深紅の死神と夜の篝火の七夕祭り
今日は七夕。
と言うことで、深紅ずきんちゃんシリーズで七夕の話を書いてみました。
ホラーではないので安心してください。
七月七日の夜、とある町に奇妙な恰好をした二人組が歩いていた。
一人は、血のような赤黒い服をきて、フードを目深く被った、巨大な鎌を持った少女。もう一人は、周りに一つ人魂を浮かべた、制服姿の青年。こちらも同じく巨大な鎌を持っている。
町行く人たちは、この二人の姿がまるで見えていないかのように、誰も二人に話しかけて来ようとはしない。
「あ、ねえねえお兄ちゃん」
「ん、何?深紅ずきんちゃん」
深紅ずきんちゃんと呼ばれた少女は、ある一点を指さして青年に聞いた。
「あれってなあに?」
「あれ?ああ、あれは七夕祭りだよ。短冊にお願いごとを書いて、あそこにある笹につるすんだ。そうすれば、願いが叶うって言われているんだ」
「願いが叶うの?」
「僕も昔はやっていたけど、本当かどうかは分からないよ」
青年の言う、『昔』と言うのは彼が生きていたころの話である。
青年はすでに、この世の者ではない。いや、青年だけではない。この少女もそうだ。
少女は『深紅の死神・深紅ずきんちゃん』と呼ばれる、幼い死神である。そして青年は、その死神に殺された者。『日暮れの付添人・篝火灯夜』と呼ばれている、深紅の死神の付添人である。
深紅ずきんちゃんの仕事は、この世で亡くなる人間の魂を、きれいなままあの世に送ることである。そして、灯夜の仕事は深紅ずきんちゃんが道を踏み外さないように、深紅ずきんちゃんが進む道を照らすのが役目である。
灯夜の周りに漂っている人魂は、灯夜が呼び出したもので、真っ暗な夜道を照らしている。これも灯夜の力である。
「一年に一度、織姫と彦星が天の川で出会う日。天帝という人物が、織姫と彦星が会うことを許した日」
「なんで一年に一度なの?」
「織姫と彦星が、恋に夢中になっちゃって自分たちの仕事を全然しなくなっちゃったからだよ。でもね、会えなくなっちゃった二人を、天帝が哀れに思って、この七夕の日だけに会うことを許してくれたんだ」
「よかったね!」
深紅ずきんちゃんはとても喜んでいた。
灯夜はその様子を見て、「でも」と付け足した。
「一年に一回しか会うことができないのは、少しかわいそうだと思うな。僕は」
「なんで?会えないよりはいいと思うけど……?」
深紅ずきんちゃんは可愛らしく首を傾げる。
「そうなんだけど、愛し合ってる人と一年に一回しか会えないんだよ?この世に生きている人間は、予定が合いさえすれば、愛し合う人と会うことができる。だけど、織姫たちは一年に一回、決められた日にしか会えないんだ。例え、どれだけお互いを愛し合っていたとしてもね」
「かわいそうだね……」
「あーでも、僕が知ってるのはここまでだから、本当はどうか分からないな……これはあくまでも、僕の推測だから、深紅ずきんちゃんは気にしなくてもいいんだよ」
しょんぼりしてしまった深紅ずきんちゃんをなだめるかのように、灯夜は慌てて言った。
「とりあえずさ、願い事書いてみない?」
「書く!」
深紅ずきんちゃんは、自分の鎌を灯夜に預けると、一目散に短冊を取りに行った。
「短冊取って来たよ!」
「じゃあ、書くか」
「うん!」
二人は願いを書き終わると、それぞれ笹に結んだ。
「深紅ずきんちゃんは何て書いたんだ?」
「えへへー、ひみつ!」
「ちぇー。じゃ、そろそろ行こうか」
「そうだね」
二人は七夕祭りに背を向け、夜道を静かに歩いて行った。誰にも見られず、そして気付かれずに。
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笹が、風も無いのに揺れている。二人の願いを確認するかのように揺れている。
『いつまでも、お兄ちゃんと一緒にいられますように! 深紅ずきん』
『いつまでも、深紅ずきんちゃんと一緒にいられますように 篝火灯夜』
――よい七夕を……。
深紅「後書きを乗っ取る会を乗っ取ってみました。てへっ」
灯夜「すぐに気づくと思うから手短に頼むぞ」
深紅「了解だよ、お兄ちゃん」
灯夜「あと十秒」
深紅「ええ!?えっと、じゃ、じゃあ……あなたの魂をきれいなままあの世に連れていきます!!あと、わたしはデs」
灯夜「はい、時間切れ。じゃあねー」
深紅「あ、ちょっと待っt」ブツンッ