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短編集 冬花火

蛍火の灯す天の川

作者: 春風 月葉

 七月七日、残念なことに夜空には美しい天の川が流れていた。

 今日の夜空は雲のひとつもなく、それ故に星がひときわ良く見える。

 せっかく今夜は愛し合う二人、織姫と彦星が会えるというのに、こんなに多くの目に見られていては語らい合うこともできないだろうに。

 それほどまでに人の心を引く彼らの美しさも罪ではあるのだろうが、やはり愛し合う男女の再会の邪魔はしたくない。

 皆が笹の葉に短冊を掛けている夜、私は役目を果たしてしまった軒下の照る照る坊主を取り外し、同じ軒下に短冊を掛けた。

 次の年には雲が夜空を隠しますように。

 どうせならもう少しくらい星の川を見ていたかったのだが、私は静かに部屋の明かりを消した。

 横になっているとなにやら北の方がちかちかとしているのに気がついた。

 身体を起こしてみると六月に貼り換えたばかりの障子がどうしてか光っている。

 夏虫の灯火だろうか、障子に浮かぶ無数の光はまるで小さな天の川のようだった。

 空の大河に比べると小さな川ではあるが、私はこの天の川に魅入られた。

 この障子の先には織姫がいるのだろうか。

 そんなことを考えながら、私はすぅと眠りについた。


 翌朝、私の頭は北向きに倒れており、障子を開けると無数の蛍が絶えていた。

 織姫はいない。

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