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異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生して、お好み焼き布教!~【改題しました】  作者: 森田季節
5章 大阪のオバチャン、巨人と戦う

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22 ソバが生えている

 長老いわく、巨人の住んでいる山が今年は実りが悪くて、食べるものがないのだという。それで町にやってきて食べ物を探していたのだと。


「クマが食べるもんなくて里に下りてくるみたいな話やな」

「はい、今年は木の実がろくに獲れませんで……栗もあまりできておりません……。子供や女が飢えそうになっております……。それでやむなく……」


「木の実とか栗とか言うてるけど、シゲオさん、もしかしてあんたら狩猟採集生活なんか?」

 想像以上に原始的なのでハルナもびっくりした。


「あっちの世界の巨人は球場がテーマパークの一部分って感じでオシャレすぎる気がしたけど、こっちの巨人は地味すぎやろ。間がないなあ」

「山は土地が痩せていて、小麦もとれないのですじゃ……」

 なるほど。たしかに山地には穀物栽培は向いてないかもしれない。


 だが、すべてがそうではないし、山には山の食べ物もある。

 そして、困ってる者がいると、とりあえず手を差し伸べるのがハルナの生き方である。


「巨人も強くないと盛り上がらん。トラがウサギ食べたんやったら、ただの自然の摂理やないか。トラと巨人で戦うからおもろいねん」

 別に町を奪還するつもりだからといって、巨人に塩を送っちゃダメということもないだろう。


「わかった、うちがどないかしたるわ。山へ案内してや」

「何か方法があるのですかな……?」

「あんたらよりは食べられるものに詳しいかもしれへん」



 ハルナは巨人の長老の手のひらに乗せてもらって、山へ移動した。

 なるほど、全体的に土地は豊かとは言えない。


 たいらな土地も少ないので、麦などの作物を大規模に収穫するのも難しそうだ。

「ああ、一回降ろして。ここからは自分で歩く」


 長老から降りると、ハルナはぼうぼうと生えている草や木に目をつけて、一部を採集しはじめた。

「これはいける、これもいける、これ、たしか毒やな」

「何をしておるのですじゃ?」

「山や森の中にはお宝が眠ってんねん。なんや、けっこう生えてんやん」

 とにかく、ハルナはいろんな植物や木の実を集めていった。


 山の視察が終わり、巨人たちの集落で一休みする。

「見てきてわかったけど、あんたら、なんか植えや。だから飢えるねん。あっ、親父ギャグみたいになってしもた!」


「しかし、麦がとれるような土地ではないですし、土地も狭いですし……」

「ここに来るまで割と生えてた植物もあったやろ?」

「あぁ、たしかにありましたですじゃ」


 ぱん! とハルナは手を叩いた。

「それを植えるんや!」

 ハルナは収集していた種と枯れ枝を取り出す。


「これ、ソバやん! ソバは痩せた土地でも育つんや!」

 日本だとソバは実質、麺類の名称となっているが、世界的には穀物の一つというくくりだ。たとえばフランスのガレットなどはソバ粉を使った料理だ。


 ハルナは過去に野草やキノコなどを集めにけっこう森に入っていた。森ガールとかではない。そんな言葉が生まれる前から森の中にいた。


「あなたは森の物に詳しいのですな」

「当たり前や。だって、タダで食えるやん!」

 森や山で食べられる草や木の実を入手すれば圧倒的に食費が浮く。多分、健康にもいい。その結果、何を食べることができて、何が食べられないのか、かなり詳しくわかっていた。


 また、大阪は地形的に東京や名古屋などと比べても、ほどよい高さの山が周囲に多いので、野草やキノコを探すのは楽だった。

 関西には関東平野のような広大な平地などというのはない。とくに神戸や京都だと繁華街からバス一本で六甲山や比叡山に行けてしまう。新幹線の新神戸駅のホームからイノシシが見える時があるぐらいなのだ。


「えっ、このソバは食べられるのですかな……」

「当たり前やん! ていうか巨人なんやからソバ食わな! 本拠地、東京やろ!」


 江戸時代からソバ屋は発展していて、江戸の飲食店というと実質ソバ屋だったという時代もあった。だが、この巨人たちとは一切関係ない。

「じゃあ、このソバで何か作れるやつ、教えたるわ!!」


 ハルナは巨人たちにソバの実を収穫させた。巨人サイズのものを作らないと意味がないので、ハルナは今回は料理に関しても指導にまわった。ハルナの体では巨人用のものはなかなか焼けないのだ。


 ソバの実を臼でいて粉にする。日本のソバもこれが原型だ。これを小麦粉のように使うこともできる。水を加えてよく混ぜさせる。さらにカバンから取り出した飴も溶かしてここに加える。


 今回は名前に「黄金糖おうごんとう」というリッチな名前のついた飴を溶かして入れた。甘味にはこれが使いやすいだろう。


 あとはそれを焼かせる。大きな鉄板を作るのが大変なのか、巨人は薄くて平べったい石を鉄板代わりにしていた。


 無事にソバでできたホットケーキのようなものが焼けた。

「食べられんことはないやろ。試してみ」


 まず、長老が代表して、ソバの色のせいで黒みがかったホットケーキを口に入れる。

「おお! 甘い! これなら子供も喜びますじゃ!」

 ほかの巨人たちも次々にホットケーキを口に入れる。


「甘いぞ……」「うまい……」「うおおお……」

 素朴な味のお菓子は巨人にかなり好評だった。

 甘いと書いて「うまい」と読むこともできる。


 本来、甘さというのはこの食べ物にカロリーがあって食べると生存に役立つぞということを示す味覚なのだ。だから原始的な生活をしていた巨人には甘いものがおいしいものとしてストレートに伝わったのだろう。


「というわけで、今度からソバを植えときや。粉にしたら貯めとけるし、また食べ物少ない年になっても耐えられるやろ。これまで全然収穫してないなら、このあたりの山を探し回ったらたくさん生えてるはずや。今はまず、それを探すことやな」


 ほかにもハルナは、

「これ、水にさらしてから、粉にしたら食えるで。この葉っぱも塩ゆでしたら、けっこう食える。でも、生で口に入れたらあかんで。できるだけ塩と一緒に食わんと体に悪い」

 と食べられるものを色々教えていった。


「あと、襲った町との折衝はうちが多少は口利きしたるわ。建物を壊したわけやないから、どうにかなるんちゃうかな。あまり無茶な条件にはならんように、うちも交渉には参加する」

「ありがとうございますじゃ!」


 長老以下、巨人たちはハルナに賛辞を送り、貢物まで渡そうとしたが、これは辞退した。巨人サイズで受け取れなかったのだ。

「頑張って働きや。巨人が貧しかったら、かっこつかへんねん」


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