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その8

仕事の合間に更新作業が出来ました。

今後も頑張ってみます。

 その後、昼食を挟んで昔話に花が咲いていた。

 要約すると、ビルボ氏は実は魔王討伐パーティーに加わっていた、所謂勇者の一人らしい。

 だが実態は、曽祖父ちゃんや叔父ちゃんのサポートで無理くりレベル上げを手伝ってもらったエルフで、大戦後半までは役立たずだったとか。

 だが、レベルが1600を超えた辺りからかなり戦力になり手伝えるようになったらしい。ゲームで言う所のパワーレベリングだ。

 しかも、現在ではヒューマン最強なのだとか。

 この世界、特にレベルの上限は存在しないらしい。もっとも俺はレベル1だから関係ないけど。

 「そう言えば叔父ちゃん、レベル幾つなの?」

 試しに聞いてみる。

 「俺? 9だよ」

 「儂6~」

 二人とも一桁だった。こりゃレベルアップは望めないな。

 「あ、でも向うの世界で色々あったから一つくらい上がってるかも…」

 「あ~…」

 確か、退院した後、道場で剣術と杖術、鉄砲術に砲術の皆伝を貰ってたっけ。

 鉄砲術と砲術はおまけみたいな物だ。単に師範より詳しいので貰ったみたいな話だったはず。

 この人、ライターとしての専門が小火器だったはずだし、そもそも道場では幕末以降、鉄砲術も砲術も伝える人が居なかったらしい。

 「なぁ武志ぃ~、儂にもその一里も先が撃てる銃を作ってよぉ~」

 曽祖父ちゃんが何か甘えた声を出す。

 「俺はガンスミスじゃないから無理……和樹に頼んでみ、スコープ位なら作れるかもよ。そいつ発明のスキル持ってるし」

 見ただけで解るのかい!

 「「スコープ?」」

 ビルボさんと曽祖父ちゃんが声をそろえた。

 「遠射用付的望遠鏡」

 叔父ちゃんが簡潔に日本語名を言う。

 曽祖父ちゃんはちょっと考えて何だか解ったようだが、ビルボ氏はまだ解らないらしい。

 「曽祖父ちゃんの使う武器の上に取り付ける望遠鏡の一種で、中に狙いやすいように標があるんです」

 ビルボ氏に助け船を出す。

 と、ビルボ氏は

 「それ、弓にも付きます?」

 この人も食いついたよ…

 「無理だと思いますよ。サイトやスタビライザーなら出来ると思いますけど…」

 言った後、周りを観たら曽祖父ちゃんとビルボ氏が、尻尾を振る仔犬のような目でこっちを見ている。

 叔父ちゃん、諮ったでしょ?

 「それはさておき、お前発明は解るとして、何でもう一つが絵画なの?」

 スキルが読めると解った瞬間から、聞かれるかな~、とは思っていた。

 「え~と、実はアニメを作ってみたくて…」

 叔父ちゃんが下を向いた。しばらくして顔を上げる。

 「…そこかよw」

 苦笑いである。

 人の事は言えないよね! 言えないよね!? この人、若い頃から中々仕事が定まらなくてコンピュータ関連の設計技術者、俺と同じテクニカルライター、プログラマーやアニメの制作進行、脚本やゲームデザイナーまでやっていたらしい。お婆ちゃんの話によると心配で仕方が無かったとか。

 「叔父ちゃんのスキルは?」

 話をそらすために聞いてみる。

 「あぁ、攻撃補助と防御補助、あと魔法防御に物作り」

 見事に戦闘特化かと思ったが、最後の物作りで引っかかる。

 「物作りって?」

 微妙に目をそらした叔父ちゃんが応える。

 「ほれ、鍛冶とか木工とか、そういうの」

 叔父ちゃんが言うとビルボ氏が後を続けた。

 「私の弓もタケシ様が作ってくれました。コンポジットボウとか言う、天下無双の弓です」

 キッパリと。

 ジト目を叔父ちゃんに向ける。さっきの復讐だ。

 「叔父さん。スコープの作り方やレンズの作り方を知らないはずありませんよね?」

 二匹の仔犬の目が叔父ちゃんに向く。

 「ムリムリ! この世界軽金属ないし、透明ガラスも貴重だし、まして削り出し加工何か…」

 騙るに落ちたな。

 その後、夕刻まで擦り付け合いが続いたw


 夕食、四人で食卓を囲む。

 和やかな雰囲気が部屋に漂う。

 それぞれの食卓には盃まである。ビルボ氏はワイン、俺と叔父ちゃんはウイスキー、曽祖父ちゃんは日本酒。

 「酒…飲んで良いの?」

 叔父ちゃんに聞く。アル中で入院していたはずである。

 「ん? あぁ、一度こっちに来たら完全に治った」

 そういうオチか。異常に回復が速いとは聞いていたけど。

 「ウイスキーや日本酒ってこの世界にもあったんだね…」

 酒のバラエティーの豊富さに感嘆を述べる。まぁどちらも15世紀にはあった酒なので余り驚きは無い。

 「無いよ」

 叔父ちゃんがサラッと言った。

 「俺が作ったんだもん」

 物作りのスキルって酒も作れるのか? 幅が広すぎだろそれ。

 「作り方を広めて下されば良いのに」

 ビルボ氏が言う。

 「一回教えようとしたよ? でもドワーフって頑固で人の言う事聞かないじゃん? あいつら嫌いw」

 解る気はする。ビルボ氏もアチャ~、みたいな表情だ。

 「醸造ってやっぱりドワーフなんですか?」

 ビルボ氏に聞いてみる。

 「はい、醸造ギルドに所属しているヒューマンは9割以上がドワーフですね。エルフは独自にワインを作ることがありますので少しいます、残りは人間で主にじゃが芋からアクアビットと言う火酒を作っています」

 何か聞いたことあるぞ、アクアビット。

 「ウナギを食う時のあれか?」

 叔父ちゃんの言葉で思い出す。ヨーロッパのどこかでウナギの燻製を食べるときに飲む酒だ。安い物は食べた後、油まみれになった手を洗うのにも使うらしい。

 ビルボ氏は首肯していた。

 「マールやグラッパ何かドワーフもエルフも『出来るわけない』で聞く耳持たなかったよ」

 何か聞いた事の無い名前が出てきた。

 「何それ?」

 聞いてみる。

 「お前、ワインがどうやってできるか知ってる?」

 聞かれたので知っている事を応える。

 「ブドウの果汁を絞って置いておくと自身の酵素で醗酵を始めて、それを寝かせた物」

 叔父ちゃんは笑顔になる。

 「で、その酵素は糖化を即すだけでアルコール発酵は酵母がやるんだけど、ただブドウ全体にあるものだよね? だから搾りカスに水を加えて発酵させて蒸留酒が作れるんだ。ちなみに日本酒でもできる。酒粕から作った酒を『なおし』って言う。両方とも生産量が少ないから高級品だよ」

 全然知らなかった。いろいろ詳しいなこの人。

 「ちなみにセルロースかデンプン、糖分のどれかがあればアルコールは作れる。日本じゃ赤紫蘇や玉ねぎ、牛乳なんかの焼酎が売られているし、モンゴルじゃ馬の母乳から作った醸造酒や焼酎がある。前者は馬乳酒、後者がアルヒ、今は作る人が少ないらしいけどね」

 あんた小火器が専門じゃ無かったのかい! と突っ込みたくなった。正直酒の本を書いても売れるんじゃないのだろうか?

 と、叔父ちゃんの顔が真面目になる。

 「さっきの話なんだけど…」

 また蒸し返すのか?

 「不可能ではないとは思う」

 仔犬二匹の目が輝く。が、何か歯切れが悪い。

 「軽金属って言うとミスリルしか思いつかない。あれって削れるのか?」

 ビルボ氏が途端に真顔になる。

 「ミスリルを削るのですか…聞いたことがありません」

 叔父ちゃんも真顔でこっちを向いた。

 「例えば、スコープを作るには外側の筒、レンズそしてレチクルを付けるためのガラス板が必要になる。だが、工具が無い」

 ちょっと嫌な予感がしてきた。

 「ガラス板は結構簡単、溶けた錫に溶けたガラス原料を浮かべれば良い。スコープ用なら大した大きさもいらないから簡単にできるだろう」

 「ただ、筒を作る旋盤とレンズ研磨機はどうにも…」

 ちょっと考えてから、

 「旋盤は何とかなるかも。構造も知っていますし。レンズ研磨も手でやる気なら…」

 言った途端、ビルボ氏が、

 「レンズなら有りますよ。望遠鏡なんかに使います」

 一瞬で叔父ちゃんが却下した。

 「そんな精度じゃ使えない」

 と。

 続けて「旋盤の構造知っているのは良いけど、バイト(削る刃)はどうするの? 電気もないからモーターは使えないよ?」

 「あ……」

 そこまで考えてなかった。

 「現代の旋盤の刃って?」

 一応聞いてみる。

 「ファインセラミックだよ。発明できる?」

 無理だと思う…

 「で、弓用のスタビライザーとサイトだけど、作れはするだろうが俺構造知らないぞ、火器じゃないし」

 しばし考えてから。

 「構造は知っています。それほど複雑な物でもないし。ただゴムって有ります?」

 聞いてみる。

 「近い物はあるよ。ただ、スタビライザーってステンレスじゃないの?」

 との応え。確かにステンレス製だ。

 さすがに合金組成の知識までは無い。

 「戻ったら調べて来て…」

 泣きついた。

 「時間かかるよ。喪服から5分で着替えて戻ってきたらもう日付が変わってるし」

 そりゃそうか。時間の流れが全然違うんだこの世界。

 叔父ちゃんが入院していたのは3か月くらい前だし、それが500年とかになっちゃうんだ、この世界は…

 「あと、言いにくいんだが……」

 何だろう?

 「アニメ作るならカメラも映写機も精密レンズは必須だよね? 頑張れw」

 忘れてたよ、そんな物!

 「あと、セルもなw」

 物凄く険しい道だと言う事を自覚してしまった夕食だった。

 酒飲んで寝よう…

久方ぶりの物書き作業なのですが、読んでくれている皆様、感想を言ってくれる皆様のお蔭でライターになったばかりの頃を思い出します。

大変励みになりますし嬉しいばかりです。

有難うございます。

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