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その18

少し遅れましたが更新です。

晩飯食べたら眠くなっちゃって、そのまま寝てたらこんな時間にw

 二階にある息子さんの寝室。

 ベッドの上に息子さんはかなり具合が悪そうだ。

 エルフは元々細面で色の白い人が多いが、頬がこけて青白い顔をしている。

 老師は瓶の栓を抜くと、自作のポーションを息子さんの口に流し込んだ。

 何かちょっと嫌な感じがしているので、探知系のスキルの全てを全開にして見守る。

 ポーションを口にした息子さんは劇的に顔色が良くなって行く。

 老師もホッとした顔である。

 「これで一安心じゃわい」

 言葉を発した老師を制して、

 「待て、何か変だ…」

 病気自体は治ったようだが、その病気の原因になっている何かが1%位残っていると、俺のスキルが告げている。

 全身をくまなく探索してみると、何かが左手の先の方にあった。

 左手を見ると中指に精緻な紋様が意匠された指輪があるのでそれを抜き取る。

 と、息子さんの異常はきれいに消えた。

 「これは?」

 指輪を見た老師が、

 「確かフォルモッサ家の当主から貰った物だと言っていたが…」

 見覚えがあるらしい。

 「フォルモッサってのは貴族?」

 首肯しながら、

 「確か伯爵家だったはず」

 その言葉に顔をしかめた。

 「これ、呪いの指輪だよ。息子さんの病気は全部これのせいで簡単には解らないように偽装してある」

 老師の瞳が見開かれる。

 「どうするね?」

 問うと、

 「錬金術師に喧嘩を売った事、後悔させてやる…」

 呟いた。

 「では、この指輪は預かる。後顧の憂いなく何でもできるように手配しておこう」

 言うと老師が頭を下げた。

 「本当に有り難い、何度も何度も命を救われた上にこのような事まで……」

 頭をなかなか上げない老師に向かって、

 「気にすんな、俺も気にいらねぇ…」

 言うと、顔を挙げた老師はニッコリと悪い笑みを浮かべていた。


 老師の家を辞去した俺は、急いでダラムの露店へと戻る。

 「よう! 待たせて済まん。色々あってな」

 声をかけるとダラムは、

 「あ、何が有ったか心配していました…」

 ホッとした様な顔を見せた。

 「まずこれ、バイラル老師から貰った売上代金」

 大型の革袋を差し出す。覗いて見たがおそらく大金貨で400枚前後だろう。

 受け取ったダラムは中を覗いて、

 「え、え、え?」と声を上げている。相場が思っていたより高かったらしい。

 「後、これ約束の品」

 言いながら枇杷の葉、枝、丸太を出して行く。

 「どこに置くね?」

 丸太が邪魔なので言うと、後ろから声がかかった。

 「俺が買うからそこに置いてくれ!」

 見ればドワーフだ。家具系の人なのだろう。

 が、横合いから次々に声がかかる。

 「卑怯だぞ!」「俺も買う!」「こっちにも寄越せ!」等など。

 ダラムに向かって、

 「処理できる?」

 と聞くと、小声で、

 「任せて下さい」

 言ったのでとりあえず辞去する。

 その足で一等街区へ向かった。余分な手間だ。


 二等街区から一等街区への門衛は普通に通してくれる。

 武器は帯びていないし、ギルドの証明もあるからだ。

 そのまま歩いて王城へと向かう。

 城門へと向かう橋の手前に衛視が立っている。その衛視に、

 「私の名はタダシ・ミヤザキ、王への謁見を賜りたい!」

 宣言する。

 衛視が怪訝な顔をして応える。

 「痴れ者が、去れ!」

 カチンと来て宣言。

 「押し通る!」

 言い放ってから、そのまま進もうとすると槍を向けて来た。無視して進む。

 背中にツンツンと感触があるので、振り向き様に裏拳を放ったら二人が綺麗に消し飛んだ。

 橋を渡ると城門前にも何人かの衛視がいる。

 同じ宣言。

 「私の名はタダシ・ミヤザキ! 王への謁見を賜りたい! 文句があるなら押し通る!」

 全員が武器を構えた。

 自分の来ている服は、下手なフルプレートアーマーより防御力が大きい。通常の武器では傷も付けられないだろう。

 先程の様子を見ていた衛視たちは煮え切らない様子。

 なので、

 「やるのかやらんのか、はっきりしろ! 王に伝言できないなら殴り殺すぞ!!」

 大声で言い放った。

 全員が固まる。

 ちょっと待っても動きが無いので、

 「押し通る!」

 宣言して城門を蹴り飛ばした。

 ぶっ壊れた門扉が奥の方まで飛んで行く。色々と巻き込んだ様だ。

 そのまま無人になった廊下を進んでいくと、王の謁見室の扉が見えて来たので、その前で立ち止まりぶん殴って壊した。

 中に居た人間は呆然としている。

 なので乗り込んで大声で言った。

 「我が名はタダシ・ミヤザキ! かつて「撲殺の勇者」と呼ばれた者だ! 王への謁見を求めたら非礼の数々、何とするか!」

 玉座にいた男が一瞬で気を取り直し大声で叫んだ。

 「騙り者を殺せ!」

 面白い。近衛らしき奴らがワラワラと湧いて來る。

 数がそろった辺りで言う。

 「面白い、確認すらしないのか? 皆殺しにしてやろうw 死にたい奴から掛かって来い!」

 宣言してから棒立ちで待つ。

 数人の近衛が槍で突いて来た。が、槍は通らない。

 二人の兵は、すぐに槍を手放し剣に持ち替える。そして一人は脳天を、もう一人は首を狙ってきた。

 敢えて何もせず、そのまま受けてやる。

 衝撃音とともに二振りの剣がはじき返され、ついでに変な音が続いた。見れば頭に当たった剣の方は半ばから折れている。

 当たり前だ。前の大戦で俺の事を傷つけられたのはヒューマン、モンスター、魔族を含めて一種類だけだった。

 グレーターデーモンとか言う何処かのゲームで聞いた事のある、悪魔の出来損ないみたいな奴だけ。あいつの使う魔法、小型の核爆発を起こす奴は流石に火傷をした。

 「どうした? そんな物か?」

 言うと兵の顔に脅えが走る。

 委細構わずに右の拳に全力を載せフックを放つ。

 目の前にいた、俺を攻撃してきた兵達が衝撃波に巻き込まれ、鎧ごと挽肉になりつつ左手の壁に叩きつけられる。

 ついでに轟音と共に壁に大穴が開き、余波で室内にいる俺以外が尻もちをついていた。

 俺に敵意を向けたヒューマンに関しては別に何の痛痒も感じない。

 「で、貴様も挽肉になりたいわけだ?」

 近付きながら言うと、王の顔が赤蒼を行き来している。

 「人の事を騙り者とか言いやがったな、このべらぼう野郎。この城まとめて更地にしちまおうか? 舐めてんじゃねぇぞこの餓鬼が!!!」

 怒鳴った瞬間、王と側近、室内の兵が気を失った。やりすぎたかしら?


 王が目を覚ます。俺はすぐ側でそれを見下ろしていた。かなり冷たい目つきだっただろう。

 慌てて起き直った王が凄い勢いで土下座する。ちょっとカチンと来て頭を蹴り飛ばしたくなったが何とかこらえた。

 謝るなら初めからやるなよ。

 「……も、申し訳ない! よもや本物の勇者様とは思わず…」

 更にカチンと来て、無言で相手の両耳を持って持ち上げる。

 俺の方が背が高いので、王の足は床から10cmばかり浮いていた。

 「…ぁ…ぅ…ぃ…」

 何やら声にならないうめきを上げている。人間、本気で痛いと声が出ない物だ。

 「何を上から目線で物をくっちゃべっている? 餓鬼! そんなに殺されたいか?」

 言いながら手を放すと、膝と腰が砕けて尻もちを付いた。腰が抜けたと言う奴だろう。

 「今日はちょっとした話が有って来ただけだ…」

 言うと王はコクコクと頷いている。

 ポケットから指輪を取り出し王の前に投げる。

 「フォルモッサの当主から、バイラル老師の息子に送られた品だそうだ」

 王が手にとってしげしげと見る。結構好奇心は旺盛なようだ。

 「あまり長く持つなよ、呪いの指輪だから」

 言うと王が慌てて投げ出した。

 「その指輪をはめると、病を招いて人には解らない様に相手を殺す事が出来る物だ」

 「何と!」

 間髪を入れずに王が返事をした。

 この国では呪いの類は禁忌である。使った物は死罪になるのが普通だ。

 「ではフォルモッサを死罪に…」

 顔色を変えて言う王の言葉を遮って、

 「いや、バイラル老師に考えがあるらしい。今後フォルモッサの家に何が起こっても一切口出ししないで欲しい」

 言うと、何とか立ち上がった王は蹲踞の礼を取りつつ、

 「あい解りました…」

 約束してくれた。

 「それにしても伝承に残る撲殺の勇者様、なかなかに凄まじい。何かあった時は連絡が取れるのでしょうか?」

 こいつ、切り替えが速い。頭が良いらしい。

 「俺の祖父の家は解るか?」

 「はい存じています…」

 やっぱ知られているか。

 「そこに連絡をくれれば何とかなる。今は甥もいるし」

 言い終えて王に起立を促すと後で大声が聴こえた。

 「貴様! 何奴!!」

 一秒かからずに背後まで来て剣を抜いたのが解る。

 「ま、待て…」

 王が慌てていた。

 背中にかすかな衝撃があった。三つ位のスキルが乗っている様だ。

 「背後からとは騎士の風上にも置けぬ卑怯者、名を名乗れ!」

 ゆっくりと振り向きながら一喝する。

 一瞬怯んだ様だがすぐに立ち直り、

 「ルクク・キルだ痴れ者!」

 和樹じゃないけど斜め上が出てくるよな、この世界の名前。

 「面白い、相手をしてやろう! 下へ下がれ」

 言うと素直に玉座近くから下のフロアに降りた。当然俺も続く。

 「そ! その者は…」

 言おうとする王を左手で制する。

 「好きに掛かって来い、小物」

 言い放つと、一瞬怒りの表情を見せたがすぐに元に戻り、切りかかって来た。かなり速いので余裕で避ける。

 避けまくっていると「この卑怯者!」と言ったので「受けて欲しければ受けてやる」と言って立ち止まった。

 相手の息は多少切れているが問題ないだろう。

 「来い…」

 静かに言うと今まで以上の速度で詰め寄って来る。別にこの程度なら問題は無い。

 多分だが、必殺の一撃的な物が右上から来た。渾身の一撃なのだろう。

 なので、それを右手で無造作に掴んで見せる。そのまま握ると押すも引くの出来ない様子だ。

 「どうした小僧? 何も出来んか? こんな事も出来るぞ?」

 言いながら、相手の剣を掴んだ右手に握力を込める。握った所がバラバラに崩壊して剣が折れた。

 「お前に本物の剣技を見せてやろう…」

 言ってから尻のポケットから大太刀を取り出して抜き放つ。

 そして無言で振ってから鞘に戻した。

 ポケットに太刀を戻している間、相手も何が起きたのかは解らなかったらしい。

 ルククがちょっと動いた瞬間、身に纏っていた鎧兜が四散する。

 「王が、お前の命は助けてくれと言ったので、特別に目こぼしだ。だがお前、武器防具に頼る癖がある。それでは王など護れんぞ」

 静かに指摘してみたら、ルククが崩れ落ちた。

 尻のポケットから、同じタイプの剣を一振り取り出し、ルククの目の前に放り出す。

 「くれてやる、それがまともに振れる様になったら声をかけろ。防具もくれてやる」

 「だが貴様、武器防具に頼っている節がある。もっと己を鍛えろ!」

 後に「ば~か」と言うのが付いていたのは内緒だ。

 王はほっとしたように蹲踞の姿勢で言う。

 「この度は非礼の数々の上に、我が配下の将軍にまでご指導の義、感謝のしようも御座いません。数々の御無礼も大恩を持ってご容赦の程、感謝に堪えません」

 何か解りやすい奴で助かる。

 「そこまで畏まらなくても良いよ。まぁ、友人として接してくれればありがたい位だよ」

 王もルククも結構びっくりしていた。

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