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16 タコ焼きを作ろう

 早速、ナタリアはシフトをメインでつとめることになった。バイトではなく、正社員的なフルタイムの働き方だ。


 そして、空き時間にハルナは本格的な企業としての展開も開始しはじめた。

 ほかの町のギルドにも従業員募集の依頼を出す。


 さすがにほかのダンジョンに店を出すのはまだ難しかったが、町の中でお好み焼きの店を出すのはそれほど大変じゃない。


 オールサックの町の北西にあるカッタールの町にまず出店。

 さらに南のネースの町にも出店。

 どちらもお好み焼きは「まったく新しいパン」と呼ばれて大評判となり、ハルナの名声も一緒に轟いた。


 ほかの町にナタリアとともに技術指導に行った帰りのことだ。

 ドレイク三体が二人を襲おうと、飛来してきた。ハルナを狙った時点で、ほとんど自殺である。ゴンッ! バギッ! ドグ! 剣で斬ったにしては不自然な鈍い音ともに三体は魔石に変わった。


「っていっ! なんで攻撃してくるんや! のんびり空飛んどったらええねん!」

 その経験値でハルナのレベルが上がった。


=====

ハルナ

Lv85

職 業:剣士

体 力:645

魔 力:464

攻撃力:532

防御力:493

素早さ:523

知 力:240

謙虚さ:  2

ボ ケ:744

ツッコミ:264

魔 法:炎魔法・風魔法(六甲おろし)・治癒魔法ホテルニューアワジ・紅ショウガの天ぷら魔法・梅田ダンジョン作成魔法・簡易次元操作(カバンからお菓子等が出てくる。一部、大阪にちなむ食品が出せる)

その他:ビリケンさんの加護により、毒無効化・麻痺無効化。アンチ巨人なので、巨人に対して常にクリティカルが出る。中日ドラゴンスレイヤー(ドラゴンのブレスを無効化)。

=====


「なんなん! 謙虚さが『3』から『2』に下がってんで! まあ、レベル上がってうれしいけど」

「あなた、本当にとてつもなく強いのね……。私なんてまだLv17よ……」


 ナタリアはあらためて社長ハルナの恐ろしさを知った。

「ていうか、ドラゴンにもほぼ無敵よね。人類最強はほぼ確実だわ」

 ドラゴンのブレスを無効化する設定が増えている。


「なんか転生させられる時に女神に人類最強の存在とか認識されたんや。だいぶ、あの女神も偏ってるけどなあ。あれ、魔法が強くなってるんちゃうか」

 簡易次元操作のところが「(カバンからお菓子等が出てくる、大阪にちなむ食品が出せる)」と変わっている。

「これって、どこまでが大阪にちなむんやろ。たとえば大阪で生産してないもんでもいけるんかな……」

「何、独り言言ってるの?」


 ハルナはカバンに手を突っこんだ。そして、勢いよく手を引き抜く。

 そこにはぐにゃぐにゃと動くタコがいた。

「よっしゃ! タコも出せるんや! 産地は兵庫県の明石あかしとかやけど、ちゃんと出せるんやな!」


 明石は神戸市のすぐ西側にある瀬戸内海の港町だ。淡路島と本州が極端に接近しているあたりにあり、その結果、潮の流れが早くなり、魚の身が引き締まる。

 タコ・タイ・ハモ・アナゴなどの魚で有名だ。B級グルメの大会でグランプリを取った明石焼き(玉子焼き)はここが発祥である。


「きゃー! 何、これ! なんでモンスターが出てくるのよ!」

「モンスターっておおげさやな。タコやん」

「オクトパスの小さい奴でしょ、これ!」


 海側に住んでいる人間しかタコを食べる習慣はなかった。高速での輸送ができないため、内陸部には海産物をなかなか運べないのだ。魚が来ることもあるが、金持ち向けの食品だった。


「うねうねはしてるけど、食べたらおいしいで」

「え、それ、食べるの……? そりゃ、あなたが何を食べても一切驚かないけど……」

「活きがええから刺身にしても美味いけどな。あとでビギナーでもいける食べ方、教えたるわ」


 ハルナはタコをカバンに戻した。

「それ、カバンに戻していいものじゃないでしょ!」

「これは魔法の力でよそとつながってるから問題ない。多分、瀬戸内海とつながってるねん」

「意味わかんないわよ!」



 ハルナはオールサックの町に戻ると、鎧加工の職人のところに顔を出した。

「あれ、これは町の有名人じゃねえか。あんたのクラスの鎧はちょっと俺じゃ無理だぜ……」


 別に職人が卑屈なのではない。実力で言えば伝説の勇者と違いのないハルナだと、そうそう納得させられる鎧を作れないと思ってもしょうがない。国で一番か二番の職人が担当しなければいけない人物なのだ。


「ちゃうねん。鉄板に丸いくぼみを作ってほしいんや。そのくぼみを一枚ごとにたくさんつけて。試験的に十枚ぐらい作って」

「ああ、それぐらいなら何の問題もねえよ」


 さして時間もおかず、くぼみのある鉄板ができた。


「せっかくやし、『ハルちゃん』で実演してみよか。ただ……不安もあるんやけどな」

 鉄板を見つめながら、ハルナが顔を曇らせる。


「あなたでも不安になることってあるのね」

「一年に二回ぐらいはあるわ。あと、今年もタイガース優勝できへんのかなとかな。最近はCSあるから、望み増えたけど。それは置いておくとして――タコって受け入れられるんかな」


 事実、ナタリアがそんなの食べるのはありえないという反応をした。

 たとえば、ハルナもセミを食えるかと言われるとちょっと遠慮する。なんでもエビみたいな味がしておいしいらしいが、陸の虫は抵抗がある。


「ま~、その時はその時やな。ハムとかベーコン入れよ」

 結局、ハルナの不安は十五秒ぐらいで解消した。


 それから、町やダンジョンで「『ハルちゃん』本店で新商品の試食会やるで~!」と言いまわって、十三層に向かった。


 その話を聞きつけた冒険者が地下十三層には集まることになった。近頃ではモンスターも十三層ではやりづらそうにしている。


「変わった形の鉄板だな」「あんなの売ってるの、見たことないわ」「防具の一種か?」

 そんな率直な感想が聞こえてくる。少なくとも料理のできあがりを想像できない。

「今日はこの世界初のタコ焼きパーティー、略してタコパや!」


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