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戦国転生物語  作者: 高野康木
戦国武将編
9/27

八話 天才軍師ちゃん

「ぐすっ」


今、俺の前にひとりの女の子が居る。

しかも、泣いているのだ。

周りの視線が痛い。

どうして、こうなったのだろうか?

それは、あの人達が原因だーー。



ーーー



いつもの朝だった。

信長ちゃんが作ってくれた料理を食べて、気持ちのいい朝のはずだったーー。


「これは、私が作った物よ。べ、別に食べてみた感想たか聞きだい訳じゃないわよ」


どこぞのツンデレだよ。


「なんで、家にいるんだ?」

「あんたに借りを返してないでしょ」

「じゃ、この肉じゃがなのかわからん奴で借りを返したことにしていいぞ」

「肉じゃがよ!」


わき腹を殴られる。

なんなの、この暴力女。


「いやー、このままじゃもっと増えちまうなー」

「なんで、市くんは上機嫌なの?」


満面の笑みで言う市くん。

怒りが収まらない幸村ちゃん。

頬を可愛らしく膨らませている信長ちゃん。


「か、カオスだろ」

「誰がよ!」


二度目の腹パンチ。

そろそろ、腹が壊れる。


「あのさ!先から殴りすぎなんだよ!」

「あんたが、余計な事を言わなければすむ話よ!」

「いやー、痴話喧嘩は犬も食わないよな姉ちゃん」

「市の意地悪」


やばい。

幸村ちゃんが居るだけで、俺の人権がやばい。

俺のコマンド、逃げるを使う時だ。


「幸村ちゃん」

「何よ!」


プンプンしてる幸村ちゃんだが、俺は弱点を知っている。


「肉じゃがうまいよ」

「な、何よ急に!」

「いや、めちゃくちゃうまい」

「そ、そんな誉めなくてもーー」


これだよこれ。

デレてる瞬間は、隙がうまれるのだ。

さぁ、逃走するぞ武尊!

俺は幸村ちゃんが独り言で、あ、あんたが望むならこれからも食べさせてやらないことも、など言っている内に逃走する。

やめてほしい。

肉じゃがのジャガイモがない料理など、そんなに食えない。

しかも、めちゃくちゃしょぱい!


「あっ!武尊くん」

「コラ!武尊」

「頑張れ、武尊先輩!」


そんな言葉を背中で聞きながら、俺は学校に向かった。

なんで、俺はこんなに走らなければならないんだ?

今の自分の状態が、ひどく悲しくみえてきた。

朝からネガティブオーラを出していると、高等部の前に小さな女の子がいた。

白髪の短髪で、押したら倒れてしまいそうな程の細さ。

肌は白くて、病弱そうな印象をうける。

そんな女の子は、あちにウロウロこっちにウロウロと、下駄箱の前でウロウロしていた。

何か困ってんのかな?

そう思ってしまうと気になってしまう。


「君、どうかしたの?」

「ひゃあ!?」


女の子は、驚いた声をあげて俺の方を見る。

何故か、涙目で怯えた顔。


「あっ、もしかして迷子?」

「いえ、その、あの」

「それとも、お兄さんとかを待ってるのかな?」

「いえ、ち、違います」

「でも、ここ高等部だよ?」

「し、知っています」


うん?

迷子でもなくて、兄弟を待っている訳でもないと。

なら、この子はここで何をしているんだ?

突然、幸村ちゃんを思い出した。

そういえば、幸村ちゃんも小さかったよな。

本人に言うと、怒るから言わないけど。


「高等部の人なの?」

「いえ、中等部です」


あれれ?

なんか、よくわからなくなってきたぞ。


「中等部は、向こうの校舎だよ?」

「存じています」

「なら、どうしてここに?」

「り、利休先生に呼ばれまして」


利休先生?

それなら、クラスに行った方が早くないか?


「それなら、俺のクラスにいこうか」

「ど、どうしてですか?」


怯え切った顔で、俺を見る女の子。

そんな顔をしないでくれよ。

取って食う訳じゃないんだから。


「俺もこれからクラスに行くんだ」


だから一緒にーー。

その言葉が、途中で消えた。

と言うか、消された。

女の子の、すすり泣く声でーー。

回りの生徒が、俺の事を白い目で見る。


「泣かしたのか?」

「あー、あの織田さんが推薦した人でしょう」

「まだ、歳もそこそこな子供に何する気なんだか」

「嘘、ロリコン!」


言いたい放題だ。

今日の出来事で、俺はロリコンの象徴になったーー。


「嫌だー!!」


ふざけるな。

俺はロリコンじゅねーよ!!


「とりあえず、クラスに行こうよ!」


ここから、退散しなくてわ。

俺の心がもたない。

何より、俺のせいで信長ちゃんまで恥をかかせる訳にはいかない。

女の子の手を掴んで、クラスに急ぐ事にした。




やっとの思いで、クラスについた。

女の子は、かなり病弱なのだろう。

走るのが遅く、息を切らすのも早かった。

そんな子を走らせる訳にはいかなかったので、時折休みながらクラスにきた。

その間あらぬ噂を広められそうだったが、まぁ、下駄箱でばれてるんだから、今さらだろうと思って、歩いてクラスまできた。


「大丈夫?」


隣の女の子は、つらそうな顔をしていた。

速く歩いたつもりはなかったが、もしかしたら速かったかもしれない。


「ごめんなさい。私、体力があまりないので」

「いや、俺の方こそすまなかった。もう少し気遣えば良かったね」


そんなことを話していると、女の子が何やら言いにくそうな顔をしてーー。


「あのー、どうしてここまで」


その時、突然教室の扉が開く。


「おや?」


そこには、利休先生が立っていた。


「木下さん、ありがとうございました。彼女をここまで連れてきてくれて」

「いえ、それよりこの子は?」


利休先生は、苦笑いしながらーー。


「彼女は、頭がすこぶる良くてーー。中等部では有名なんですよ」


頭がいい?

なるほど、いわゆる飛び級なのか。

それはすごいな。


「彼女の名前は、半兵衛、竹中半兵衛(たけなかはんべえ)ですよ」



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