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異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生して、お好み焼き布教!~【改題しました】  作者: 森田季節
7章 大阪のオバチャン、ドラゴンと戦う

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33 味噌を要求するドラゴン

「みそ?」


 ナタリアはきょとんとした。なんだ、それ。ぶっちゃけ、何のことかわからない。あれ、でも、どっかで聞いたことがあるような……。


「やはりお前も味噌を知らぬのか。それとも我を軽んじておるのか?」

「何も軽んじてないわよ! 何かわからないものをあげられるわけないでしょ!」

「ふん。知らぬのならお前に用はない。死ね」


「待って、待って! 聞き覚えある気もするのよね……。どこでだろ……? 思い出すから、もうちょっと待って!」

「いや、死にたくないからそう言っただけであろう。その手には乗らぬぞ」


「本当だって! 信じてよ!」

「とうてい信じられぬ。皆の者、この獣人の娘を焼き殺――」

「レディに何しようとしてんねん!」


 いきなり声がしたかと思うと、寝ていたはずのハルナが飛び出していた。

 もう、ハルナは空高く跳躍している。

 剣を握り締め、隙を突かれた族長の真正面にやってきて――


「っていっ!」

 全体重をかけて族長の顔に痛打の一撃を加えた。

「ぐあぁっ!」


 不意を打たれた驚きもあって、族長が倒れる。

「許さへんからな! 冗談を通り越したら笑えへんやろが!」


 さらに攻撃を加えまくる。

 もはや一方的な展開である。

「あんたのヒゲ全部抜き取って熱田あつた神宮に奉納したろか!」


「わかった……我の負けだ……だから叩くな……。あと、ヒゲも抜かないでくれ……」

 ドラゴンの族長が敗北を認めたことで、戦闘はハルナたちの勝利で収束した。

「た、助かったわ……」


 ナタリアも自分の杖に寄りかかりながら、安堵のため息をもらす。

「あなたが土壇場で起きてくれて助かったわ……」


「いや、寝てへんよ」

 さらりとハルナが言った。

「はっ?」


「あれ、寝たふりしとっただけや。うち、ブレスは全部効かへんもん。眠らせる息も効かんで」

「いやいやいや! なんでこのタイミングで寝たふりなのよ! 誰が得するのよ!」


 ナタリアとしてはまったく理解できない話だ。

「え~、せやかてあのドラゴンが『この吐息を浴びると三日眠る』とか言ってきたやん。それを浴びたら寝たふりせんと、ノリ悪いって思われるやん」


「ノリ? ごめん、本当にまったく意味がわからないんだけど……」

「ほら、子供が魔法使えへんのに炎の魔法や~とかごっこ遊びでやるやろ。そしたら、攻撃された側は熱がるやろ。そういうやつ」


 大阪で手でピストルの形を作って、通行人に「バァーン」とやると、撃たれて死んだ人の役を割と本当にやってくれるらしい。


 多分、テレビとかで広まった影響で、大阪人もしないわけにはいかなくなって、みんなやってる部分もあると思うが、それにしてもおそらくほかの都市よりはるかに高い確率で撃たれて死んだ人の役をやってくれるはずである。


「怒るのも空しいから忘れることにするわ……」

 ナタリアはものすごく疲れたようにため息をついた。実際、精神的な疲労がデカい。

「あ、そうや、さっき、味噌よこせって言ってたけど、あれは何の話なんや?」


 ハルナがドラゴンの族長に再度声をかける。

「人間襲った事情もわからん。全部話してもらうで」


「我は負けた。すべて話そう……」

 族長は従容とその翼を畳んだ。


「我はまだ三十年ほどしか生きておらん若いドラゴンなのだ。だが、その力がほかの者より頭抜けていたため、族長をやらせてもらっている」


 ドラゴンの世界も実力社会なのだろうか。

「ごく、普通に我は族長をつとめておった。だが、ある時、ふいにあるものがほしくてたまらなくなったのだ。それが――」

 彼は何か恋でもしているような表情になる。


「味噌であった」

 直後、族長は感極まったように頭を抱えて、叫ぶ。


「その味噌なるものが何なのか我もよく覚えておらぬのだ! だが、たしかに味噌というものを食べたいという気持ちが頭に浮かび、落ち着かなくなる! そこで人間に貢納として味噌を持ってくるようにと言っていたのだが――」


 もちろん誰も味噌なんてものの存在は知らず、ついに彼は人間を攻撃したということらしい。

 地元の人間にとったら迷惑な話である。

「嗚呼! 味噌とはいったい何なのだ?」


「味噌ならあるで」

「そうであるよな。やはり味噌などどこにも――なんだと!?」

「味噌やったらある。あんたの体のサイズほどはないけど、そこはちびっとずつ食べてや」

 ハルナはあっさり解決策を出した。


 ナタリアもそれで思い出した。体調が悪い時にハルナが舐めていたりしたはずだ。あと、ソバつゆを作る時にも利用していた。

 しかし、今回はハルナの顔は少し硬い。


「けどなあ、その味噌であんたが納得するかはわからんで。でも試してみんとわからんな。やるだけのことはやったるわ。オールサックの町まで乗せていってや」

 普通はドラゴンの族長が人間を乗せて飛ぶなんてことはないのだが、ハルナに負けたのと、味噌のためということで、あっさり快諾された。

書籍化タイトルと合わせるため、タイトルを微妙に変更しました(旧タイトルが副題という形になりました)。今のタイトルでの書籍化となります。よろしくお願いいたします!

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