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戦国転生物語  作者: 高野康木
戦国武将編
6/27

五話 第六天魔王織田信長!

ホームルームの終わりと共に、信長ちゃんがーー。


「武尊くん、もしこの後暇なら、買い物に付き合ってくれるかな?」

「うん、いいよ」


買い物なら、商店区だな。


「でも、何を買うの?」

「えっと、お醤油と油と味噌かな?」


なる程、かなり買うものがあるな。

確かに、信長ちゃん一人では大変だな。


「そう言えば、市くんは?」

「市は、ほっといていいよ。どうせ、ナンパしかしてないと思うよ」


ため息をついて、困った顔をする。

姉の心弟知らずだな。


「とりあえず、山城タワーに行こうよ」

「そうだね」


信長ちゃんが、満面の笑顔で言う。

あぁ、信長ちゃんの笑顔って可愛いな。

まぁ、本人は気づいてないんだろう。

やべぇ、ちょっと顔が赤くなってるかも。

その顔を見られないように、少し俯きながら歩くことにした。

しばらく歩いていると、山城タワーについた。

ここから、南に向かうんだよな。


「いつ乗っても、いい眺めだよね」

「フフッ。武尊くんって、電車に乗るといつも、楽しそうな笑顔するよね」


なぬっ、バレていたか。

でも、楽しいんだから、仕方ないよね。

そんなことを考えていると、信長ちゃんの目が、俺のネックレスを見ている。


「これが、気になる?」


服の中から、出して見せてあげるとーー。


「キレイな勾玉だね」


勾玉は、緑色に輝いている。


「これはね、親が俺にくれたんだ」

「ご両親が?」

「そう。俺の5歳の誕生日の時に、お守りとしてくれたんだ」


何故か、姉は貰ってなかったけどね。


「お守りなんだね」

「まぁね」

「そういえば、お姉さんがいるんだっけ?」


ぴたっ、と身体が止まってしまった。

無意識に、身体が止まってしまったのだ。


「あっ、ごめんね」


信長ちゃんが、申し訳なさそうに言う。


「いや、実はね。信長ちゃんには聞いて貰おうかな」


勾玉を握りしめながら、俺は信長ちゃんに話すことにした。

俺の姉は、生まれながらにして、飛び抜けていた。

学問、スポーツ、格闘、全て強かった。

俺の家族は喜んだ。

家から、天才が現れたのだから、喜ぶこともわかる。

けれど、天才だからゆえに、おかしな行動をする。

15になった時に、いきなり家を出て行った。

置き手紙には、必ず戻るとだけ書いてあった。

その言葉どうり、一年後に突然帰ってきた。

顔は泥だらけで、腰には、人を切ったと思える刀。

家は、大パニックになった。

誰かを殺したのだから、パニックになるだろう。

しかし、姉はーー。


「大丈夫。人を殺したけど、罪にはならないから」


そう、にこやかに笑って言ったのだ。

家族全員、背筋が凍った。

しかし、その時ばあちゃんだけは、別段気にした様子もなく、お茶を飲みながらーー。


「別に、気にしなさんな。罪にないと言っとるんだから、罪にならないんじゃろう」


その時の俺には、よくわからなかったが、もしかしたら、この世界に姉はきていたのではないだろうか。

それからというもの、姉はどこかに行ったり帰ってきたりを繰り返した。

そんな姉に、両親は怒りまくった。

姉の頭なら、どんなところでもいけたからだろう。

まぁ、普通の親なら、そう考えるだろうな。

しかし、姉は聞く耳を持たなかった。

そんな姉に嫌気がさした親は、どんどん中が悪くなっていった。

そして、俺の前から消えた。

そんなことを話していると、ふいに、俺の手に信長ちゃんが手を重ねてきた。


「大丈夫だよ、武尊くん」


簡単な言葉だが、何故か暖かい気持ちが、俺の心に広がっていく。

そうか、俺は誰かに聞いて欲しかったのか。

そう思うと、妙に清々しい気持ちになった。


「さて、降りよっか」

「うん。あのね武尊くん」


電車から降りてから、信長ちゃんがーー。


「また、何かあったら言ってね。聞くくらいしか出来ないけど」

「それじゃ、信長ちゃんも言ってね」


そう言うと、二人して笑いあった。

その後は、醤油を買う時おまけ貰ったり、油を買うときおまけ貰ったりした。

すごいね、可愛い子て。

味噌買うときは、二人して初めての時のことを思い出したけどね。


「そうだ、なんか食べていかない?」

「うん、いいね」


信長ちゃんの一押しの店、三ツ屋に入った。

そこで、みたらし団子と、餡蜜を注文した。


「いやー、なんか江戸時代にいるみたいだね」

「そう?」


外の番傘がある長椅子に座りながら、そんなことを話しているとーー。

俺らの前を、一人の女子が通りすぎて、三ツ屋に入っていった。

何故か、嫌な気配がした。


「あっ、餡蜜とみたらし団子がきたよ」

「うん、ありがとう」


みたらし団子を貰いながら、先ほどの女子を見てみる。

黒髪の短髪で、目が鋭い。

青いロングコートを着ていて、背中が、少し膨らんでいる。

腰には、業物の刀。

それだけなら、別段気にする必要がないが、一つだけ気になる。

あの目は、人を殺したことがある目だ。

みたらし団子を一つ食べ終えた時、信長ちゃんがーー。


「実はね、私も少し聞いて欲しい話しがあるんだ」


そう話しを切り出した。



ーーー



話そうか話すまいか、迷ってはいました。

確実に、家族に関することは、タブーだったはずです。

何故か、武尊くんは、自分の家族のことを話したがりませんでした。

でも、今日話してくれました。

話している時の武尊くんは、凄く険しい顔をしていたした。

話している時、彼の手が震えていました。

私は、知らぬ内に彼の手を握っていました。

でも、彼は嫌がらずに、笑ってくれました。

彼は、私に心を広げてくれました。

それなら、私も、彼に心を開かなければいけません。

それに、どうしてか、三ツ屋に少女が来てから、武尊くんは、その人のことばかり見ています。

確かに、可愛い人です。

店にいる男の人は、必ず一度は見るでしょう。

でも、武尊くんの場合は、警戒の視線です。

彼女の刀とかを、念入りに見ています。

だから、二本目の団子を食べようとした武尊くんに、話すことにしました。

私が、家でどうゆう感じに扱われていたか。

武尊くんは、真面目に聞いてくれました。

全てを話し終えるとーー。


「信長ちゃんも、大変だったんだね」


安心させてくれる笑顔で、そう言ってくれました。

その時、私の心が、軽くなりました。

同時に、彼は、私の味方でいてくれることもわかりました。

感謝の言葉を言おうとした時ーー。


「貴様、織田信長か?」


先程の少女が、私に話しかけてきました。

いつの間に、私の後ろにきたんでしょうか。


「そうですけど」


そう答えた瞬間、彼女はいきなり、抜刀しました。

何が何だかわからない私の後ろ襟を、誰かが思いっきり引っ張った。




ーーー



警戒していたはずだった。

俺が、後ろに立たれていたことに、気がつかなかったなんてーー。

少女は、信長ちゃんの名前を聞くと同時に、刀を抜刀した。

本気ではないことは、わかっていた。

おそらく、信長ちゃんならこの程度の力で、どうにかなると思ったんだろう。

俺は、反射的に、信長ちゃんを自分の方に引っ張った。

先程まで、信長ちゃんの首があったところを、刀が通りすぎる。

なんて、躊躇ちゅうちょのない太刀筋だ!

俺は、団子の串を、少女の目に向かって投げる。

しかし、少女は返す刀で、難なく串を弾く。


「なる程、信長を助けただけでなく、攻撃までしてくるとは、少しはやれるようだな」


少女が、冷静な声で、俺のことを見る。


「お前、誰だ!いきなり、殺そうとしやがって!!」


俺が片手で、抱きしめている信長ちゃんが、真っ青で震えている。

無理もない、初めて殺されそうになったんだ。


「護衛の奴か?」

「友達だ」

「そうか、それなら信長を置いて行け」


何を言ってんだこいつ。


「貴様まで、死ぬ必要はない」

「なんで、信長ちゃんを殺そうとしてんだ」

「貴様には、関係ないことだ」


その言葉と同時に、刀で突きを放ってくる。

狙いは、信長ちゃんの首ーー。


「くっそ!」


腰にさしておいた剣を、抜く。

キンッという、金属の衝突した音と同時に、俺は少し後退した。

俺の剣は、刃を抜くことが出来ない。

だから、鞘ごと防御に使ったんだがーー。

傷すらつかないとは、本当に凄い剣だ。


「今の速さにも、反応するとは」


どうやら、冷静に戦略分析しているらしい。

手強い敵だーー。


「信長ちゃん」


俺は、少女に聞こえない程度の声で、信長ちゃんに話しかける。


「は、はい」


少し落ち着いたらしいが、まだ顔が青い。


「逃げることを考えよう。あの子は危険だ」

「で、でもどうやって?」

「弾丸あるよね?」


今日の戦闘訓練で知ったのだが、信長ちゃんは拳銃と刀を、両方持っている。

だから、弾丸はあるはずだ。


「ありますけどーー、どうするんですか?」


俺は、信長ちゃんの耳に、出来るだけ顔を近づけて、頼み事をした。


「わ、わかりました」


よし、信長ちゃんなら、やってくれるはずだ。

俺は、彼女の攻撃を防がないとーー。


「相談は、終わったか?」

「あぁ、お陰様で」

「そうかーー、なら行くぞ」


さて、彼女の攻撃を、全て防げるかな?

少女は、刀を中段に構えて、俺に切りかかってきた。

信長ちゃんを、後ろに後退させて、俺は彼女の刀を剣で、受け止める。

キンッと言う音がなる。


「真剣でのやり合いは、初めてのようだな」

「当たり前だろ。出来れば、やり合いたくねーよ」


俺の返答と同時に、切りかかってくる。

俺は防ぐ。

彼女の太刀筋は、本当に恐ろしい。

俺の急所を、的確に狙ってくる。

防ぐので、大変だがーー。

俺の頬に、腰に、腕にと、切り傷が増えていく。

全部は、防げない。

もしかしたら、この子ーー。

上段からの振り下ろしを、防ぐとーー。


「気づいたようだな、私は覚醒者だ」

「やっぱり、ね。そうなんじゃ、ないかと思ってたぜ」


ギリギリと、刀を押してくる。

俺は、少しずつだが、後退させられてしまう。

ここまで、腕力に差がでてしまうのかーー。

すると、彼女の鋭い蹴りが、俺の腹めがけてくる。


「くはっ!」


肺にある空気が、全て吐き出された。

当たる直前に、腹筋に力を入れて、後ろに飛んだんだがーー。


「覚醒者との差が、ここまでとはな」


苦笑いするしか、ねーよ。


「今ので、わかっただろ。普通の人間が勝てる道理など、ないのだ」


ゆっくり、近づいてくる。


「大丈夫、武尊くん!」


俺のところに、駆け寄ってきた信長ちゃん。

信長ちゃんは、きちんと用意しててくれたらしい。


「ナイスだ、信長ちゃん!」


俺は、頼んでおいた袋を、信長ちゃんの腰から取って、少女に投げる。


「無駄なことをーー」


少女の目が、驚きに見開かれる。

その目は、信長ちゃんが持っていた拳銃に向けられていた。

俺が、袋を投げた瞬間に、脇のホルスターから、抜いたのだ。

バスンッ!

拳銃から、弾丸が飛び出して、袋に当たるとーー。

ドーンッ!

袋の中に入れておいてもらった、火薬が爆発した。


「逃げるぞ!信長ちゃん!」


俺は、信長ちゃんの手を握り、この場から逃げることにした。



ーーー



頭の回転の速さに、驚いていました。

武尊くんは、私に小言でーー。


「出来る限り時間を稼ぐから、銃弾から火薬を抜き取って、袋に入れておいてくれ」


なんで、そんなことをするのかわかりませんでしたが、この時のためだったとわーー。

元から、逃げるつもりだったのですね。

でもーー。

あぁ、武尊くんの肩から、血が流れ出ています。

地面に、血が落ちるたびに、苦しそうに息をする武尊くん。

これほど、自分の無力差を嘆いたことはありません。


「信長ちゃん、止まって」


かなり裏道を走った後、武尊くんが、止まりました。

肩で息をしていて、苦しそうです。


「信長ちゃん、ここで、お別れだ」


えっ!?


「ど、どうゆうことですか!?」


彼は、地面に落ちている血を見つめます。


「俺は、そんなに速く走れない。足手まといになるから」

「それなら、なおさら危険じゃないですか!」


彼は、苦笑いを浮かべながらーー。


「それに、俺ならもしかしたら、見逃してくれるかもしれないじゃん?」


私でもわかりますーー。

その可能性は、限りなく0に近い。


「それなら、身を潜めて奇襲すればーー」

「彼女の力を見たでしょ?そんなの、成功しないさ」

「それなら、二人で逃げればーー」


そう言うと、彼は力なく首を横に振る。


「無理だよ。ここにくるまでに、かなり血痕を残して来てしまった」


その言葉で、私はやっと気づいたーー。


「まさか、囮になるつもりですか?」

「・・・・・・」

「だめです!そんなことするくらいなら、私は戦って散ります!私も前世は武士だったんですから」

「それは、だめだ!」


武尊くんが、叱るような声で言います。


「前世なんて、関係ない!俺は信長ちゃんに生きてほしいんだ。それが、俺にできる恩返しなんだ」

「そんなの、私だって同じだよ!!」


口調が、はしたなくなりましたが、関係ありません。

目に涙を浮かべて、私はーー。


「私だって、武尊くんに生きてほしい!」

「けど、俺がいたらお荷物になる」

「それなら、彼女に殺されるつもりなら、私が殺す」


武尊くんが、目を見開いています。

私も、自分で驚いています。まさか、自分がこんなに殺気を出せるなんて。


「参ったな、信長ちゃんに殺しをさせる訳にはいかないよ」

「それじゃ!」

「一応、逃げれる所まで逃げてみようか」


その時、彼の肩から、鮮血が飛び散りました。

ゆっくりと、私の方に倒れくる初恋の人ーー。

遠くの方で、聞こえた銃声が、私の心を絶望に染めていくようでした。



ーーー



まさか、スナイパーライフルだったとはな。

背中に何か隠していることには、気づいていたんだけどーー。


「武尊くん!?」


倒れそうだった俺を、信長ちゃんが抱き止めてくれる。

情けないな、俺。


「ぐっ!」


今さら痛みがきやがった。

めちゃめちゃいてー。


「武尊くん!死んじゃだめです」

「死なないさ。信長ちゃんに殺されたくないからね」

「こんな時に、何言ってるんですか!」


信長ちゃんが、銃弾が来た方向の死角に入る。

さすが、よくわかってるね。


「これじゃ、どうしようもないな」

「絶対諦めませんよ。生きるんですからね!」

「わかってるよ」


壁に寄りかかっていると、信長ちゃんが拳銃を取り出す。


「無理だぞ、信長ちゃん」

「わかってますよ!気晴らしです!」

「さて、どちらから死ぬ?」


突然上から声がして、信長ちゃんと同時に見上げる。

そこには、片膝をついて、狙いを定めている女がいた。


「しつこい人ですね!」

「お前が、死ねば諦めるさ」

「てか、君誰なの?流石に、名前も知らない人に殺されるのは、嫌なんだけど」


そう言うと、彼女は狙撃銃の銃口を、俺に向けてーー。


明智光秀あけちみつひでだ」

「!?」


まじかい、今世でも信長ちゃんを殺す気かよ。


「さて、どちらにする?」

「私です」

「俺だろ」


信長ちゃんと、声が重なった。


「やれやれ、やはり信長からいくか」


やっぱりね、それならーー。


「なんの真似だ?」


俺は、信長ちゃんの手を握る。


「えっ!?た、武尊くん?」

「打つなら、打てよ」

「何か、策でもあるのか?」


やっぱり、食いついたか。

策なんて、ないんだけどな。


「武尊くん、策なんてあるんですか?」

「信じることくらいかな?」


そう言って笑いかけると、信長ちゃんも、笑いながらーー。


「それなら、奇跡を信じましょう」

「奇跡ね、確かにそうだな」


そう言いながら、信長ちゃんは拳銃を、俺は剣を光秀に向ける。


「俺は」

「私は」

「諦めない!!」


最後に、同時に声を出した時、俺の勾玉が一瞬光った。


「んぁ?」


勾玉を見た瞬間、俺の右目が赤く輝いた。


「なんだこれ!?」




ーーー




目の前が、真っ暗になると同時に、俺は変な空間に浮かんでいた。

変なと言う意味は、辺りに鎖が沢山あるからだ。

しかも足下は、真っ暗で奥深い。


「おやおや、もうここまで来たのかい?」


含み笑いをした声が、空間に響く。


「だ、誰だ!?ここはどこだ!?信長ちゃんは!?」

「質問が多いな~、まぁ、あの状況で来たんだから、仕方ないか」


本当に、仕方ないと言う感じで、声が答える。


「僕の名前は、まだ教えられないな。ここは、織田信長の精神の中だ」


はぁ、信長ちゃんの精神の中?

何言ってんだこいつ。


「ほら、あそこを見てごらん」


あそこって言うのは、あの扉か?


「君は、あれを開ける事が出来る。てか、開けないと明智光秀に殺されるよ?」

「開けると、どうなるんだ?」

「織田信長が、本当の信長になる」


訳わかんねー。

わかるように、説明しろや。


「要するに、覚醒するってことさ」

「えっ!?覚醒するのか?」


それなら、開けるしかない。

俺は、扉の前まで、走っていく。

近くで見ると、扉は鎖で何重にも巻かれていて、恐ろしいくらいの、殺気を放っていた。


「だめじゃね?これ開けたらマズい感じだろ」

「平気さ、この人だって開けてくれることを望んでいるはずだ」

「いやいやいや!ヤバいだろ、これは!」

「なら、開けなければ?君は、選択権を持っているんだから」


その言葉と同時に、俺の手に鍵が握られていた。

真っ赤で、持ち手に、織田木瓜おだもっこうの家紋がある。


「くそ、開けないと俺達ヤバいんだろ!?」

「うん、確実に殺されるね」

「ええい!どうにでもなれーーー!!」


俺は、がむしゃらに、鍵を鍵穴に入れて、回した。

ゴオン、と言う音が響くと、扉の鎖が崩れていき、扉が開く。

眩しさに、目を閉じてしまう。


「よくやった。誉めてつかわす」


誰かの、声と共に意識が遠のく。




ーーー




目の前が、先ほどの裏道に戻った。

明智光秀が、驚きに固まっている。

その瞳は、俺の隣を見ていた。


「おい貴様、いつまで余の手を握っている?」


あれ、俺が手を握っているのは信長ちゃんだよな。

こんな、言葉使っけ?


「ほぉ~~、余の忠告を無視するとは、案外肝っ玉の座った男だ」


ギリギリギリ!


「いっでぇーー!ちょっ、信長ちゃんどうしたんだよ!?」


手の骨が、折れそうだー!!


「ちゃん?貴様、誰の許可を得て余の名前に、ちゃん付けをしている?」


ブンッ!

世界が、回った。否、俺の身体が回った。


「うごぉ!」


手首を返されただけで、俺の身体は背中から、地面に叩きつけられる。


「全く、貴様に借りがなければ、打ち首だぞ」


俺の目に飛び込んできたのは、信長ちゃんのスカートの中ーー。


「そんな所を、見る余裕があるのか?貴様の目は!」


加減なしの、踏みつけ。

俺の目が、死んだかもしれない。

しかし、頭からはピンク色が離れない。

それと引き替えに、俺は目を失ったのか。


「潰しておらんだろ、さっさと立て」


やった!奇跡ってあるだね。

俺が、改めて信長ちゃんを見ると、彼女は変わっていた。

髪の毛が、真っ赤に変わっていて、目が鋭い。

瞳の色は、黒から黄色に変わっている。

一番変わったのは、性格だがーー。


「なんだ、立てんのか?情けないな、どれ、手を貸してやろう」


そう言うと、信長ちゃんは、俺を引っ張り起こしてくれた。


「うん?なんだ案外良い男ではないか!」


いきなり、邪悪な笑みを浮かべ、俺のネクタイを掴み、引っ張る。


「うげっ!?」

「貴様、名を名乗ることを許してやる」

「木下、武尊、です!ネクタイ引っ張らないで!」

「やかましい、余の家臣が口答えするな」


なんだこの独裁政治。


「木下か、ではサルだな」

「いや、武尊て言うんですけど」

「同じ事を言わせるな。サルはサルらしく、はい、と言えば良いのだ」


信長ちゃん!?なんかおかしくなっちゃたの!?


「何を驚いている?サルが余を呼び起こしたんだろうが」


呼び起こした?

まさか、あの扉ーー。


「気づいたか。どうもサルには、強制覚醒をさせる力があるらしい」


なんだ、強制覚醒?


「その話は後にして、取りあえず、物分かりの知らんサルを調教するーー」


その瞬間、信長ちゃんが、刀を抜刀する。

キン!

刀が、何かを弾いた。


「ずいぶん、せっかちになったものじゃ、光秀」


石化が溶けたらしい、明智光秀の発砲だった。


「まさか、その男が強制覚醒の、能力者だったとは、知らなかった」


標準を、信長ちゃんの頭に固定したまま、光秀が言う。


「余もそうじゃ。まぁ、人は見かけによらんと言うことじゃな」


拳銃を、回しながら、信長ちゃんが言う。


「さて、光秀。先程の火縄銃の標準は、誰を狙っておった?」

「・・・・・・」

「余の家臣だな。わかっていると思うがなーー」


俺の身体が、氷つく。

信長ちゃんの殺気が、溢れ出てくる。


「それは、余への、戦線布告だぞ!」


次の瞬間、光秀が打つ。

それに反応するように、信長ちゃんは拳銃を発砲する。


空中で、二発の弾が、ぶつかり合い火花が散る。


「くっ!」


初めて、光秀の顔に、焦りが現れる。


「さて、これで終わりだ!!」


信長ちゃんが、名刀、圧切長谷部へしきりはせべいを腰に構える。

刃先から、炎が、つばまで巻き上がる。


「獄炎波!!」


居合い抜きの感じで、炎が光秀に迫る。

ドオ~ン!

光秀が乗っていた、家が瞬く間に消し炭になる。

刀を、鞘に戻す信長ちゃん。


「やれやれ、流石は光秀だ。引き際を心得ておる」


つまらなそうに、信長ちゃんが俺を見る。


「いつまで、尻餅をついておる。立て」


また、無理矢理立たされた。


「取りあえず、お前は余の家臣だ」

「は、はい」

「余の家臣なら、余に口答えするな」

「は、はい」

「余のことは、信長様と呼べ」

「は、はい」

「うむ!聞き覚えのいい奴は、好きじゃぞ!」


初めて、信長様が笑った。


「むっ、マズい時間じゃ」


いきなり、フラフラしだす信長様。


「時間?」

「ふっ、初めてにしては、上出来だっだがの。信長」

「はい?」

「これから、あいつに戻る。もう少し、サルと甘い話をしたかったが、あいつが嫉妬するんでな」


含み笑いをしながら、信長様が言う。


「あぁ、あいつには、今まで道理、ちゃん付けしてやれ」

「あの~~?」

「さて、また会おう」


そのまま、倒れそうになる信長様。


「どぉわ!」


ギリギリの所で、抱き止める。

やれやれ、どうなってんだ、この世界。

これから、大変なことになりそうだ。

俺は、信長ちゃんだか様を抱きかかえたまま、空を見上げるのだった。

織田信長プロフィール。

髪の毛、ピンク色。


性格、内気。


刀、圧切長谷部。


拳銃、コルトパイソン。


強制覚醒する事で、覚醒できる。


信長覚醒プロフィール。


髪の毛、真っ赤。


性格、荒い。


技、炎より熱い獄炎。



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