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異世界お好み焼きチェーン ~大阪のオバチャン、美少女剣士に転生して、お好み焼き布教!~【改題しました】  作者: 森田季節
3章 大阪のオバチャン、獣人を助ける

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11 おせっかいの力で助太刀

続き物なので、前の10話とほぼ連続して投稿しました。

 大男が猫耳の女性に食ってかかっていた。

 獣人だろう。この世界には犬や猫の獣人が生活している。


 大男のほうは数人のパーティーを組んでいる者の一人だ。顔は知っている。


 猫耳の女性は初めて見る顔だ。だいたい二十代前半で、ローブからして、魔法使いか何かのようだ。魔法陣でも描くためか、杖も持っている。長い褐色の髪が遠くからでも目立つ。


 まあ、冒険者は血なまぐさい職業だし、ケンカぐらいならギルドでは日常茶飯事だ。


「聞いてないの? 私は『やらない』って言ったのよ。あんたみたいなサルの集まりみたいなパーティーに入るわけないでしょ」

「お前! 言わせておけば!」


 パーティーに入れと勧誘されたのを、ぴしゃりとはねつけたのだろう。それも含めてそんなにおかしなことじゃない。


 ハルナは最初、標準語のケンカってなんか変な気がするなと思いながら見ていた。ハルナはずっと大阪に住んでいたので、ケンカも関西弁で基本的に行われていた。多分、よその土地の人間が見ると、標準語のケンカより三割増しで怖く見える。


「誰がサルだ! お前こそ、奴隷扱いで一山いくらで売られてる獣人じゃねえか!」

 大男のほうが言った。売り言葉に買い言葉だ。

 むっと猫耳の少女のほうが反応した。


 それと、ハルナもちょっとぴくりとこめかみが動いた。

「奴隷階級が偉そうなこと言ってんじゃねえよ! こっちから願い下げだ!」


「そんなの、百年前に廃止されたでしょ! 私たち獣人をバカにした償い、受けてもらうわ!」

 その言葉に反応したように、猫耳の魔法使いが杖を握り締めた。


 これは何か魔法を使おうという腹だろう。

「その身をもって償え! ファイアボール!」


「ああ、手まで出してもたらあかんわ」

 さっと、ハルナはそこに割って入る。


 ――ドォン!


 ファイアボールがハルナの背中に直撃する。


 ざわついていたギルドも静まり返る。背中からそんなもの喰らえば、死者が出かねない。

 猫耳の少女も表情をゆがませた。無関係な人間を巻き込んでしまっただろうか。


 だが、ハルナは苦痛の色を浮かべたりはしていない。チート級のステータスのおかげだ。せいぜい服に穴が空いたぐらいである。


「まあまあ。二人とも、ケンカはあかんで。ここはハルナの顔に免じて、どっちも引いてくれへん?」


 再び、周囲がざわつく。ファイアボールが直撃して、平気だったからだ。

 それと、オールサックの町のギルドでハルナは物凄い有名人だった。もう誰が関わったかみんな把握していた。


「それとも、二人セットでうちにかかってくるか? しばきまわすで~。いや、そんなひどいことせえへんけどな」

「何よ、あなた」


 それでも冷たい顔で猫耳の魔法使いは言う。

 ただ、声には微妙に驚きのようなものが混じっているが。

 そんな、なんともないような威力の魔法ではなかったはずなのだ。


「おい、獣人、お前、ハルナを知らねえのか? やっぱり、よそ者だな! ハルナは化け物みたいな剣士なんだぜ! その剣で斬るんじゃなくて、なんでもぶっ叩くんだ!」


 大男のほうは自分が自慢するみたいにハルナを褒めた。ハルナは町の誇りなのだ。

「化け物は余計や。こんなかわいいのに。ほら、宝塚みたいやろ?」


 にこっと笑ってみせるハルナ。今の自分の容姿が女優顔負けなのはよくわかっている。

「お、おう……っそうだな、化け物じゃなくて天使だぜ……」


 笑いかけられて、大男も照れたような顔をする。

「……今日は気分が乗らないから帰るわ」


 やりづらいのか、魔法使いのほうもギルドから出ていく。

 それでトラブルは収まったかと思った。


 実際、「さすがハルナちゃん!」「ハルナはこの町の英雄だ!」なんて声が飛び交う。

 しかし、ハルナの中ではまだ終わりではなかった。


 すぐにギルドを出て、魔法使いの肩をつかむ。

「まあ、待ち待ち」


「何よ、仕返しでもする気……?」

 魔法使いの顔がこわばる。


「なあ、何の悩みあるん? 絶対に悩みあるやろ? しんどいんやったら、うちに相談しいや」

「は、はあ……?」

 猫耳の魔法使いもこれにはかなり困惑した。


 大阪のオバチャンは他人のことに平気で顔を突っこむ。

「ど、どうして見ず知らずのあんたに相談しなきゃなんないのよ……。訳がわからないわ!」


「ということはやっぱり悩みあるんやん。そういうんは顔見たらわかんねん。あんた、顔にそう書いてんねんもん。ほら、うちに聞かせてみいや」

「ふざけないで! 私はただの流れ者の冒険者なの。放っておいて!」


「あのさあ、そんなクールなキャラでかっこつけとったら大変やで。素で行き、素で! あんた、ええかっこしいやねん。ここは東京やないんやから、肩で風切る生き方せんでもええやろ。東京かて、葛飾とかのほうは義理とか人情の世界や言うで」


「なっ……クール……!? ち、違うわよ!」

 露骨に言われて魔法使いもたじろぐ。

「ほら、いきっとったらあかんて」


「『いきる』って何よ……」

 いきる――とは格好をつける、といった意味である。


 大阪は本音さらけだし文化なので格好をつけるのは嫌がられる。

 なお、大阪より西のほうだと「いちびる」という言葉が使われることもある。「何、いちびってんねん」と言われると、言われたほうはけっこうショックだ。


「わかんねん。うちの近所にも中学生ぐらいの男の子でこういう、かっこつけだす子おってん。俺は一人で生きてくとか調子ええこと言っとったわ。つまらんような顔するんがかっこええと思ってんねん。なんでやねん、お笑い見てゲラゲラわろてるほうが世の中楽しいやん。それにわろてるほうが免疫力もつくんやで」


 ハルナは聞かれてもいないのに、ぺらぺらしゃべる。

「ほら、悩み、うちに聞かせてや。どうにかしたるから! だてに長く生きてへんで」


「いや、あなたのほうが若いと思うけど……」

 ハルナの見た目は転生したせいで女子高生ぐらいなのだ。


 ただ、魔法使いも見たことのないこのキャラに押されたらしく――

「わかったわ……。話してやるわよ。どこか酒場に案内して……」


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