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M9

 現実世界に戻ったと思ったんだ。だけど、戻っていなかった。また、俺は全裸で手枷をされて朝を迎えている。そこには魔女エスリードがいた。


 俺は立ったまま、両腕は頭上に束ねて縛られていた。身体をまさぐられている。そこは、そこはあまりいじらないでほしい。性感帯が。


「ようやくお目覚め? さあ、調教の時間ね」

「あ、あん」


 こうして異世界生活は再び幕を開けた。もしかしたら、現実世界なんてのは俺の記憶違いで、この異世界こそが元々、俺の故郷だったのかもしれない。そう、思えてきた。うぅ。痛い。全身に激痛が走る。


 鞭でしばかれるのは、これで二回目になる。魔女エスリードの顔を見ようとした。だが、できなかった。それはその筈だろう。だって顔には舞踏会で付けるような仮面を被っていたのだから。全身は黒いキャットスーツ。なんだか、前に見た光景だった。


「なにをぼけっとしてるんだい。この豚野郎!」


 鞭で叩かれて痛い。ダメだ。萎える。この人はエスのことをなんにもわかっちゃいない。エムを気持ちよくしてこそ、このシチュエーションが活きるっていうのにっ。ただ、痛いだけのプレイなんて、俺は望んじゃいない。お前はなんにもわかっちゃいない。


「俺は、やり直す。イドラも殺さない。お前も気絶させない。ただ、お前が、もっとも望んでいることをしてやんよ。お前は本当にクソ野郎だな」


 そう言い捨てて、俺は、魔女、否、女王さまに忠誠を誓った。色んなことを要求されたが、全部受け入れた。ハイヒールの底を舐めたり、汚いおしっこをぶっかけられたり、目隠しをされてずっと股間を痛めつけられたり、木馬責めをやらされてケツが三つに裂けたこともあった。本当に苦行だった。


 それから、やっと拷問部屋から解放された。壮絶で刺激的な経験をした。それから、俺はエレナのところに向かった。きっと、あのお屋敷に住んでいるんだろう。


 ノックをした。


「どちら様ですか?」


 鈴を転がすような、綺麗な声が聞こえた。それが、俺をみた瞬間に急変することはもう、自明のことだと思う。


「あなたが好きな者です。もしくは、大嫌いな者です。その名を八代夢黒と言います」

「……」

「まだ、会ってないよね?」

「会ってるっつーの! 自分勝手に出て行って寂しかったんだから!」

「あれ……デレ……てる?」


 ドアはまだ半開きだ。デレてるのか。珍しい。きっと、これからすっごい怒られるんだろうなと思う。いったい、どんなことでキレられるんだろう。楽しみだなと感じて、思わず鼻で笑ってしまう。


「なに笑ってるんだよ?」

「これからのことを考えてた」

「ん? で、これから、どうするつもりなんだ?」

「結婚しよう」


 俺は笑った。彼女は、うざったそうな笑みを浮かべてこう言った。


「私まだ十五歳だっつーの。それ、犯罪になるんじゃない? お前、死刑になったらいいね」


 ドアが全開しその魅惑の肢体をさらけ出す。顔をみると赤く腫らした瞼が際立っていた。白いドレスが、日差しを浴びてキラキラしてる。胸元から見える蠱惑的な谷間とか、そんなものが見えて目がやられてしまいそうだ。


「でも……素直に嬉しい、かも」


 そんなことを言って、俺を奈落の底から呼び戻してくる。たまに、すごくピュアで素直な彼女を見れた時、心の底から、愛おしいなと思う。なんで、そんな言葉を俺にかけてくれるのだろう。


 そういえば彼女の耳は獣の形をしているんだ。すっかり忘れていた。そんなことすらどうでもよく思えるぐらいに、どうでも、良かったのだろう。これで、良かったのだろう。これで、俺は報われた。


「成人したら、いっぱい子供をつくろうな」

「この変態が! 死ね! お前のそういうところが、大嫌いだよ!」

「ああ、俺もエレナたんのそういうところ大嫌い」

「じゃあ話しかけんな。消えろ」

「殺すか?」

「呼吸困難にしてやるよ」

「首絞めかよ」


 俺は首に両手を回された。殺されると思った。


「しゃがめやボケ」

「こうですか」

「そうだよ。これでお前を殺しやすくなった」

「さ、さいですか……ん」


 首を絞められた。やばい頚動脈が圧迫されて……。そして……、くちびるを重ねた。俺は、死んだかと思った。あまりにしては表現が弱いけど、あまりにも唐突のことで頭が熱くなっていた。呼吸困難になりそうだ。ほんと、こいつは……。


「これで私のこと、好きになった?」

「いいや。もっと、嫌いになった。ウザい。あんまり近寄んなよ。気になるから」

「だよな」


 なんだか、笑った。こうして、こんな感じで何気ない日常が過ぎていくのだろう。……そういえば、あのリタイアはなんだったのだろう。ふと疑問に思った。リタイアで『はい』を選択したのに、俺は元の異世界に戻されただけだ。


 もしたらあの『リバイバル』という呪文が関係しているのかもしれない。まあ、伏線は回収できるほど、人生はあまくないよなあと自己完結させて、これからもエレナたんと仲睦まじく暮らしていくとしますか。


 ほんと、回収以前に、ほとんど伏線がないんだよなあ。ところでイドラってなんだったんだろう。いったいこの世界で奴はなにをしたのだろう。実際のところ、災厄だったのだろうか。で、どんな災厄だったのだろうか。……ミスリードなんだよな、この物語はほんと。


「はは」


 なんか、笑った。

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