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その16

ちと、本職の方が忙しくなって来たので、隔日更新になりそうです。

申し訳ない。

 「あの、これ…」

 カララさんが言いかけた所で叔父ちゃんが、

 「飲んで良いよ。高いもんじゃないし」

 値段で言ったらカララさんが飲んでいる日本酒の方がはるかに高いだろう。

 ラムネを手に取ったカララさんが繁々と瓶を見る。

 「これ、どうやって飲むのでしょう?」

 そう言や、ラムネって開栓する道具が無いと開かないんだっけ。最近のペットボトルのは口を逆ネジにひねると開くが、これは見事に一体成型のガラス瓶とゴムパッキンで出来ている奴だ。

 「栓抜きあるの?」

 叔父ちゃんに聞くと、

 「バカだな、ラムネ何かこうやって…」

 言いながら瓶の首を握って口から親指を突っ込もうとした。

 「太くて入んねぇ…」

 バカはどっちだw

 「やると思った。それが出来るのは子供の内だけだ」

 曽祖父ちゃんから情け容赦のない突っ込みが入る。

 「こう持って人差し指でポン」

 曽祖父ちゃんが手つきを見せると、叔父ちゃんは無事ガラス玉を中に落とした。

 「瓶から直接飲んだ方が美味しいよ。で、その時こっちを下にしていると飲みやすいの」

 瓶の首の下に付いたへこみを指さして見せる。

 カララさんは軽く小首をかしげてしてから瓶に直接口を付けて飲む。

 一気に半分くらいを飲み干して、やっと瓶を口から離す。

 「こ、これ美味しい!」

 珍しく大きな声を出した。

 「炭酸の泉のようで、甘くて酸っぱくて! 瓶の口当たりもいいし、言われた通りに飲んだら玉が口に転がってこない!」

 何かグルメリポーターみたいになっている。そう言えば炭酸水って自然に湧いている事もあるんだっけ。

 「で、話を戻して曽祖父ちゃん? さっき叔父ちゃんが指で栓を開けようとした時『やると思った』って言ったよね? やった事あるでしょ?」

 一気にたたみ掛けてみたら視線をそらした。やったのねw

 「これ、売り出したら大ヒット間違いなしですよ!」

 カララさんが言っている。

 「面倒くさいからヤダ」

 とは叔父ちゃん。

 「何故なのでしょう?」

 カララさんが直球で訊ねた。

 「ん~、実は中身と瓶は簡単に作れるんだが、ガラス玉とパッキンがなぁ…」

 この世界の物作りは精度にあまりこだわりが無いみたいなので、確かにガラス玉は難しいかも知れない。球形にするのって確か特殊なプラントがいるはずだし。

 「ゴムって代用品があるんじゃ?」

 聞いてみる。

 「あぁ、その代用品が問題でスライムの核なのよ」

 ちょっと驚く。やっぱりスライムもいるのね、見た事ないけど。

 「スライムを倒すと核が残るんだけど、これがスーパーボールみたいな性質なの」

 確かにゴムだ。

 「で、工業製品に使う分には問題ない。さっきの靴の踵とかスライムの核と皮を積層構造にしてある」

 変わった素材なのね。

 「ただ、食品関係、特に飲料関係に使うと復活しちゃうことがあるんだ。前に酒の栓に使ったら『酒スライム』って新種が誕生した。ラムネスライムとか嫌だろ?」

 よ~く解ったw

 「ゴムを探すしかないのね?」

 何かカララさんが話を聞いてしょぼくれている。

 「熱帯の木だからな~、ゴムって、あるかどうかも解らないし」

 確かに面倒臭い。でもまた何か違和感。

 「アレ? じゃあこのラムネどうやって持ち込んだの?」

 こちらに無い物は持ち込めなかったはずだ。

 「瓶とガラス玉、中身は自作、パッキンについてはこちらの世界にある素材と誤認させるようにして持ち込んだ」

 との話。

 「その方法じゃ無理なの?」

 と聞くと、

 「おそらく大量に持ち込むと、色々ヤバい事になるだろう」

 と言う返事だった。そう簡単には行かないらしい。

 何となくションボリしているカララさんにワインを勧めてみる。

 「こっちも美味しいよ」

 と、栓を開けて渡す。

 気を取り直したように、カララさんは受け取ったワインをグラスに注いだ。

 一口くちにしてからパッと表情が華やぐ。

 「あ、これも美味しいです…酒精のある美味しい葡萄ジュースみたい!」

 以前飲んだ時の自分の感想も同様だった。

 微炭酸入りの葡萄ジュース、リンゴ果汁で作るシードルみたいな感じだ。

 「こっちは?」

 と、白ワインを渡してみる。

 「違うんですか?」

 と不思議な顔をしてから、ちょっともたついて栓を開ける。

 さっき俺が開けていたのをちゃんと見ていたようだ。

 そしてグラスに注ぐと、

 「あら? 黄色いワイン??」

 そう言えばこちらに来てから白ワインを見た記憶が無い。

 叔父ちゃんが、

 「こっち、白ブドウが無いんだよ」

 意外な事を言った。アレ、ヨーロッパ原産だよね?

 「わ! これフルーティーですごく美味しい!」

 気に入ったようで何よりだ。

 「結構美味しいでしょ?」

 言うとカララさんは満面の笑顔で、

 「ハイ!」

 と答えてくれた。この人の笑顔を見たのは初めてかも知れない。

 叔父ちゃんも嬉しそうな顔で見ている。

 そうして家族団らんの夜は更けていった。

 ちなみにアルヒは美味かったw

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