六話 黒髪ツインテの少女
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
今我が家の食卓では、会話が一切ない。
市くんが、気まずい顔をしている。
「あのさ、暗すぎない?」
市くんが、俺と信長ちゃんの顔を見ながら言う。
「まぁ、いろいろあったからね」
「はい、いろいろありました」
俺は、信長ちゃんの顔を見る。
ぎこちない笑顔だ。
「信長ちゃん」
「はい、なんですか?」
俺は、これで十回目になる言葉を言う。
「信長ちゃんのせいじゃないよ」
俺の身体は、傷だらけだ。
腕と足、腰にも包帯をしていて、顔には、ばんそうこうをしている。
あの後、信長ちゃんは、俺に何回も謝ってくる。
どう考えても、明智光秀が悪いのだが、彼女いわく、自分と一緒にいたからだとか。
そんなことはないのだが、彼女は自分を攻めまくっている。
「わかりました。今回は、甘えさせていただきます」
やっと、信長ちゃんが笑ってくれた。
いつもの道理の笑顔だ。
やっぱり、信長ちゃんの笑顔はこうでないと。
それと、明智光秀のことは、学園に報告しておいた。
その事で、この後理事長室に行かなければならない。
他にも、もう一つ理由があるのだがーー。
「てか、なんなんすか?明智光秀は!」
いきなり市くんが、怒声をあげる。
「こんなに、姉ちゃんと武尊先輩傷つけやがって!今世でも邪魔する気かよ!」
何の邪魔だ?
しかし、市くんの言う通りだな。
明智光秀と言えば、文武両道な武将だ。
織田信長に仕官する前は、大名を転々として、浪人生活していたらしい。
しかし、そんな恩人の織田信長を、明智光秀は、本能寺で殺した。
その理由は、不明だがーー。
「光秀ーー」
信長ちゃんが、悲しそうな顔で呟く。
「姉ちゃん、覚醒したんだよな?」
「ううん。してないよ」
「えぇ!どうゆうことっすか、武尊先輩」
「俺にもわからないよ」
マジっすか!?と市くんが驚きの声をあげる。
「じゃ、なんで明智光秀を倒せたんっすか?」
「覚醒したからかな?」
「訳わかんねーよ。姉ちゃん」
「まぁ、詳しい話はいつかするから」
やれやれ、この後理事長室に行くのが、嫌になってくる。
ーーー
理事長室には、昨日きたばかりだから、迷わずに行けた。
いざという時は、信長ちゃんもいるしね。
しかし、理事長室の前に誰かが立っていた。
身長は、145あるかないかくらいの黒髪ツインの少女だ。
顔を青くして、足利校長に怒られているようだ。
「なんか、気まずいね」
「あれ、あの子」
「知ってる人?」
「うん、同じクラスの人だよ」
あぁ、そう言えば家のクラスメイトの顔、ほとんど知らないや。
信長ちゃんは、知ってるからわかったのか。
「あれは、君の管理不足が招いたことだ!」
「はい、申し訳ありません」
「これ以上被害が出るようなら、破棄を命じられると思いなさい!」
足利校長の言葉に、少女が焦った顔でーー。
「そんな!あの子を処分するつもりですか!?」
「これ以上被害が起きるようなら、やむ終えんだろ」
その言葉を聞いた少女は、唇を噛み締めて、失礼しますと言い、去って行った。
「なんか、深刻そうな話だったね」
「そうですね」
2人で、話ている声が聞こえたのか、足利校長がこちらに目を向けてーー。
「きたか。入りなさい」
そう言ってきた。
俺と信長ちゃんは、頭を下げて、理事長室に入る。
「お待ちしてましたよ。織田さん、木下さん」
理事長には、絶対見えない帝理事長が、座っていた。
「全く、次々事件が重なる!」
足利校長が、頭を抑えて、うねり声を出す。
「偉いですよ。足利校長」
ご褒美と言わんばかりに、帝理事長がお菓子を足利校長にあげた。
何故にお菓子があるーー。
「それで、木下さん。織田さんが強制覚醒したのは、本当ですか?」
「はい、本当です」
俺の前で、豹変したんだからな。
「となると、やはり貴様が開けたのか」
「何をです?」
「覚醒の扉だ。普通の人間には開けることはできん」
まじか、俺普通じゃないの?
信長ちゃんの顔を見る。
どうやら、知っていた顔だ。
教えてくれれば、よかったのにーー。
「その話は、本当なら、木下さんはカリスマ性があるんですね」
「カリスマ性?」
「誰かまわず、引きつけることだ」
えーと、どういうこと?
訳がわからないと思っていると、信長ちゃんがーー。
「簡単に言うとね、芸能人とかそんな感じ」
なるほど、そう言うことか。
さすが、信長ちゃん。
「光栄に思え、その力を持つ物は転生世界広しと言えども、貴様と七神くらいだ」
えっ!そんなすごい力なの?
「今では、征夷大将軍も持ってますけどね」
「あやつの場合は、例外ですぞ。何せ気まぐれですから」
自分の孫に厳しい人だな。
「問題は、明智光秀ですぞ!」
「そうですね、困りました」
帝理事長が、悲しそうな顔でお茶を飲む。
やっぱり、明智光秀は何かあるのか?
「今回は、良かったとしても、あやつらなら、また襲いますぞ!!」
「あの、明智さんはどうして私を狙うのですか?」
初めて、信長ちゃんが理事長達に質問した。
気がかりだったのかーー。
「私らにもわかりません」
意外な、答えだった。
理事長達なら知ってると思ったんだけどなーー。
「知っているのは、明智光秀はある部隊に所属しているということだけだ」
「ある部隊?」
疑問を口にすると、理事長が言いにくそうに口を開いた。
「治安部隊です」
「ち、治安部隊ですか!?」
俺は、頭に?が浮かんでいるが、どうやらこの世界の常識らしい。
「えっとね、治安部隊っていうのは、学園が作った学園専用の部隊なんだ」
「学園専用?」
「学園を取締役だ。教師達だけでは、人手が足らんからな」
あれ、治安部隊ならなんで俺らを殺そうとするんだ?
「実は、最近になって私達のお願いを、無視するようになってしまったんです」
えっ、暴走してるってこと?
だから、俺らを殺そうとしたのか。
「それに、治安部隊のメンバーすらもわからん。明智光秀だけは、わかっているのだがなーー」
校長が、頭をおさえて言う。
苦労してんだな。
「明智光秀は、必ずまた狙うだろう。だから、お前達はなるべく一緒にいろ」
「そうですね。強制覚醒をできる人が一緒にいた方が、いいでしょう」
帝理事長は、椅子から立ち上がって、俺の目の前にくる。
「私と、目線を同じにしてください」
俺の方が、高いので目線を合わせるために、中腰になる。
すると、帝理事長が俺の額に額をくっつけてきた。
「えっ、ちょっとなんですか」
「静にーー」
帝理事長にそう言われると、不思議と静かにしなければならないような気がする。
ちなみに、隣からすごい殺気が飛んでくる。
帝理事長は、目を閉じて集中しているようだ。
しかし、帝理事長も目の前で見ると、美しいというか、神々しいというかーー。
取りあえず、ものすごく恥ずかしい。
「くすっ。惚れては駄目ですよ?」
帝理事長が、俺に微笑みながら言う。
「な、な、そんなことあるわけないですよ」
ハッハッハッ!と笑ったが、隣からの殺気が強くなったことに、冷や汗を流す。
「包帯を取っても大丈夫ですよ。きちんと、治しましたから」
そう言いながら、小悪魔のように微笑む理事長だった。
ーーー
「しかし、本当に傷が治ってる」
自分の腕を見ながら、呟く。
俺は今、商店区を歩いている。
信長ちゃんは、市くんから電話がかかってきて、家に戻っていた。
なるべく一緒にいるようにと言われたが、昨日襲われたばかりだから、大丈夫だろうと塚原先生の言葉だ。
それならと、俺は今晩の夕食を買う係りになった。
「えーと、これで全てかな?」
今日の夕食は、うどんにするらしい。
信長ちゃんの作る料理は、全て美味しい。
夕食のことを考えながら、鼻歌を歌って歩いているとーー。
「そうですかーー。ありがとうございます」
見覚えのある黒髪ツインテの女の子が、三ツ屋から出てきた。
「ここも、ハズレかーー」
メモ用紙に、×をつけて独り言をしている。
「何してんの?」
気になったので、話しかけてみることにした。
彼女は、俺の戦国学園の服を見ると、興味無さそうに溜め息をついた。
なんか、腹立つ。
「なんだよ、あからさまに溜め息つきやがって」
「あなたには、関係ないことよ」
そのまま、歩き出してしまう。
すると、地面に何かが落ちていた。
「何々、辻斬り犯の人相書き?」
声に出して読むと、彼女がすごい勢いで戻ってきた。
「知っているの!?どこよ!どこで見たのよ!」
思いっきり、肩を掴まれて振られる。
「ち、違うよ!君が落とした紙を見ただけで」
「なんですって!?私を馬鹿にしてんの!!」
今度は、首を絞められた。
「うえ~~~!違う違う!!」
やっと落ち着いたのか、首から手を離してくれた。
ゲホゲホ!
「ちっ!ぬか喜びさせんじゃないわよ!」
舌打ちをした後で、乱暴に手を離す。
なんなんだ、この子はーー。
「返して!」
これまた乱暴に、人相書を奪い取る。
「たく、余計な時間を使っちゃたじゃない」
「あのさ、手伝ってあげようか?」
首を撫でながら、俺が言うとーー。
「へっ!?」
驚いた声と共に、彼女の顔が赤くなっていく。
どうしたんだろう?また怒らせたか?
「あ、あんたなんかに手伝ってもらう義理なんてないわよ!」
「義理なんてないよ、ただの手助けさ」
そう言うと、さらに顔が真っ赤になる。
「あ、あんたあれね。私の身体目当てとかでしょ!」
訳わからん。
何故、彼女の身体を狙う必要がある。
「えっと、大丈夫ならいいや。それじゃ」
「あっ」
そう言うと、悲しそうな声を出す彼女。
「どっちなの?」
「うぁ、えっと、つ、ついてくれば?」
顔を赤く染めて、そっぽを向きながら言った。
この子ーー、ツンデレだな。
「俺の名前は、木下武尊だ。よろしく」
「私は幸村、真田幸村よ」
はい?
この子が、真田幸村?
あの大阪の陣で、徳川家康の本陣まで斬り込んだ日本一の武将?
「何驚いた顔してんのよ。こっちのほうが驚きよ」
「なんで?」
「あんたなんでしょ?強制覚醒の能力者わ」
あれ~!?もう知られてる!
「よ、よくわかったね」
「噂は広がるのよ。覚えておきなさい」
スタスタと、歩き出した幸村ちゃん。
取りあえず追いかける。
「この男を探せばいいの?」
「そうよ。と言っても本命は刀の方だけどね」
刀?
確かに刀を腰に差しているけど、この世界じゃ普通だよな。
俺だって、抜けない剣差してるし。
「わかった!刀集めが趣味なのか!」
「んな訳ないでしょ!」
足を蹴られた、しかも弁慶さんが泣くところ。
「うご~~!なんて威力だよ!?」
「あぁ、私こう見えて半覚醒者なんだ」
だからか!こんなに痛いのわ!!
「と、とりあえず住宅区に行こうよ」
「なんでよ」
「だって、ここはもう探したんでしょ?なら他のところ行ってみるのもいいんじゃない?」
「なるほど、一理あるわね」
案外頭いいじゃない、と言いながら歩きだす幸村ちゃん。
良ければ俺の事を気づかってくれるとうれしいな~。
「何トロトロ歩いてるのよ、キビキビ歩きなさいよ」
い、言ってくれるね~~!
誰のせいで遅く歩くはめになったんだよ!
「足が痛いんだよね~~」
意味がないと思ったが、オブラートに包んでお前の蹴りのせいだ!と言うことをいってみるとーー。
「たく、情けないね」
俺の横まで戻ってきた幸村ちゃん。
すると、肩を貸してくれた。
俺が意外な顔で幸村ちゃんを見るとーー。
「か、勘違いしないでよね!探す時間がおしいだけよ!」
顔を赤くしながら、そっぽを向く。
なるほど、ツンデレが好きな人の気持ちが、少しわかったような気がする。
ーーー
うかつだった。
商店区に温泉ができたことを知ってはしゃいだのが、まずかったわ。
まさか、妖刀村正が盗まれるなんてーー。
村正は変わった子。
覚醒者以外の人間が手にすると、その人物を操るほどの力を出す。
本当は、名刀正宗と一緒にいないと駄目なのにーー。
できることなら、覚醒者が持っていてくれたらいいと、私は望んでいた。
けれど、学園に転校生がきたその日に辻斬りが現れた。
漆黒の刀を持ち、まるで獣のように斬ると聞いた時は、村正だとすぐにわかった。
その日は、一日中探し回った。
だが、見つけることが出来なかった。
次の日、学園から連絡がきた。
村正のことだと、すぐにわかった。
この時の私は、半分諦めていたかもしれない。
足利校長が、言っていたとうり処分されるのをーー。
そんな事を考えているとーー。
「何してんの?」
戦国学園の男子生徒が、話しかけてきた。
黒髪で、腰には銀色の剣をさげている。
私は、あからさまな溜め息をついた。
その溜め息にムッとしたらしいけど、今の私には関係ない。
すると、今度は私をぬか喜びさせた。
イライラする男子生徒だ。
しかし、次の言葉はこの転生世界ではあり得ない言葉だった。
「あのさ、手伝ってあげようか?」
驚きと共に喜びが沸いてきた。
この世界では、他人にあまり関与しないのが常識だ。
何故かは、すぐにわかることだ。
親しくなればなるほど、嫌なところが見えてくるからだ。
そうなれば、殺してしまうかもしれない。
なんせ、この世界は殺しが許されているからーー。
なのにこの男は、私を助けようとしているのだ。
自分には関係ないことなのにーー。
嬉しかった、けれど口は真逆のことを言ってしまう。
これは、私の悪い癖だ。
すると、彼はあっさり帰ろとする。
「あっ」
知らぬ内に、悲しみを帯びた声が出ていた。
彼は、振り返りーー。
「どっちなの?」
私にチャンスをくれた。
私は、恥ずかしさを隠すようにーー。
「つ、ついてくれば?」
そう口にしたーー。
ーーー
幸村ちゃんが、どうしてこの刀を探しているのかやっと教えてくれた。
幸村ちゃんにとって、魂のような物なんだろう。
それを盗むなんてーー。
許せない!
第一盗みをする事が犯罪だ!
少なくとも、俺の世界ではな。
「住宅区についたわね」
「そうだね」
「で、どうすんのよ」
「え?歩くだけだよ」
激しく怒った顔をする幸村ちゃん。
ご、ごめんなさい。
「まぁ、そんなことだろうとは予想してたけどね」
黒髪ツインテを、ゆらゆらさせながら歩きだす幸村ちゃん。
なんか、引っ張ってみたくなった。
どうなるんだろう?
くいっ、と引っ張ってみる。
「きゃ!?」
おぁ!幸村ちゃんが女の子の声をあげた!!
しかし、二秒後俺の腹に拳がめり込んだ。
「何すんのよ!この能なし!」
あまりにも、代償が高かった。
俺がうめき声をあげていると、見知った顔の人物が、女の子と歩いてきた。
「あれー?武尊先輩じゃないっすか」
一人は市くんだ。
「この人が、信長様のーー」
もう人の女子生徒は見たことがない。
黒髪の短髪で、背中に槍を背負っている。
しかも、戦国学園の生徒だ。
「誰?あなた達」
幸村ちゃんが、眉を寄せて言う。
「うぁ!?レベルの高い先輩がいる!」
市くんが、幸村ちゃんを見てから俺の顔を見て、ニヤニヤしだした。
「やっぱり、俺と似てますね」
「市と同じにしたら、この人が可哀相」
隣の女子生徒が、市に殺人的な視線を送る。
やっと納得した顔をした幸村ちゃんがーー。
「織田市方と柴田勝家か。今世でも仲がいいのね」
うん?
「柴田勝家さん?」
やっと、痛みが無くなったので、俺がそう言うとーー。
「そうっす。かっちゃんですよ!!」
誇らしげに市くんが言う。
この子が、市くんの彼女かーー。
「ちょっと、武尊。人探し続けるわよ」
幸村ちゃんが、俺の手を引っ張る。
「わかってるよ」
「うん?人を探してんですか?」
「この人を探してるんだ」
俺が、人相書きを見せる。
「この人ーー」
「知ってるの!?」
幸村ちゃんが、勝家ちゃんに急接近する。
「うえ!?あぁ、先程見たところだ」
たじたじで、勝家ちゃんが言う。
「どこらへんだ!?」
「落ち着けよ幸村ちゃん」
勝家ちゃんが、大変そうだったので、幸村ちゃんを引っ張って離す。
「あそこの、路地裏だったはずだ」
「ありがとう!」
「おい!待てよ!」
俺を無視して走り出す幸村ちゃん。
「じゃね、市くん。浮気はほどほどにしときなよ」
軽く暴露して、幸村ちゃんを追う。
ちなみに、後ろで市くんの悲鳴がしたが、それは華麗にスルーしとく。
幸村ちゃんに追いついて、裏路に入るとーー。
黒い刀を持った人物がいた。
傍らには、息をしてないとわかるほどの、血まみれの死体。
これが、人の死なのかよーー。
「村正!!」
幸村ちゃんが、怒りに震えている。
自分の刀が、人を殺しているんだから、仕方ないのかもしれない。
「幸村ーー。真田ーー幸村ーー」
どうも、意識がないような言葉だ。
これが、妖刀の力かよ。
「死ねーー、幸村ーー」
村正に、黒い雷がまとわりつく。
あまりの強さに、妖刀の雷が周囲をスパークで破壊する。
「村正を、いい加減にしなさい!!」
幸村ちゃんが、名刀正宗を抜いく。
正宗に、白色の雷がまとわりつく。
「黒雷」
刀を一振りすると、村正から黒い雷が放たれる。
「白雷!」
同時に、幸村ちゃんも一振りする。
正宗から、白い雷が放たれるがーー。
「っ!?」
幸村ちゃんが、悔しそうな顔をする。
俺にもわかるほどの、力負けしているのだ。
「あぶねぇー!」
身体が、自然に幸村ちゃんを抱えて横に跳ぶ。
次の瞬間、俺らがいたところを黒い雷が通過した。
「嘘だろ!?操られてるのに、この強さかよ!」
なんとか避けられたが、次は避けられないぞ!。
最悪なことが起こった。
幸村ちゃんが、気絶しているのだ。
「えっ!?ちょっと、幸村ちゃん!?」
いくら呼びかけても反応がない。
やべぇー!!
「と、取りあえず逃げるしかーー」
ここで、嫌な音が耳に入った。
スパークの音だ。
ゆっくりと、妖刀の方を向く。
黒い雷が、妖刀にまとわりついていた。
しかも先程より強い。
「幸村ーー殺すーー」
「まじかよーー」
俺が、口を開いた瞬間ーー。
黒い雷が、俺らに向かってきた。
「くそっ!」
俺に出来ることは、幸村ちゃんの盾になるくらいだ。
覚悟を決めて、幸村ちゃんにおおい被さる。
大轟音と共に、スパークが飛び散る。
死んだーー。
「・・・・・・?」
あれ、生きてる?
恐る恐る目を開ける。
幸村ちゃんの髪の毛が、顔に少しかかっていた。
感触があるので、生きている。
今度は、顔を上げるとーー。
目の前に、戦国学園の制服。
しかも、男子のようでーー。
「い、市くん?」
俺が、その人物の名前を呼ぶと、美形顔の彼は振り向いてーー。
「ギリギリセーフすね、武尊先輩」
イケメンスマイルをして言う。
「ど、どうしてここに?」
「爆音がしたんで、一応駆けつけたんす。まぁ、かっちゃんから逃げるのに苦労しましたけどね」
市くんは、村正を見ながらーー。
「操られてこの力かよ。お前、壊す気か?」
どうやら、無理やり力を使わせてるらしい。
あの辻斬り犯の身体は、ヤバいのか。
「邪魔ーーする奴はーー殺す!」
また黒い雷を出し始める。
「ちっ!かっちゃん右サイドから頼む!」
市くんは、先程雷を止めたらしいデカい鉄扇を引き抜いて言う。
「任せて!」
妖刀の右側にいた勝家ちゃんが、槍を構える。
「岩盤創撃!」
技名と共に、槍が巨大化する。
「ハアーーー!」
ズドーンと馬鹿でかい音をあげて、妖刀を潰そうとするが、妖刀も人間では出せないほどの跳躍力で避ける。
「今よ、市!」
「さすが、かっちゃん!ナイスだぜ!」
市くんが、鉄扇を構える。
右手を左の脇に、左手を右の脇に入れた構えだ。
「烈風斬!」
技名と同時に、両手を振り抜く。
ゴオウと言う音と共に、市くんの目の前から竜巻が起きる。
普通の竜巻は、上に登るように回転するが、市くんの竜巻は妖刀に向かって回転して行った。
「ウルーー!?」
さすがの妖刀も、市くんの竜巻は避けられなかったらしく、竜巻に飲み込まれながら、民家に突撃する。
「さぁ、逃げますよ武尊先輩!」
そう言うと、鉄扇を少し浮かせて、何かを呟いた市くん。
すると、鉄扇が手に収まるサイズになった。
「そうだね、家に行こう!」
俺は、幸村ちゃんを担いで走った。
織田市方プロフィール
髪の毛 茶髪
性格 女の子好きだが、いざという時は頑張る
鉄扇 市方旋風自分で命名
技 主に風を使うが、回復術も少し使える。
シフトチャエンジの発音で、手元に収まるサイズにできる。
柴田勝家プロフィール
髪の毛 黒髪
性格 物静かで一途
槍 柴田朱槍市命名
技 形態変化を操る