エイスさん再び
続き
あれからミヤに言われた通り、俺の能力を調べていると、気がつけば夕方だ。
で、何が分かったかと云うと……
1、最後に触れた霊銀器を通じて話ができる。これはミヤの予想通りだった。試しに一回他の奴のを触らせてもらって、次にエルファ君のやつに触ったら、話せたのはエルファ君だけだった。アイツの予想が当たってるのは、腹立つが。
2、有効な距離は30キロ程。これのせいで時間がかかった。馬に乗ってエルファ君がひたすら走ってさ、その間ずーと、能力使ってないといけなかったわけだ。
で、当のエルファ君はミヤに報告するって言って、俺はおいてけぼり。なんだかなーこの世界。
「……はーっ、ダメじゃンマジで……」
「何を、ため息を吐いているのです?」
顔を上げると、エイスさんがいた。その前屈みの体勢的に?……胸が、おっきいのがね、目につきました!
「いや、べ、別にどうとかでは……」
どもるな! 怪しくなるだろ! 俺!
「……不思議な方ですね。そう言えば、まだ名前を聞いていませんでした」
「あ、と、トシノリ……キヨハラ・トシノリです」
「ずいぶんと、変わった名なのですね」
目を白黒させてエイスさんは言った。
「……もしかして、トシノリ殿は、海を航って違う国からいらしたのですか?」
「まぁ……似たような……」
異世界から来ました、と言ってもいいけど、ミヤに止められてるし、仕方なくそう答えた。……少し嫌な感じがしたのは、気のせいじゃない。
「やっぱり、そうでしたか。噂には、海の向こうには、別な大陸があると聞いたことがあったのですが……実際にその方と会うのは初めてです。どんな国でしたか?」
「どんなってーー」
どんなだ? いや、いやまてよ! これはチャンスなんじゃないか?
異世界のことは知らないが、日本のいいとこならいくらでも話せそうじゃん? で、それを足掛かりにエイスさんを落として? で、日本食料理屋でも始めたらいいじゃん!
おお! ようやくこの異世界の成り上がりプランが見えてきましたぞ!
さっそく、エイスさんに色々話して……話して……あんまり続かない。
女の子と話す機会なんてなかったんだよ! 仕方ないだろ!
「それで、春には桜がキレイだったりするんで、皆でお花見をしたり……あ、桜って言うのは、なんだろ。ピンク色の小さい花で、それがいっぱいに咲くんです……だから、その、ごめん。うまく言えない……」
「それは、美しいものなのですね。トシノリ殿の話を聞いていればわかります」
こんな下手な話でも、エイスさんは笑って聞いてくれた。それはちょっと嬉しかった。