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1話 大阪のオバチャン、美少女として転生する

なんと、書籍化が決定しました……。そのため、四月末から新規再起動の予定です。よろしくお願いいたします! (この1話も大幅加筆しています)ちなみに作者は元関西人です(神戸18年・京都6年)。

「あ~、いきなりトラック来たら危ないやんか~。ケガしたらどない――あれ、ここ、どこなん?」

 ハルナは自分が草むらに倒れていることに気づいた。


 明らかにさっきまでいた大阪の天王寺ではない。どこにもビルは見えないし、自転車に乗ってるおっちゃんもいない。四方に草むらが続いている。


「なんや、これ……。服は前のままやけど、うちの声、高なってない?」

 あと、妙に手がきれいになっている。

 シミが消えている。シワもない。


「なんや、夢なんか? 夢やとしてもけったいな夢やな」

 ちょうど近くに水たまりがあったので、のぞきこんでみる。

 若い娘の顔がそこにあった。


「あっ、高校の頃に若返ってるんとちゃう!? むしろ、昔よりかわいいわ! しかも、髪染まってるやん! これはハリウッド行けるんとちゃう!?」


 そういえば――

 さっき自称女神とか言う女性になんか言われたような……。

 おぼろげな記憶が少しクリアになってきた。



「村田ハルナさん、あなたは大阪のオバチャンですね」

 そのギリシャ神話でも出てきそうな服をまとった自称女神は、まじまじとハルナの顔を見つめた。顔というより、全身を観察しているといったほうがいい。周囲もどことなく、神殿風だ。


「せやで。大阪府大阪市出身で今も大阪在住やから文句なく大阪のオバチャンやわ」

「私の資料によりますと、大阪のオバチャンは地上最強の人類だそうです」

「人類最強って格闘家かいな~」

 さすがにそれは盛りすぎだろうとハルナは思った。


「なんぼなんでも人類最強ってことはないやろ、予選落ちぐらいなんとちゃうん?」

「いいえ! 私の詳細な調査から明らかに最強という結果が出ています!」

 女神が声を上げて強調する。ハルナもちょっと黙った。変な奴かもしれんと思ったのだ。

「ちなみに、あなたは大阪の天王寺で不慮の事故で亡くなっています。詳細は省かせていただきますが」


「せやな。どうでもええなっ――ってなんでやねん! それ、無茶苦茶大事やで!」

「それで私としては最強の実績を生かして、異世界最強の若い女騎士として蘇らせるつもりでいるわけです」

「新世界最強?」

 ハルナは聞き間違えた。


 新世界というのは通天閣があるような大阪のエリアのことである。

「串カツの店にけっこういかついおっちゃんおるで。あれに勝たなあかんのやろ。新世界最強って大変やで。弦ゆるみまくりのギター、昼からひいてるおっちゃんもおるし」

「あんまり中高年の女性が転生することはないので、私もどうなるかわからないのですが」

「まあ、でもええわ。新世界やろ? それやったら、恵美須町えびすちょうの駅から地下鉄乗って帰れるわ。ええわ、そこに連れていってや」


「あれ、なんか誤解を与えてるような……」

「誤解でも六階でもええわ。場所教えてや。家用に551の豚まんも買うてきたんやけど、はよ帰らんと冷めてまうやん」


 551とは豚まん(ほかの地域で言う肉まんのこと)とアイスキャンデーを売る大阪で有名なチェーン店である551蓬莱ほうらいのことである。このCMを知らない関西人はいない。

「それともう一つ理由がありまして、あなたには異世界でお好み焼きを布教していただきたいのです」

「お好み焼きを?」


「ちょっと、食糧事情があまりよくない世界がありまして……お好み焼きなら炭水化物も野菜も肉も入っているので、それを改善させる力があるはずなんです。ということで飛ばしますね!」

 ――そして、ハルナは異世界に転生したのだ。

 もちろん新世界ではない。



「若返ったんはええけどな、どこやねん、ここ。全然、新世界ちゃうやん。あ~、でも、奥に通天閣みたいな塔あるなあ」

 それはこの地域のボスが居城としている塔だった。


「あ、カバンに財布、入ってんのかな。あれ、ないやん! でも、飴ちゃんは入ってんなあ。スーパーたまうてきたやつ」

 スーパー玉出とは大阪にある激安スーパーのことである。多分日本で一番大阪らしいスーパーだと思われる。


「なんか目印ないんかな。淀川あったら、それでだいたい場所わかるんやけど。ん、なんや、あんたら」

 ふとハルナは違和感に気づいた。


 彼女の周囲に豚に似た二足歩行の連中が集まっている。それはオークの集団だった。その数、十体はくだらないだろう。

 草むらで倒れている一人の冒険者風の美少女、しかも武器も持ってなさそうときている。明らかにカモだ。オークが狙わないわけがない。


「あれ、もしかしてナンパなん? 道頓堀のあたりでようあるやつやん。うちも、きれいなったもんなあ」

 ナンパなんて二十五年ぶりぐらいなので、ハルナはちょっとテンションが上がった。

 ちなみに前回ナンパされた時は断ったあとに「ナンパされてん」と自慢できる人間に片っ端から自慢した。


 ハルナも今の自分が美少女になっていることは水たまりで確認している。自分が女子高生の頃はけっこうもてた。そのあたりの記憶が戻ってきた。

 大阪のオバチャンといっても若い頃はまっとうに美しいこともある。ただ、年をとると急速にオバチャン化していくのだ。おそらくそういう変化を遂げないと大阪では生きていけないのだろう。


「でも、ブーちゃんばっかりやん。ほんまもんの豚やん。あ、もしかして豚だけに551の豚まん買うたから怒ってるん?」

「ブヒーッ!」


 剣を持って、オークが突っこんでくる。

 軽く脅して言うことを聞かせようということだろう。

 それが刃物ということぐらいはハルナにもわかる。

「ったいっ!」


 ハルナは剣をかわすと、オークを右手で叩く。

 ――ドグオッ!!!

 素手なのに、それだけで遠くにまでオークが吹き飛んでいく。破格の攻撃力と言ってよかった。


「何してるん! 刃物振り回したら危ないやんか! ったいっ!」

 ったいっ――これは子供をしかる時に大阪のオバチャンが口にする叫びだ。

 ほかの地域で言うところの「めっ!」に当たる。


「あのなあ、こうやって安全に遊び」

 ハルナは手でピストルの形を作り、それをオークに向ける。

「バーン!」


 指で作った鉄砲で撃たれると、大阪では必ず痛がったり死んだふりをしないといけないという暗黙のルールがあるのだ。

 オークは無論、理解できなかった。というか、この世界にピストルがない。


「ああ、もう、ブーちゃんら、ノリ悪いわあ! あんたらとはやってられんわあ!」

 ――バシッ!

 ――バァッン!

 ハルナのツッコミチョップ二発でオーク二体がまた吹き飛んだ。


「あんたらも説教や! お尻出し! ごんたしとる子は叩くで!」

 ごんた――とはイタズラ者、乱暴者の意味である。

 次々とハルナはオークたちの尻を叩いていく。ハルナは知らない子供でも叱る派だった。


 ――バシイィン!


 ――ズバァアアアン!


 とてつもない威力で一発喰らうごとにオークは動けなくなった。

 その圧倒的攻撃力にほかのオークたちも怖気づいた。


 これは戦ってはいけないタイプの敵だ。攻撃力がおかしい。明らかにチートだ。

「ブ、ブ、ブヒーッ!」


 その場にオークたちが頭を下げる。ここは降伏するしかないと考えたらしい。

「なんや、謝るんか。かんにんしてや~ってことか、それやったら許したるわ」

 オークは命を助けられたお礼に宝石などをたんまり差し出してきた。

「あ、くれるん? じゃあ、ありがたくもらうで。宝石なんて近鉄で伊勢に旅行した時に真珠買うたぐらいやわ~」


 大阪からは近鉄の特急一本で伊勢に行けるので、関西から伊勢志摩に行くのはかなり楽である。伊勢のあたりなら難波から特急で約二時間で着く。


 中にあった指輪を一つ、ハルナは手につける。

「どう? 神戸っぽい?」


 大阪では「神戸っぽい」は「あなたはファッションセンスがありますね」の意味になる。

 もちろんオークにはまったく伝わらなかった。


「なんや、ほんまにブーちゃん、ノリ悪いな。お好み焼きに載せて食うてまうで」

 オークもなんか怖いことを言われてることだけはわかって、ビビった。そういうことは本能的に伝わる。


「あ~、おなか減ったわ。なんか店ないんかいな」

 あらためて見たが、周囲は草原が広がっているだけだ。どこへ向かえばいいのかもよくわからない。


「ここ、むっちゃ田舎やん。奈良みたいやわ」

 大阪では、妙に奈良を下に見ていることが多い。近鉄の路線などで大阪から奈良県に入ると、途端に田園地帯が広がるようなケースは実際にあるので、そのあたりの経験によるものなのだろう。


「なあ、ブーちゃん、町とかないか?」

 オークは近くの町のほうを指差した。


「あんがとさん。じゃあ、そっち行って見るわ~」

 ハルナは町のほうをのんびり目指すことにした。普通なら、ここはどこだと絶望するところだが、大阪のオバチャンたるハルナはそのへん、ポジティブである。

「まあ、町についたら電車走ってるやろ」

以後、新規スタートということで、大幅加筆したものをアップしていく予定です。(アカウントはそのままです。かなり特殊な方法ですが、会社などの確認などをとったうえで、行っております)

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