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その15

三が日が過ぎたので更新。

少しお休みを頂きました。

 その後、ギルドの入り口で、ビルボ氏、ジン氏とは別れを告げ、また三人で街を歩く。

 「晩飯食っていくか?」

 との叔父ちゃんの言葉に、首肯する。

 曽祖父ちゃんも頷いていた。

 「何か食いたいものはある?」

 との問いに、こちらの料理は詳しくないので両手を挙げて降参のポーズを見せる。

 すかさず曽祖父ちゃんが、

 「中華!」と言い放った

 あるのかよ、中華料理が。

 三等街区の城壁近く、路地を一本入った所にその店はあった。

 どう見ても中華料理屋な外見。看板にも龍が踊っている。

 しかもご丁寧に店名は日本の漢字だ。

 日本の漢字は戦後に整理されて、今の略字になった。中国では古い繁体字や、庶民が使う簡体字と言う別の文字が使われている。

 「国」の文字は日本の旧字や中国の繁体字では「國」と書く。

 中国向け輸出品のマニュアルを作った事があるのでこれを知った。お蔭で校正が大変だった。

 店内に入ると、結構な盛況だった。ほとんどの席が埋まっている。

 叔父ちゃんが店員に何事か囁くと、奥の個室に案内された。

 何と回転テーブルである。確かこれも日本発祥だったような?

 席に着くとすぐに、お茶がポットごと出て来た。一杯目は店員さんが給仕してくれる。

 茶碗を見ると何やら番茶のような色合い。口に含むと花の様な香りと甘みが広がった。

 美味い!

 叔父ちゃんの方を見ると、

 「凍頂烏龍茶、あっちでは主に台湾で作られている烏龍茶の仲間でこの店の名物の一つなんだ」

 解説してくれた。

 その後、曽祖父ちゃんはラーメンライスに餃子、叔父ちゃんは炒飯に麻婆豆腐、自分は迷って麻婆茄子と回鍋肉、そしてライスを頼んだ。叔父ちゃんが北京ダックとピータン、白酎(マオタイとか言っていた)を追加する。かなり強い酒だったはずだ、気を付けないと。

 父の話によると叔父ちゃんはかなり酒が強いらしい。「ありゃザルを通り越して枠だ」と言っていた。

 あまり一緒に飲んだ事は無いが、ウイスキー1本くらいは平気で飲んでしまった事が有ったらしい。そりゃアル中にもなるよ。

 待つ事もなく、グラス三つと酒、そして突き出しが出される。酒はボトルごと、突き出しはお馴染みの西瓜の種だ。

 「ここ、経営が日本人なの?」

 西瓜の種を剥いて口にしつつ、グラスを傾ける。かなりきつい酒だった。

 「何か創業者は日本人だったらしいけど、今どうなっているかは知らない。でも美味いから良く来てた」

 簡素に答える叔父ちゃん。

 その内、注文の料理が次々と回転テーブルに並び始める。

 それぞれが飯、飯とラーメン、炒飯を確保した後は適当にシェアしながら食べる。

 確かに美味い。まるで中華街の名店の様だ。

 テーブルがすっかり空になると、叔父ちゃんが給仕を呼ぶ。

 「ごちそうさま、美味しかった。勘定をお願い。あと辻馬車呼んで」

 言いながら銀貨を一枚握らせる。

 なるほど、この世界のチップの相場はあんな物なのか…

 変な所で勉強になった。


 辻馬車は、日本で言う流しのタクシーだ。

 料金はそれなりにするが、日本のタクシーほど高くは無い。もっとも日本のタクシーが異常に高いだけなのだが。

 帰りは、その辻馬車でゆっくりと帰る。実はこれに乗るのは初めてどころか、馬車に乗るのも初めてだ。

 家に戻るとメイドさんが出迎えてくれる。

 「お帰りなさいませ。旦那様方」

 無口だけど礼儀正しい人だ。

 「飯は済ませて来たので、酒の支度だけしてくれ。つまみは軽い物で良い」

 曽祖父ちゃんが言うと「はい」と小さくお辞儀をしてキッチンの方へ向かった。

 居間でくつろいでいると、すぐにつまみとグラスが並べられる。

 つまみは、漬物らしきものが数種類、見た事の無い野菜もあるが見覚えのあるものもあって、どう見てもらっきょうらしきものが目を引く。

 他に豚の角煮らしき物、焼きたてのスルメまであった。

 「この世界、何でもあるのね…」

 口に出すとメイドさんが、キョトンとした顔を見せる。

 「ほとんどがタダシ様の手作りですが?」

 しまった、そのスキルを持っていたんだっけか。まぁ元々料理は得意だったけど。

 料理は母よりも上手だったはず。大概の料理が玄人裸足だと聞いた記憶がある。

 一時期、何が気に入ったのか蜂蜜を使って密造酒を作ったりしていた。ミードと言う奴である。

 叔父ちゃんの談によると、他人に売ったりしなければ税務署も無視してくれるそうだ。

 もっとも、叔父ちゃんは味見位しかせず、知り合いの小説家さんがほぼ全て持ち帰ったそうである。話を聞いた父が悔しがっていた。

 「良かったカララさんも飲まない?」

 メイドさんが目に光を輝かせて「はい!」と言った。この人も酒好きかいw

 だが、ちょっと待て。今のやり取りの中で何かが引っ掛かったぞ?

 グラスを持って戻って来たメイドさんが席に着く。

 「ねぇ? もしかして、お名前はカララ・アジバさん?」

 メイドさんに聞く。

 「はい、左様ですが?」

 そっち行ったか。また斜め上だw

 「儂、焼酎」

 「私、ライスワインが良いです」

 注文通りのお酒を叔父ちゃんがポケットから出して行く。

 「俺、グラッパっての飲んでみたい」

 以前話題になっていたお酒を言ってみる。

 「あるぞ~w」

 と言ってワインボトルを出してくれた。

 自分の前には琥珀色の液体が入った透明な瓶を出した。瓶自体はウオッカのボトル程度の大きさだ。

 「何それ?」

 聞いてみる。

 「スタルカ」

 聞いた事の無い酒だ。語感からしてロシア語らしいけど…

 「出来上がったウオッカにブランデーを入れて寝かせた物だよ」

 との返事が返って来た。

 以前は大量に輸入されていたらしいが、アルメニアの地震で蔵元が直撃を受けて生産体制が崩壊したらしい。

 仕方がないので自分で作ったとか。

 それぞれに手酌で酒を注ぎ、乾杯をする。

 「そう言えばカララさん、カズキに名乗って無かったんだ?」

 叔父ちゃんが言う。

 「はい、私の部族では女性が請われて名を名乗るのは婚約の標になりますので…」

 怖えっ! 偶然とはいえ聞かないで良かった。

 肝心のグラッパは? と言えば、葡萄の風味が確実に残っている高級な焼酎と言った感じだ。スタルカも味見させてもらったが、こちらは物凄く美味いウオッカみたいな。ウオッカの角が完全になくなっている上にブランデーの風味がある。

 「他にも珍しいお酒ってあるの?」

 叔父ちゃんは、尻を少し上げてポンと叩き、

 「地球の殆どの酒はそろっているぞw」

 笑顔で言う。

 「アルヒとかも?」

 聞いた瞬間に目の前に出る。持ってたよ、この人。

 「井〇生ワイン!」

 赤白揃って出た。

 「最後にラムネ!」

 勢いで言ってみたらちゃんと出たw

 しかも冷えている。

 「何でも入ってるのね、そのポケット…」

 俺の言葉に叔父ちゃんは、

 「流石に何でもは入ってないよ。歴代総理とか言われても出てこないもん?」

 そんなの出して何するんだよ! 心の中で突っ込んで置く。

 「タケコプターとかは?」

 試しに聞いてみた。

 「あれなぁ、この世界なら作れるかもしれないけど…」

 「けど?」

 「お前、首で全体重支える自信ある?」

 ちょっと想像したら怖かった。

 それにしても検討はした事あるんだ…

 曽祖父ちゃんは何の話か分からずにポカンとしている。

 カララさんはと見れば、ワインとラムネを凝視している。

 そしてオズオズと、

 「あの、この瓶は何でしょう?」

 あぁ、確かにこの種の特殊な瓶はこの世界にはないかも。

 「こっちは醸造途中のワイン、瓶は日本で昔使われていた形式の物なの」

 昔、日本にはコルクが無かったのでゴムで密栓するために考え出された瓶である。

 ゴム製のキャップとそれを押えるための金具、そして金具を絞めるための太い針金と梃子の原理を利用した密栓取っ手が付いていた。

 ご丁寧に、その取っ手を効率よく取り付けるために瓶の首に横向きにガラス製の管が付いている。

 かなり厳重に密栓できるのだが、手間がかかるために最近ではほとんど作られていない。

 初期の国産ワイン、明治期の日本酒、まだ薬とされていた牛乳等がこの瓶で売られていたらしい。

 「でこっちはラムネと言って、酒精は入っていない炭酸の飲み物。甘みと酸味が付いてるの」

 瓶はお馴染みのガラス玉で蓋をするあれだ。

 ちなみに中のガラス玉はビー玉ではなくエー玉だ。元々、ビー玉はこの瓶の栓として開発された物で、傷が無く真球に近い合格品をA、不合格品をBとしていた。

 なのでA玉、B玉と言う言葉が出来て、使い物にならないB級品を子供の玩具として売ったのが始まりらしい。

 以上、全部叔父ちゃんの受け売りだったりするw

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