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お姫様がまた増えるのか(驚愕)

 ミヤとリーシャさんが馬車から降りたのに、なんとなくついていってみる。

 俺が馬車から降りる意味は無いんだけどね。

「……あれは、騎兵か?」

「そのようですね」

 あ、ほんとだ。騎士団の前に馬に乗った女の子がいるぞ。

「貴様! どこの兵か!」

 怒鳴るように先頭の兵士が声を上げる。

「私はエイス・ラクシェミ・スヴィーダ・エッフェルライルだ! 陛下から御下命を賜り賊を討つべくハリス伯爵領に見参した!」

 高らかによく響く澄んだ声で、少女が叫んだ。

「我らも同じだ! だが貴殿の騎士は何処に居る!」

「この身一つ。私一人だ!」

 少女が告げれば、兵士たちは一斉に笑い声をあげた。

「貴様分かっていないようだな! ハリス伯爵の元に集った貴族、その配下の騎士団はすでに七十を超え、その兵力は五万騎にも及ぶのだ! 我等もこうして二千の精鋭騎士団でそれに加わる! それを貴様はたった一騎とは、笑止千万、これが笑わずにいられるだろうか!」

 それでまた、兵士たちは笑い声をあげる。

 うーむ。なんか、感じ悪いな。相手は女の子一人なのに、これだけの数の男がわらわらと。

「……そうだ、エッフェルライル――貴様等! 黙れ! 黙らね者は妾の名において全員この場で処刑するッ!」

 叫んだかと思うとミヤは、男たちを押しのけて、馬上の少女の前に歩み出た。

「我が騎士団が随分と無礼を働きました。お許しください」

「貴女は?」

「わたくしはミヤ・スドーラ・アルフ・ニティスティ・ハルトベルゼ。辺境、コーツ地方を収めるハルトベルゼ家、子爵代行でございます」

「貴女があの……」

「はい。おそらくは公爵殿下が思う通りでございます」

 なんだなんだ? あの偉そうなロリがかしこまってる?

「そうか、エッフェルライルと云えば……」

 と、隣のリーシャさんが呟いた。

「あの、どういう人なんですか?」

 露骨に嫌そうな顔をしないでくださいリーシャさん! 質問しただけじゃないですか!

「エッフェルライル家は、ペルシェとの国境の守護任されていた武門の家柄だ。が、十数年ほど前、対立する三貴族によって排斥され、領地も失い没落した……もし、あの時エッフェルライル公爵の進言を重く受け入れていれば、今の三貴族の暴政も無かっただろう」

 要するに、没落貴族のお姫様ってことか。なるほどなるほど。

「どうでしょう?公爵殿、我が兵の不祥事の礼もあります。伯爵の城までわたくしに送らせてはくださいませんか?」

「せっかくの申し入れだが、それはできん」

「なぜ?」

「自らの父を幽閉し、兄弟を謀殺するとは外道の所業です。そのような者とは轡を並べたくはない」

「……なるほど、流石は武門の家まっすぐな瞳です。わたくしのように、生まれから穢れた者にはできません」

「生まれから穢れている者など居りません。人は道に穢れ、道に惑うのです。であれば、また人を清めるのもまた道であります。貴女が正道を行く時が来れば、その時こそは、共に轡を並べましょう」

「殿下のおっしゃる通り。なれば、その日が来れば、その時こそ、わたくしも殿下の隣に立ちましょう」

 ミヤが頭を下げれば、エイスは馬を嘶かせ駆けだした。

 その背中を見送って、ミヤが馬車に戻ってくる。

「気に入らん。正道がなんになる。その道を征く者の、誰が妾を救ったか――」

 ……俺は別に聞くつもりも無かったし、たぶんミヤの方も、誰にも聞かせるつもりもなかったんだと思う。

 そしてそれは、馬車の中でひらがなを書かせたりしていた彼女の声とは違っていて……。

 何なんだよ。異世界って、もっと楽なところじゃないのかよッ!

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