四話 問題児の集まり?
「あの~、塚原先生」
「あん、どうした?」
塚原先生は、振り返らないで、言葉を返してきた。
今は、教師塔から教育塔に向かっていた。
ちなみに、教師塔だけ特別に、マスタータワーと呼ばれているらしい。
「なんか、普通の授業してませんよね?」
校庭を見ると、刀を降っていたり、拳銃を打つ練習をしている生徒達がいる。
「まぁ、上の人間から見れば、普通じゃないわなー」
歩きながら、煙草を吸い出した。
本当に教師かと思いましたよね?
教師なんですよ。
「なんで、こんな訓練するんです?必要ないと思うんですけど」
「ほぅ、なぜそう思う」
俺の質問に興味を持ったのか、塚原先生が、振り返って言う。
「だって、普通の人より10倍くらいの差があるんですよね?」
「そうだな」
「なら、普通に過ごしても大丈夫じゃないですか」
ニヤッ、と笑った後に、塚原先生がーー。
「普通に過ごすか~。確かにそうだな、だけどよ、人間には、必ずイレギュラーがいるもんだ」
フゥーー、と煙を吐いてーー。
「例えば、強い力を赤ん坊が持ったとしよう。すると、その赤ん坊は、成長するにつれて、さらに強さを求めるか、自惚れるかのどちらかだ」
そう言うと、塚原先生は、タバコの灰をポケット灰皿に、落とす。
「そうなれば、自分の都合の悪い奴は、力で押し潰すだろう。それが、許されないことでも、逆らう力が無ければ、どうにもならない。だからーー」
次の瞬間、俺の目の前に刀の先が、現れた。
「逆らえる程の力はつけさせる。それが、俺ら年長者が出来ることだーー、お前は、俺らのやり方をどう思う?」
凄みがある殺気。さらには、いつ抜いたか、わからなかった刀を、突きつけられての質問。
自然と、同意してしまいそうだが、俺はーー。
「俺は、力にもいろいろな使い方があると思います」
「ほぉ、どうゆう使い方だ?」
「確かに力があれば、人間はその力を使ってしまうと思います。けれど、その力を暴力に使わなければいいと思います」
「力は力だろ?結局は暴力だろうが」
「それは、違う!!」
自分でも、驚くくらい大声を出していた。
「力にも、相手をいたわる思いがあれば、それは、暴力じゃない」
「なぜ、そこまで言い切れる?」
「実体験です」
俺は、小さい頃に、幼なじみの女の子を守るために、同年代の男子に力を振るった。
そん時は、本当に倒すためだけに、力を振るった。
だから、助けた幼なじみまで、俺を避けていってしまった。
俺が、暴力を振るったからだ。
その時、ちょうど家に来ていたばあちゃんに、暴力と、ある力の使い方の違いを教えてもらった。
それは、守る力だ。
自分の心を制し、操ること。
けして、力に操られないことだ。
その意志を知ったのか、塚原先生が、殺気をなくして、ニカッと笑ってーー。
「いい目だ。気に入ったぜ!」
刀を、いつの間にか戻しており、俺の肩を叩いて言う。
「あん、お前の腰に下げてる物、かなりの業物だな」
「でも、抜けないんですよね」
「抜けないだと。どれ、貸してみな」
「あっ、重くなるらしいから、やめておいた方がいいですよ」
そう言うと、目を丸くする塚原先生。
「転生者が持ってもか?」
「えぇ」
市くんが持ってもそうなんだから、そうだよな。
「なるほど、上等封印か」
「なんです、その上等封印とか言うのは」
「この封印を使えるのは、幕府のお偉いさんか、太政大臣、関白、七神ぐらいだろうな」
「えぇ!!」
その話が本当なら、この剣めちゃくちゃやばいじゃん。
なんで、ばあちゃんの家の倉庫にあんだよ。
「まぁ、考えても仕方ないわな。ほれ、行くぞ」
そう言うと、また歩き出してしまった。
そうこうしてる内に、教室についた。
「おーし、静かにしろやガキ共」
ガラ!と言うでかい音をあげて、塚原先生が入る。
「げぇ!また、塚原かよ」
教卓のすぐ前に、座っていた女子生徒が、大声で言う。
「おう、嬉しいだろガキ」
「てめ、いい加減名前覚えろやー!!」
「ハッハッハ。だったら、おとなしくしてろよガキ」
なんなんだ、この人達は。
廊下まで聞こえる声で、よく話すな。
「おーい、木下入っていいぞ」
「えっ、武尊くん!?」
窓側の一番後ろにいた、信長ちゃんが、大声で言う。
「織田さん。静かに」
「あっ、ごめんなさい。上杉さん」
あっ、中心の席に上杉さんもいる。
「あー、こいつは木下武尊だ。上から来たんで、いろいろ教えてやれ、以上。信長の隣の席に座れ」
はやっ!めちゃくちゃ適当だな。
言われたので、信長ちゃんの隣に座る。
「よ、よろしく武尊くん」
「うん、よろしく信長ちゃん」
おや、元気そうでよかった。
別れた時は、元気なかったのに。
証拠に、頬がほんのり赤くなってるし。
「じゃ、ホームルームするぞーて、言いたいが、特にないから、これで終了」
そう言うと、教室から出て行ってしまった。
まじか、本当にわからん学校だな。
てか、人がいねー。
「いつもは、私と上杉さんだけなんだよ」
信長ちゃんが、恐ろしいことを言う。
どうみても、15以上はいるはずなのに、俺を入れて、4人しかいない。
「そのとうりだ。まぁ、きちんと来なくてもいい学校だからな」
そう言いながら、上杉さんが、俺の目の前に来た。
「改めて、これからよろしく武尊くん。謙信と呼んでくれ」
「わかりました。俺のことは武尊と呼んでください」
そんなことを話ていると、先程塚原先生と言い合っていた女子生徒がーー。
「おっす、私は武田信玄だ。よろしくな藤吉郎」
武田信玄だと!?
どんな、戦国オンパレードだよ。
武田信玄と言えば、戦国最強の武田騎馬隊を作った人物であり、上杉謙信とは、川中島で何度もやりあった人物だ。
それが、こんな女の子に転生するのか。
目は野獣のような感じで、金髪の髪の毛は、胸まである。
一番目に入るのは、その裕福な胸だ。
とりあえず、視線に困る。
しかし、名前だけは、訂正しないとーー。
「あの~、藤吉郎じゃないんですけど」
「あん?木下つうなら、藤吉郎だろ」
出た、なんなんだよここの人達は、何かにつけて藤吉郎とか言う。
訳わからん。
「彼は、まだわからんらしい」
「はぁ、なんだそれ?」
「上にいたからじゃ、ないかな」
「まぁ、仕方ないとゆうことだな」
謙信さんが、そう言うとーー。
「ところで、お前いい体つきしてるな」
「はっ?」
唐突な発言。
何を言ってんだ武田さん。
「う~ん、お前何かしてたろ?」
「えぇ、剣道を少々」
「少々じゃねーだろ」
そう言うと、俺の腕を触りだす。
「お、おい信玄!破廉恥だぞ!!」
「なんだよ、腕くらいで」
「腕よりも、発言が破廉恥だ!」
「そんなにウブだから、お前は前世で結婚出来ねーんだよ」
そう言えば、上杉謙信は、生涯独身だったんだな。
「ぜ、前世は関係ない!」
「恐らく、今世もだよ。なんたって、お前胸ないしな」
凄い嫌な笑みで、武田さんが、謙信さんに、自分の胸を強調させた。
うわ、俺からしたら目の毒なんだけどーー。
「な、な、胸なんて、ぜい肉の塊だろうが!」
顔を怒りで真っ赤にしながら、武田さんを睨みつける。
自分の胸を抱くように。
「いやいや、男ってのは、結局色気で落ちるもんなんだよ」
「い、色気なら私だってあるわ!」
「その胸でよく言えるな~。な、信長」
「わ、私は知らないよ」
信長ちゃんが、真っ赤な顔で言う。
こちらは、羞恥でだろうが。
「ほら、武尊だって、私の胸に釘付けだぜ」
うわ!俺にきた!!
「何だと!そんな、こんなぜい肉の塊の何がいいんだ!?」
「いや、俺は別に見てないから!ねぇ、信長ちゃん?」
助けを求めるとーー。
「最低」
ぐわ!ダメージ120%!!
こんな冷たい目も出来るんだねーー信長ちゃん。
「あぁー、仕方ないなー、私の下につくか?」
「つかないよ!元はといえばあなたのせいでしょ!!」
そんなことをしていると、扉が開かれてーー。
「休み時間は終わりですよ。席についてください」
眼鏡をかけていて、茶髪のロングヘアーの男性が、穏やかな声で言う。
その声で、謙信さんと武田さんが、自分の席に戻る。
「初めての人もいるので、自己紹介をしましょうか」
コホンと、咳払いしてーー。
「私の名前は、千利休(せんのりきゅう」です。主に礼儀作法や、戦術論を教えています」
千利休かい。
あれ?でもあの人は、戦術論とか知らないさずだけどーー。
「必ずしも、前世と同じとは限りません。ここは、あまり知識を教える人がいないんですよ。塚原先生みたいに、戦闘術を教える人はたくさんいるんですけどね」
俺の疑問に答えるように、利休先生が、苦笑いしながら言う。
こうして、俺の初めての授業が始まったんだがーー。
ぶっちゃけ訳わからん。
普通の授業をしているところは、いいんだ。
ただ、4時間目が、戦術論。
これが、一番わからん。
敵がこうしたら、こうしろとか言うのだ。
敵ってなんだよ。
そんな奴現れるのかよ。
「がぁーー!わかんねー!!」
いきなり大声を出す武田さん。
「おや、信玄さん。どうかしましたか?」
「どうもこうもねーよ!こんなのやる意味ねーだろ」
おぉ!俺と同じ考えの人がいた。
「こんなことされる前に、たこ殴りにするべいいだろうが!」
前言撤回、俺に味方はいない。
「おやおや、困りましたね。覚えておいて損はありませんよ」
「実際使うのは、これだろーが!」
武田さんーーいや、もう信玄でいいや。
だって、握り拳を見せてるんだもん。
力で解決は、いかんよ。
「ふむ、確かにそうだと思いますよ」
「だろ?」
「しかし、もし、敵が隠れていたら」
「はっ?」
信玄は、口を大きく開けて、ポカーンとしている。
「信玄さんの性格からすると、罠をよけずに突き進むタイプでしょ。なら、私が敵なら罠を仕掛けまくって、弱ったところを殺すでしょ」
エグい、なんてエグいんだ。
しかし、この言葉には、説得力があるので、信玄もたまらず押し黙った。
「わかっていただけたようですね。それでは、続きをしましょう」
先程のエグい考えをした人とは、思えない笑顔で授業を再開した。
ーーー
う~、武尊くんが大変そうです。
先程から、ノートに書き写しているのですが、教科書を意味なくめくっています。
あぁ、怒りすぎてしまったのでしょうか。
でも、武田さんの胸なんかに、釘付けなのがいけないんです。
でも、彼にとって味方は、私一人なのでしょう。
そうだ、今日の夜教えてあげればいいんです。
なんたって、私達は同じ家に住んでいるんですから。
しまった、自分で考えていたら、顔が熱くなってきました。
「大丈夫、信長ちゃん」
「ふぇ!してませんしてません!夜のこたなんて考えてません!」
「はい?いや、昼ご飯食べに行こうよ」
お腹減っちゃてー、と笑いながら武尊くんが言います。
知らない内に、授業終わってたんですか。
「昼ご飯なら、私が弁当作ってきたんだけどーー」
「えぇ!信長ちゃん作ってくれたの?」
「はい、そうですけどよかったら」
「ありがとう!」
ここまで、喜んでくれるなんて!
作ったかいがあります。
「いただきーー」
「うお、うまそうな弁当だな」
「あっ、信玄」
「お前、なんで呼び捨てなんだよ」
「いや、なんかもういいかなーて」
なー!武田さんなんて、悪いタイミングでー。
「玉子焼き一つくれよ」
「いや、これだけはやらん」
「あぁ、なんでだよ」
「俺の弁当だからだ」
武尊くん、そこまで私のことをー!!
あぁ、また熱くなってしまった。
「おい、信玄」
上杉さんが、武田さんを呼んできました。
「なんだ、カマトト」
「だ、誰がカマトトだ!塚原先生が呼んでいたぞ」
「げぇ!ト伝が?」
「どうせ、成績のことだろ」
ほっ、これで武尊くんと二人きりです。
武田さんと上杉さんが、教室から出て行きました。
「う~ん、美味しい!」
「本当ですか?」
「うん、信長ちゃんの作る料理て、美味しいよね」
どうしてなんだ?と言いながら、考えている武尊くん。
「私は、普通に作っているだけだよ?」
「普通で、これとは!すごいな信長ちゃん」
「そんなことないよ」
「いやー、信長ちゃんの料理なら、一生飽きないなー」
「一生!?」
ま、まさか告白ですか!?
いや、落ち着け私。私達は付き合ってもないんですから。
「でも、武尊くんがいいなら私わーー」
「でも、信長ちゃんと住んでんだから、食べられるか。あっ、でも信長ちゃんもいずれは嫁に行っちゃうのか」
あれ、もしかして武尊くんって、私のことそんなに思ってないの?
だって、私が嫁に行く前提だしーー。
はっ、しまった。そんなことより次の時間はーー。
「あの、武尊くん!」
「うん?どうしたの」
「次の時間、戦闘訓練なんですけど、お相手してくれませんか?」
「うん、別にいいよ」
よかった。
戦闘訓練だけは、どうにかならない物でしょうかーー。
ーーー
「きぁ!」
しまった。
そう思った瞬間、信長ちゃんは増大に尻餅をついた。
「ご、ごめん。大丈夫?」
「は、はい」
手を差し出すと、何故か、信長ちゃんが真っ赤な顔でーー。
「えっと、その、あの」
「ほら、手を」
そう言うと、手を握ってくれた。
ぐいっと、立たせてあげる。
しかし、今度は力加減を間違えた。
ふらっとしてしまった信長ちゃんを、片手は木刀を持っていたので、胸で受け止める。
「!?」
信長ちゃんが、勢いよく離れた。
もしかして、汗臭かったか?
「ごめん、臭かった?」
「ううん!そうじゃないの、そうじゃ」
顔を真っ赤にしながら、横に高速で首を降る信長ちゃん。
「そ、それより、ごめんね。私弱いから」
「なんで、謝るの?」
「だって、私弱いから、武尊くんの練習出来ないでしょ?」
なる程、そうゆう意味かーー。
俺も、自分の姉とやり合った時、そう思った時がある。
けど、それは間違いだ。
「信長ちゃん、別に迷惑じゃないよ」
「でもーー」
「努力をしない人に、強くなる価値なんてない」
「えっ!?」
「信長ちゃんは、努力してるじゃん。それなら、とことん付き合うよ」
よし、信長ちゃんの目に力がでてきたな。
「こい!」
「はい!」
結局、信長ちゃんは俺から一本も取れなかったけど、信長ちゃんは清々しい顔をしていたので、良かったと思った。