表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生して、お好み焼き布教!~【改題しました】  作者: 森田季節
11章 大阪のオバチャン、燕の魔王と戦う

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/46

46 大阪のオバチャン、英雄となる

 すぐに回復役の神官たちが集まって治療に当たる。傷はすぐにふさがっていった。

「よし、まっ、こんなもんやな! 三打席連続三振でも四打席目にホームラン打てればええんや!」


 ハルナは腕組みしてご満悦だ。だいたい、すぐに調子に乗るが、それを諫める者もここにはいない。ナタリアも大事な一戦での勝利にほっとしていた。


「で、では……約束通り、人間の国家との和平交渉を進めてまいります……」

 魔王スゥー・ワルローも素直に決まっていた話に応じるらしい。


「ああ、そうやな。こっちも、お好み焼きとかタコ焼きの作り方教えたるわ」

「はい、お願いしま――――あれ?」


 魔王以外の魔族たちも何かおかしいぞという顔になる。本来、魔王が負けたら何も得られるものはないはずなのだが。

「ちょっと! ハルナ! 教えるってどういうこと!?」


 ナタリアがあわてて駆け寄ってくる。

「だって、何十も行程があるわけやないし、こんなん、客に変装して技術盗みに来られたら、すぐにばれてまうで。それで中途半端なお好み焼きもどきヤタコ焼きもどきが広まるぐらいやったら、本場大阪の味をうちが伝授したほうがええやろ」


「いや、言いたいことはわかるけど、それって契約に……」

「じゃあ、うちの好意で勝手に教えることにするわ。うちはお好み焼きを世界に広めろと言われて、この世界に来たからな。そっちの契約優先するわ」


 ハルナの顔が迷いなく笑っているので、ナタリアもため息をついて諦めた。

「そうね。あなたを止められる人間なんて、どうせこの世界にいないんだしね」

 それから、ハルナは魔王のほうに近づいて言った。


「調理場はあるか? 今すぐ教えるわ。キャベツと小麦粉ぐらいはあるやろ?」



 その後、ハルナがお好み焼きを教えたのは多少の問題にはなったが、それで魔族と人間の間に平和条約が結ばれたのは事実であり、基本的に評価された。


 その条約が結ばれてから一か月ほど後、ハルナは式典のため、王都に呼ばれた。

「こういうんは、なんか落ち着かへんのやけどなあ」


 城のそばにそびえる幕のかかった何かにハルナは目をやる。

「ハルナはんが主役なんやからもっと偉そうにしてたらええんですわ」


 カレンがハルナの腕をとりながら言った。

 その横で、ナタリアが複雑そうな顔をしていた。


「あまり、ひっつかないでね。あなたの婚約者じゃないんだから」

「それやったら、あなたも同じやわ」

「べ、別に私はひっついてないからいいのよ!」


「二人ともケンカしたらあかんで」

 いよいよ除幕式となった。

 ハルナが代表して布についた紐を引っ張る。


 大きなハルナのブロンズ像が出てきた。

 その台座には「魔族との戦争を止めた冒険者にして、この世界の母」と書いてあった。


 奇妙な料理をこの世界に持ちこんで平和を勝ち取ったことが讃えられたのだ。「この世界の母」という表現は様々な料理を広めたことによるものだろう。


 そうやって目立つのは嫌だとハルナは固辞していた。権力の象徴みたいになるのは、大阪のオバチャン的ではない。しかし、ここまで功績が大きくては断るのも限界だった。

「おめでとう、ハルナ」


 あきれることも多いナタリアだが、今日は心からの笑みでハルナを祝福する。

「ほんまよかったわ、ハルナはん!」

 同じようにカレンも手を叩いて、喜んでいる。


 ほかにも僧侶で冒険者のココンや、魔王スゥー・ワルローなど魔族側の者までが出席していた。まさしく今日は平和を象徴する日なのだ。


 沿道ではお好み焼きやボール焼きが記念に無料で配られている。王都全体が今日は祭りのように浮かれている。


「さて、王国にも魔族の土地にも広まってきたし、次は別の土地にも広めていかなあかんな」

 もう、ハルナは次のステップを考えている。


「海辺に行ってなんか探してみよか。大阪版イカ焼きも料理に加えたいし」

 イカ焼きという言葉は違う二つの食べ物を指していて、この場合は屋台とかにあるイカを焼いたものではなく、お好み焼きに似た料理のほうである。


「あっ、そうか。国に支援してもろたら、いくらでも食材の調査ぐらいできるな。フグも探しとこ。ああ、食材をもっと探しに行けばええんや。そうや、それや!」

「ハルナ、なんでにやけてるの……?」


「ええこと思いついたんや。ちょっと海産物とか管轄してる役所に行きたいんやけど」

「まだ式典の予定がいくつもあるからダメに決まってるでしょ!」


『ハルちゃん』の店舗はこれから先も加速度的に増えていく。

 しばらくあとにはほかの大陸にも輸出されることにもなる。

 この世界が安くて美味いものに支配される日もそう遠いことではないだろう。

なろう再構築版はこれにて終了です! 6月にはアース・スターさんで書籍版が出ます! 書籍版はおまけの「大阪のオバチャン、星の鯨と戦う」が収録されています。また、アース・スターさん恒例の封入冊子みたいなのにも別のエピソードが載っています。ぜひともよろしくお願いいたします!

また、挿絵をさらに4点ほど活動報告にアップいたしました。特典情報なども再掲しておりますので、そちらもぜひご覧ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ