表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂宴  作者: 薄暮
6/13

夢現 #3

 ■■日

 ■.■ ■■:■■


「嫌、いや、イヤぁ!!」

 平野の悲痛な叫びが、俺の耳に突き刺さった。

「落ち着けサエコ!俺がいる!大丈夫だから、な!?」

「何ですか、なんなんですか!これは!?」

 俺が必死に体を抑える中、影がじたばたと暴れる。

 うふふ…

「聞くな!こんな声は、まやかしだ!気にするな!」

「いやあああああ!」

 俺の腕の中で、金切り声がつんざく。

 華奢な体の、一体何処にこれ程の力があるのだろう。

 影は俺の顔や体のあちこちを殴り、蹴り、のたうち回った。

 あはは…

「おい!声を出すな!奴らに気付かれるぞ!」

 俺は咄嗟に、周囲に視線を走らせる。

 暗闇の中。

 蠢く影。影。影。

 額から汗が流れ、顔を伝う。

 体が強張る。

「助けて!たすけてえぇ!」

 その叫び声と共に、影が一層、暴れた。

「止めろ!やめろ!」

 俺は叫びながら、暴れる影を力一杯突き飛ばし、その上に跨る。

 きゃはは…

「いやぁ!やめてぇ!」

「黙れ、黙れ!だまれぇええ!」

 左手で首を掴み、右手を振り上げ、思い切り振り下ろす。

「ぎゃっ!やめっ…ぐっ、ノぐっ、ざっ!…うぐっ」

 何度も何度も、振り上げては、振り下ろす。

 影の両腕が宙を掻き、俺の頬を爪が掠める。

 拳に力が入る。

 振り上げ、振り下ろし。振り上げ、振り下ろし。ふりあげ…

 ふと、気が付く。 

 今まで、あんなにも五月蝿かったのに。

 呻き声一つ、聞こえない。

 影は、いつの間にか、動かなくなっていた。

「…サエコ?」

 あっはははは!

 慌てて平野の上から飛び退き、離れる。

「サエコ?サエコ!サエコ!?」

 腰を抜かし、後ずさりながら、俺は平野の名を呼び続けた。

 返事は、ない。

 背中がトンネルの壁にぶつかった。

「おい、嘘だ、嘘だろ…」

 俺は頭を抱え、項垂れた。

 暗闇と混乱と喧騒と狂気の中、誰もが、唯一明瞭と聞き取れる声が、愚鈍な俺を笑う。


 うふふ


 そして、依田信博は目を覚ました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ