表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/28

その17

ちと体調を崩して寝込んでいました。

お蔭で更新が滞ってしまい申し訳なく。

 翌日は三人とも別行動だ。

 叔父ちゃんは朝一で家を出た。

 俺と曽祖父ちゃんはもっと後の予定だ。

 カララさんもキッチンで朝餉の支度をしている。本当に朝から晩まで良く働く人である。

 曽祖父ちゃんと居間で茶を飲みながら色々と話す。

 色々と叔父ちゃんの子供の頃の話など聞けて面白い。流石守護霊だった人、産まれた時から知っているらしい。

 他にも射撃のコツやら、大工のコツ等、色々と教えてくれる。

 何か楽しいひと時だ。

 そんなこんなの話をしている内にカララさんが朝食の支度をしてくれた。

 トーストに目玉焼き、バターとコンソメスープらしき物まで付いている。結構豪華。

 曽祖父ちゃんの方は目玉焼きの代わりに、何か瓶に入ったジャムらしき物が添えられていた。

 ん? と思い声をかけてみる。

 「カララさんは一緒に食べないの?」

 慌ててカララさんが、

 「いえ、私は使用人ですし…」

 と答える。

 「一緒に食べようよ。みんなで食べた方が美味しいよ?」

 言うとカララさんはキョトンとしていた。

 曽祖父ちゃんの方を見ると、小さくコクンと頷いている。

 カララさんは小さく、

 「…はい」

 と言って照れくさそうな顔をした。

 「あ、ついでにソース持ってきて」

 キッチンへ向かうカララさんの背中に声をかける。

 目玉焼きはソース派だ。

 と、そこまで思考を進めてから、ふと思った。この世界にソースはあるのだろうか?

 が、カララさんは、

 「はい」

 返事をしてキッチンへ消えた。良かったあるらしい。

 カララさんは、御盆に自分の食事とガラスの瓶を載せて戻ってくる。

 内容はほぼ同じ。目玉焼きではなく、スクランブルエッグになっている。

 席に付いた所で「「「いただきます」」」

 朝食が始まった。


 街は朝から賑わっている。この街を一人で歩くのは久しぶりだ。

 しかし昨日は久々に本気で飲んだ。ウオッカ一本に細々色んなのを一升くらい飲んだ。

 爺ちゃんも同じくらい飲んでいたような気がする。和樹も結構飲めるらしくグラッパとアルヒを一本ずつ飲んでいた。

 カララまで日本酒一升にワインを二本ペロッと飲んでしまった。かなり行ける口だったらしい。ついでにラムネも三本飲んでいた。

 気に入ったらしい。

 また作って置こう。とは言ってもラムネは簡単(炭酸と砂糖、酒石酸、もしくは柑橘果汁があれば良い、ラムネの語源はレモネードだ)なのだが、生ワインの白が面倒くさい。

 この世界には白ワイン用の白葡萄がないので、赤ワイン用のブドウの皮を剥いてから搾汁しないとならない。結構な手間だ。

 品種改良って簡単にできるのかなぁ? 戻ったら白葡萄の歴史を調べてみよう。

 そんな事をつらつらと考えながら歩いていると、ダラムの露店が見えてくる。

 露店を広げようとしている所だった。その脇にはバイラル老師もいる。

 はえ~な、オイ。

 少し足を速めて露店へと向かう。

 「おはよう!」

 二人に声をかけると二人がこちらを向く。

 「あ、旦那!」

 「待っておりました!」

 そんなに火急なのか?

 まだ何も商品が無い露店にポケットから出したロックウッドの樹皮を置く。

 「これ約束の品」

 「おぉ、乾燥具合も最高じゃ…」

 バイラル老師が呟く。

 「でも旦那、これ、取り扱いが少ないらしくて調べても相場が解らないんです…」

 ダラムが困った顔で言う。

 「聞けば?」

 言いながら老師を指さしたら、老師は、

 「全部言い値で買い取るから言え」

 無茶な事を言い出した。

 「急ぎなのか?」

 老師に聞くと、

 「せがれの容体が悪化して、今日明日が山なんじゃ…」

 あぶねぇ事を言い出す。

 「すまん、この店を通した事にしておいてくれ、あとで顔を出す!」

 言いながら樹皮をポケットに戻して老師に声をかける。

 「おっさん、おぶされ!」

 一瞬躊躇した老師だったがすぐに背におぶさった。

 「しっかり掴まってろよ!」

 言い置いて石畳を蹴って建物の屋根に上がり、走り出す。屋根を本気で蹴ると抜けるので、その辺の加減は忘れない。

 行先は老師の家。昨日和樹が貰っていた名刺を見ている。

 三分程だろうか、建物の屋根を走る、と言うより飛び跳ねつつ老師の家の前に着地した。

 何か背中から「…あぅ、あぅ…」みたいな声が聞こえてくるが気にしない。

 老師を下ろしてから、

 「しっかりしろ!」

 老師の目に一瞬で光が戻る。

 「あぁすまん。ちょっと驚いただけだ」

 言った老師はすぐに扉を開けて中へ入った。続けて自分も入る。

 入って二部屋目が工房だったようだ。すぐに続いて入りながら、樹皮を取り出す。

 老師は無言で炉に火を入れ、作業を始める。

 そして、急に口を開く。

 「すまんが、その樹皮を粉にできるか? 量はこれに一杯程度でかまわん」

 大型のお玉を見せる。

 「乳鉢は?」

 老師が指さしながら、

 「そこに並んどるのなら、どれを使っても構わん」

 指さす方を見れば、様々な大きさの乳鉢と乳棒が並んでいた。

 その中から、比較的大きな乳鉢と乳棒を持ってきて目の前に置く。

 樹皮を取り分けてナイフでコマ切れにして放り込むと、ゴリゴリと粉末にして行く。ちょっと力加減を間違って微細粒までやってしまったのは内緒だw

 その作業を、老師の言った分量を越えるまで繰り返す。作業自体は簡単だった。

 しばしして、色々と作業を続けていた老師が、

 「できたか?」

 言ったので、完成品を目の前に出す。

 「これで良いだろうか?」

 老師は刺してあった乳棒で軽くかき混ぜ、

 「充分以上じゃの。タダシ様は儂に弟子入りするつもりはないか?」

 振り向いて作業を続けながら言う。

 老師の作業は、一見するとかなりアバウトに見える。計量することなく材料を入れて混ぜていくからだ。

 ロックウッドも乳鉢から直に注ぎ入れて適当な所で止める。

 2、3度かき回すと、ほんのひとつまみを足した。

 「別に研究したいことはないしなぁ…」

 老師の肩がちょっと落ちた。

 老師がかき回している鍋の中の薬液は、段々と色が薄くなって行き、最終的に薄い緑色に落ち着く。

 やっと手を止めた老師は、手にしていた撹拌用の棒を鍋から出すと流し台へと持って行った。

 「そうか、それは惜しいな。タダシ様ならきっと稀代の錬金術師になれるぞ」

 別に錬金術師になる気は無いし、必要なポーション位なら作れる。

 「時に甥御殿はどうじゃろ?」

 あいつも結構、小器用だし覚えも早いのでなれるだろう。だが、

 「それは本人に聞いてくれ」

 としか言えない。

 親戚とは言え、他人の人生に口を挟むつもりはない。若い頃散々やられて嫌だった事だからだ。

 ライターの道を選んだ時も色々と言われた記憶がある。往時、家の周りが結構うるさい場所だったので夜中に仕事をしていた。

 初めの頃は雑誌記事くらいしか仕事が無く、当然俺が書くような雑誌は親類は読まない。親父だけは献本のあった銃器類の専門誌は良く読んでいたが。

 最終的に「甲斐性無しの蝙蝠野郎」とまで言われた。

 だが、仕事も増えて自分の名前で本が出版されたり、TV番組のエンドロールに名前が出るようになると、全員が一斉に掌を返す事になる。

 ついでに知らない親類や覚えのない自称友人が湧いた。お蔭でペンネームを使うようになったくらいだ。

 そこまで応援してくれていた姉や義兄と伯母、大叔父夫妻以外はすべて縁を切った。かなり心が軽くなって自由に仕事が出来るようになったのは副産品だろうか?

 食い下がってくる奴には「いえ、わたくし『甲斐性無しの蝙蝠野郎』ですので、と言うと皆黙ってしまった。

 そんな事を思い出していたら目の前にいる老師が立ち上がる。

 鍋の中を眺めて、

 「ん、もう良かろう…」

 どうも今まで煮詰める工程だったらしい。

 炉の火を落とし、ポーション瓶と片手鍋を手に大鍋に近づき、鍋で中身をしゃくってポーション瓶に注ぐ。

 一滴もこぼさないのはかなり器用だ。

 キュッと瓶にコルクで蓋をして急ぎ気味に部屋を出ていく。後に続いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ