこと絶対に考えない。考えるわけがない。

 真司はエレナを守るように前に出て、ファイティングポーズを取った。


 「シンジさん……なにを……?」

 「かかってこいやあ!」


 真司が叫ぶ。と同時に、前方のゴブリンたちが飛び掛かってきた。


 「うおおおおおおっ!」 


 真司のテンションが最高潮に達する。

 ダメで元々。真司は右手を硬く握りしめ、先頭のゴブリンに向かって殴りかかった。

 

 真司の右手はゴブリンの棍棒を砕き、ゴブリンの胸部に叩きこまれた。

 衝撃でゴブリンは口から緑色の血を吐き、大きく後ろに吹き飛ばされた。

 

 「次!」


 続いて襲い掛かってくる前方の4体のゴブリンの胸部と腹部に、同じようにパンチを叩きこむ。ゴブリン達は血を吐いて倒され、動かなくなる。


 「後ろ!」


 前のゴブリン5体を倒した真司は、後ろから襲い掛かってくる先頭のゴブリンの頭に飛び蹴りを浴びせる。グシャ、という音と共にゴブリンの顔面が潰され、動きが止まる。

 残るゴブリンは4体。 

 しかし、残ったゴブリン達はその場から逃げようとする。


 「逃がすか!」


 真司は大きく跳び上がると、4体のゴブリンを飛び越えて着地する。

 

 「おりゃあっ!」


 逃げるゴブリンの顔面にパンチを叩きこんで潰す。残り3体。

 無駄な抵抗を試みる2体のゴブリンの頭を掴み、勢いよくぶつけて叩き割る。残り1体。

 地面に這いつくばって震えるゴブリンの腹を思いっきり踏みつけて貫く。

 こうして、襲い掛かってきた10体のゴブリンは倒された。


 「ふー!」


 大きく息を吐いて、真司は落ち着きを取り戻す。

 よくわからないけど、何とかなったようだ。ゴブリンを殺すことができた。

 とりあえずエレナに話しかける。


 「大丈夫ですか、エレナさん?」

 「は、はい……」


 何か恐ろしいものを見るような目で、エレナは真司を見ている。


 「どうしたんですか?」

 「シンジさん……あなたは一体何者なんですか?」

 「え?」

 「す、素手で魔物を殺せるだなんて……まるで化け物です……!」


 化け物。

 真司は自分が戦った跡を見回す。

 口から血を吐いて動かなくなったゴブリン。

 顔面や頭を無残に潰されて動かなくなったゴブリン。

 そして、腹部を貫かれて動かなくなったゴブリン。

 残虐な方法で殺されたゴブリンたち。そして、ゴブリン達を虐殺したのは――


 「う、うわあああああっ!」


 真司は腰を抜かして地面に倒れこんだ。その両手と両足は、緑色の血で汚れていた。

 真司がやったのだ。真司が残虐な方法で、ゴブリン達を殺したのだ。

 最初の5体はしょうがない。襲い掛かってくる以上、殺すしかなかった。

 跳び蹴りで倒した奴もしょうがないかもしれない。

 だけど、残った4体は……最初逃げようとした。

 無理に追いかけなくてもよかったはずだ。

 真司はだんだんと分かってきた。

 高まるテンションの中で、自分は殺すことに快感を覚えていた。壊すことに快感を覚えていた。

 その事実に、真司は自分自身が恐ろしくなった。

 自分は、化け物だ。

 殺すことに、壊すことに快楽を覚える化け物だ。


 「お、俺は……何を……!」

 

 真司は助けを求めるようにエレナの方を見る。しかし、エレナの方も恐ろしいものを見るような目で真司の方を見ている。


 「エレナさん! 教えてくれ! 俺は一体何者なんだ?」

 「し、知りませんよ!」

 「俺はこの前まで普通の会社員だったんだ! なのに、なんでこんなファンタジーな魔物を殺せるようになったんだ?」

 「わかりません!」


 お互いに大きな声で叫びあいながら、答えの出ない問答を繰り返す2人。

 すると遠くから、小さな明かりが見えた。

 

 「おーい、エレナー! いるのかー?」


 エレナを呼ぶ声が近付いてくる。

 真司とエレナは声のする方を向く。

 銀色の鎧を着て剣で武装した兵士たちと、普通の恰好をした男たちが数人、真司たちの方へ近づいてきた。


 「お父さん……!」

 「エレナ! また勝手に教会を抜け出して……」

 「だってお母さんたちを探し出したかったんだもん!」


 エレナが彼女の父親らしき人物に抱き着く。

 真司も立ち上がり、彼女の父親に近づいた。

 エレナは父親の背中に隠れる。


 「すみません、エレナさんのお父様ですか?」

 「そうだが……君は?」

 「本村真司と申します。神隠しにあいまして、この街に飛ばされました」

 「神隠し……? にわかには信じられないが……それよりも……」 


 エレナの父の視線が真司の両手両足に向けられる。そして周囲に転がる、ゴブリンの死体に向けられる。


 「シンジさん、といったか。一体何があったんだね?」

 「はい、お話いたします」

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