三話 いざ、戦国学園へ!
朝日が、俺の目に差し込んでくる。
なんで、海の中なのに朝日とかわかるのか?
実は、そんなに深くないんだと。
あの岩の中は、海で、その少し下にこの世界があるんだと。
不思議なこともあるもんだ。
ちなみに、俺の寝床は一番奥の右側。
信長ちゃんが左側、市くんが、俺の後ろの部屋。
「ふぁ~」
眠気を追い出すように、背伸びをする。
うん、調子はいつものどうりだな。
ふと、横を見ると、俺の青色の学生服が、綺麗にたたんである。
信長ちゃんには、感謝の一言だ。
家事全般を、ほとんど一人でしてくれるのだ。
しかも、こうして毎朝服をたたんで、置いていてくれる。
いやー、将来いいお嫁さんになるだろうな。
そんなことを思いながら、制服に着がえる。
市くんと信長ちゃんの進めもあって、俺は戦国学園に入学することになった。
お金が心配だったが、なんと、特待生で入れてくれると言うではないか。
ほとんほど無料なのだから、行かない手はない。
でも、信長ちゃん達って、もしかして、かなりの権力者の家の人なのかな?
そんなことを考えながら、居間に向かう。
「あっ、おはようございます」
「おはよう」
信長ちゃんが、ご飯を茶碗に入れているところだった。
ちなみに、戦国学園の制服は、男は青の服で、女がピンクなので、信長ちゃんの服はピンク色だ。
「なんか、ごめんね。いつも料理作ってもらっちゃて」
「ううん。泊めてもらってんだから、このくらいしないと。それに、なんか夫婦みたいだし」
後半が聞こえなかったが、まぁ、たいしたことじゃないんだろう。
「おはようございまーす」
眠たそうな声で、市くんが起きてきた。
地毛の茶髪をかきむしりながら、座る。
「市、正座しなさい!」
「はいはい、全く姉ちゃんはーー」
グチグチ言いながらも、正座する市くん。
「おっ、武尊先輩。似合ってますね」
「えっ、そうかい?」
「はい、似合ってますよ」
美男子美女から、そんなこと言われるとは、素直に嬉しい。
「じゃ、食べようか。いただきます」
「いただきます」
なんか、俺の合図で食べるのが、恒例になってしまった。
「そうだ、武尊くん」
「うん?」
そう言って、信長ちゃんが、布で包まれている剣を、俺の前に置く。
「何これ?」
「えっとね。倉庫を掃除してたら、出てきたの」
布を取ってみると、眩いくらいの銀色の剣が、出てきた。
「うーん。業物っすね」
「そうなの?」
よくわからないが、市くんが言うのだから、そうなのだろう。
しかし、抜こうと思ったが、抜けない。
「なんだこれ、抜けない」
「そんなことないっすよ。貸してみてください」
市くんに、剣を渡すとーー。
「ふげっ!?」
ドンっ!
重い音を出して、剣ごと、市くんが土下座する。
うおー、どうしたんだ?
「市、何してんの?」
「えーと、面を上げい」
「ちょ、遊んでるんじゃないんすよ!これ、なんか変な能力あるんす」
くぐもった声で、市くんが言う。
剣を取ると、市くんが、勢いよく顔を上げる。
「な、何すかこの剣!?重力が身体にーー」
「おかしな。私の時はそんなこと、なかったよ?」
「確かに、信長ちゃんは、普通に持ってたよね」
「俺の話を無視っすか?怪しいのは、布でしょう」
むすくれた顔で、市くんが言う。
確かに、信長ちゃんが持てたのは、布が原因かもしれない。
「本当だ。なんか変な字が書いてある」
確かに、字みたいなのが書いてあるがーー。
よ、読めん。
「昔の字っすね。なんて書いてあるかわかりません」
「うん。私もわからない」
よ、よかった。俺だけじゃないのね。
「あっ、そろそろ時間っすわ」
そう言うと、市くんは鞄を持ってーー。
「じゃ、俺は先に行きますわ」
そう言うと、市くんは、走って行った。
ーーー
やっと、二人きりになれました。
でも、これからは登下校もするなんて、口から心臓が飛び出しそうです。
「洗い物くらい手伝うよ」
洗い物をしながら、そんなことを考えていると、武尊くんが話かけてきました。
「あっ、大丈夫だよ」
「いやいや、これくらい手伝わしてくれよ」
そう言いながら、微笑みかけてくる武尊くん。
あぁ、かっこいい。絶対顔が、赤くなっています。
「ところでさ、信長ちゃん」
「はひっ、なんですか」
うぅ~、変な声が出てしまいました。
「俺さ、学園のことわからないから、暇な時案内してくれる?」
「い、いいですよ」
なんと、私から言おうとしていたのに、武尊くんから言ってくれるなんて。
でも、本当に私なんかでいいんでしょうか?
学園では、最弱の私なんかで。
確かに、力では他の人達に勝てないので、頭はいい方だと思いますけどーー。
「それじゃ、俺らも行こうか」
「はっ、はい」
まぁ、そんなことは忘れて、今の時間を楽しむことにしましょう。
ーーー
戦国学園ってのは、ものすごいでかさだった。
まず、門を通ってから、校舎までかなりの距離がある。
それだけでなく、体育館に校庭、校舎は高等部だけでも四校舎あるのだ。
「広いね~」
「そうですか?」
信長ちゃんは、普通な顔をしている。
そうか、ここの人達の学校は、ここしかないのか。
「えーと、理事長室は、一番大きな校舎の四階だよ」
教師塔とゆところの、四階にあるらしい。
ちなみに、信長ちゃんとはここでお別れだ。
「それじゃ、同じクラスだといいね」
信長ちゃんが、悲しい顔をしていたのが、頭に焼き付いている。
あれか、信長ちゃんも、不安なんだな。高校に入ったら、クラスも変わるからな。心細いんだろう。
そんなことを考えながら、教師塔に入ったのはいいがーー。
右と左、どちらに行けばいいんだ?
教師一人一人に、専用の部屋があるので、かなりの部屋数なのだ。
とりあえず、四階に行くかーー。
信長ちゃんにもらった地図と、生徒手帳を見ながら、階段を上がっているとーー。
「君、前を見ないと、危ないぞ」
凛とした声が、俺の目の前で聞こえた。
「ほぇ?」
顔を上げると、黒髪ロングで、整った顔立ちの鋭い目つきの女子生徒が、立っていた。
「ここは、先生達も通るところだ。ぶつかったりしたら、大変だぞ」
「あっ、すいません。始めてのところなので、よくわからなくて」
素直に謝る俺を、少し意外そうな顔で見る女子生徒。
「あの~、何か?」
「いや、戦国学園の男子生徒としては、ずいぶん素直だと思ってな」
どうやら、ここの学園の男子は、素直ではないらしい。
しかし、俺が悪かったので、普通に謝っただけなのだがーー。
「ところで、君はもしかして、転校生かい?」
「えぇ、そうなんですよ」
「なるほどな。では、理事長室まで案内しょう」
「えっ、あ、ありがとうございます」
俺が言い終えるやいなや、彼女は、歩きだしていた。
「えっと、俺の名前は、木下武尊っていいます」
「木下?」
いきなり止まり、俺の方を向く。
「まさか、藤吉郎の転生者か?」
「藤吉郎?いえ、俺は、上からきたんで違いますよ」
「上からだと?」
これまた、意外とゆう顔をする女子生徒。
「あの~」
「いや、すまない。君の雰囲気が、転生者のような感じがしてな」
ごくまれに、上でも転生者がいることもあるから、わからんがな。と言う女子生徒。
「俺が、木下藤吉郎とかゆう人の転生者だってことですか?」
「藤吉郎ではないかも知れないが、私の感はよく当たるのでな」
俺が、転生者?
ないな。
「申し遅れた。私の名は、上杉謙信だ」
「はえ!?」
「どうした?」
信長の次は、謙信だと?
上杉謙信とは、戦国最強の武将であり、義を持って戦う人物だ。
それと、生涯独身だったとゆうことも、有名である。
「ここだ」
謙信さんに言われて、横を見ると、先程の扉より、豪華な扉があった。
「ありがとうございました」
「気にするな。生徒会長として当然のことだ」
生徒会長だったのか。
そう言うと、謙信さんは、教室のある方向に向かって歩いて行った。
「失礼します」
ノックをしたら、男の声で、どうぞと聞こえたので、入るとーー。
「おまちしていましたよ。木下さん」
中学生くらいの、女の子が座っていた。
理事長みたいにーー。
「これ、挨拶せんか」
女の子の隣に立っていた老人が、そう言ってくる。
「木下武尊です」
一応、名前を名乗るとーー。
「織田さんが推薦した木下武尊さんで、よろしいですね?」
書類だと思う紙を見ながら、女の子が問いかけてくる。
「はい。そうです」
「そうですか」
にこやかな笑みで、女の子が言ったとたんーー。
「理事長!そんな簡単に信じるんですか!?」
隣の老人が、大声を上げる。
うん?理事長だとーー。
「うふふ。皆さん同じ顔をするんですね」
「理事長!聞いていますか!?」
「落ち着いてください。まずは、我々も名乗らないと」
コホンと、咳払いをして、女の子がーー。
「戦国学園理事長の、帝と言います。本名は、まだ教えられませんので、帝理事長と、呼んでくだされば嬉しいです」
「足利義満じゃ、現征夷大将軍の、足利義輝の父親じゃ」
はっ、理事長が
嘘だ、信じたくない。
「それでは、木下さんの教室ですが、やはり、信長さんと同じ方がいいですよね」
「はぁ、まぁそうですね」
「それでは、信長さんと同じ、中間組でお願いします。ちなみに、能力の大きさで、組が別れているんですよ」
「あの組に、この男を入れるのですか?これは、また問題児の集まりになりおる」
この人、人を問題児みたいだと思いやがって。
「当然じゃ、なんせ、豊臣秀吉まであのクラスとは」
「豊臣秀吉?違いますけど」
「何?」
「早とちりし過ぎですよ、足利校長。私は、彼が転生者だとしか言ってません」
えっ、転生者?
「ふふ。やっぱり気づきませんよね、自分では」
「この帝理事長は、転生世界の、七神なのだ。誰が転生かくらいわかる」
「と言っても、転生とわかるだけで、誰の転生者かは、わからないんですけどね」
俺が、転生者?
ありえない。けれど、姉は強かったよな。
いや、姉のことは、思い出さなくていい。
「あの~、質問いいですか?」
「はい、どうぞ」
「七神てのは、なんですか?」
「貴様!七神をしらんのか!?」
「す、すいません」
でたよ、この世界の常識。
わかるわけ、ねーじゃん。
「七神と言うのは、名前のとうり、七人の神のことです。ちなみに、今は私を含めて4人しかいませんが」
「仕方ありません。他の方々は、死んでいるのですから」
へぇー、神様ねー。
まぁ、驚きが少なくなってる!
俺も、慣れたものだ。
「さて、そろそろ来る時間じゃな」
足利校長がそう言うと、理事長室の扉が乱暴に開かれる。
「うーす、きやしたよ」
「静に入ってこんか。塚原先生」
バンダナをして、ワイシャツはだらだら。
目は鋭く、下駄をはいている。
腰には、業物だろうと思う刀を下げている。
つまり、教師とかけ離れた男がいた。
「おう、お前が噂のやつか」
「はっ、はい」
「そうか、それじゃ、俺についてこい」
ゲラゲラと笑いながら、勝手に歩き出してしまう。
「えぇー!待ってくださいよ」
慌てて追いかける。
やれやれ、これがこの世界の人達なのか。