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異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生して、お好み焼き布教!~【改題しました】  作者: 森田季節
9章 大阪のオバチャン、温泉を作る

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37 梅田ダンジョン作成魔法

「温泉って、あの熱湯が湧き出てるやつ?」

 ナタリアは温泉というものに入ったことがないらしい。


「うちのおった国やと、あれを入れる温度にして入浴してたんや。まあ、温泉やなくてもええけど、とにかく広い風呂を作るねん」


「地下にお風呂って、相当な水がいるんじゃない? 十三層って水は出るけど、泥水だから、調理用の水は地上から持ってきてる状態よね?」

 現状、水は手洗い用ぐらいにしか使えていない。お好み焼きなどの調理に使う水は、従業員が出勤時に汲んで運んでくることになっている。


「まあ、見といてや。飲み水には向いてないけど、温泉にはいける」

 ハルナは右手を突き出した。

「ホテルニューアワジ~♪」


 なぜかメロディをつけて、ハルナは唱えた。こういうCMが日本在住時代、ばしばし流れていたのだ。淡路島のホテルのCMだ。淡路島は温暖な瀬戸内海でも最大の島なので、温泉地などもある。


 すると、いきなり噴出したお湯がナタリアの顔にかかった。

「ぷふっ! あんた、何するのよ!」

「すまんかった。うちもほぼ使ったことないから、どれぐらいの勢いかようわかってなかった」


「あなた、ケガすることなんてまずないから、治癒魔法が不要だったもんね……。あれ、そういえば全身があったかいような……。あと、どことなくしょっぱいわね。血の味に近いっていうか……」


「それ、鉄分が入っとるんやな。ということは温泉で間違いないと思うわ」

 今度はハルナは手から自分の口にお湯を出してみた。


「うあ、気管に入った! でも、温泉や! これは温泉やで! 淡路島の温泉というより有馬温泉に近い気がするわ! これを大量に出しまくれば、温泉が作れる!」


「いやいやいやいや! 待って待って! まだいろいろ足りないから!」

 両手を出してナタリアが制する。

「今回は新メニュー開発とは規模が違うんだから、石橋を叩かせてもらうわよ」


「石橋? 宝塚向かう路線と箕面に向かう路線とに分かれる駅やな」

「いちいちツッコミ入れずに本題に入るわよ。お湯があっても場所がないでしょ。『ハルちゃん』の後ろはずっと岩盤でそうそう拡張なんてできないわよ!」


 ナタリアの発言はまさしく正論だった。

「ふっふっふ。しかしなあ。それも手があるんやわ。ダンジョン入って試してみよ」



 二人は事務所から十三層のハルちゃんに向かった。

 バックヤードはダンジョンだから当然のように土と岩の壁が続いている。


「この先に一気に空間を広げられる魔法をうちは持ってるんや。きっとこういう時のための魔法やと思う」

「そんな無茶苦茶な魔法あるわけが――いや、あなたなら、絶対にないとも言えないのか……」

「うちにはこういう魔法があるんや」


 それは、『梅田ダンジョン作成魔法』だ。


 梅田は大阪市のキタと言われているエリアの中心地だ。

 JR東海道線、さらに阪急や阪神といった私鉄に複数路線の地下鉄も走っているため、京都と神戸の人間が大阪に来る時は多くがまずここにやってくる。大阪市内でも人が最も集中する場所だ。


 そういった駅は地下街でつながっているが、地下鉄の駅は路線ごとに場所も駅名も異なっているので、結果として位置関係がつかみづらくなる。

 そこにデパートや地下ショッピングフロアー、大型のビルなどが接続されているので、混乱が増幅される。


 さらに梅田地下街は道の分岐が三叉路になっていたり放射上になっていたりする。これのせいで道を間違えるリスクが大幅に上がる。


 その結果、梅田地下街はダンジョンなどと呼ばれることが多いのだ。

「マジ? ダンジョンを魔法で作れるって、魔王でもそんなことできないんじゃない……?」


「うちもそんな巨大なもんができると思てない。だからこそ、ちょうど温泉一つ分ぐらいの規模の空間ができるんかなって踏んでるわけや。これで穴掘る手間が省けるで。知らんけど」


 大阪では、責任がとれないことを話す場合、語尾に「知らんけど」がつく時がある。

 そして、ハルナはその魔法を唱えた。

「さあ、行けっ! ダンジョン広がれ!」


 すると岩盤に強烈な白い光が生まれた。ナタリアも思わず目を閉じる。

「白いな、そうか、 ホワイティうめだやなっ!」

 ホワイティうめだとは、梅田の地下街の名前である。


「何を言ってるのかよくわからないけど、とにかくまぶしいわっ!」

 やがて光がやんだ。ハルナもゆっくりと目の前で何が起きたかを確認する。


 そこにはまず目の前にぽっかりと大きな空間が空いていて――

 その先にも複雑怪奇なダンジョンが続いていた。

「あれ、もしかしてほんまに梅田の地下街みたいなんができたんか……?」

 とりあえず果てはハルナたちの場所からだと見えない。


「これ、ちょっと確認したほうがいいんじゃない……?」

 ナタリアはハルナの服をくいくいっと引っ張った。

 ――一時間後。


 へとへとになって帰ってきたナタリアが思わず毒づいた。

「こんな規模のダンジョン見たことないわ……。五叉路って何よ! どんだけ道があるのよ!」


 終点になかなかたどりつけず、二人は迷いに迷って、ようやく元の場所に戻ってきた。いまだに全貌はわからない。

「この力、あまり明るみにせんほうがええかもな……。梅田から淀屋橋まで歩いた感覚あるもん……」


 使用者のハルナすらこの魔法には引いている。

「この、手前のスペースだけ温泉に使って、あとは土と板で隠しましょ……」

 ナタリアの提案で、梅田ダンジョンへの道は完全に封鎖されることになった。


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