表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国転生物語  作者: 高野康木
戦国武将編
3/27

二話 ここでの暮らし

転生世界ーー。

どうやら、ここに住んでいる人達は、そう呼ぶらしい。

知らなかったよ、転生者とかなんだよ。

だって、俺は戦国島としか知らなかったんだよ。

だから普通なんだね。

ほら、今すれ違った人は、刀を腰にさげてる。

ほら、あそこで買い物してるご婦人なんて、拳銃さげてる。

なんか、場違いなんすけどーー。


「あのー、どうかしましたか?」


よほど、顔に驚きが出ていたのだろう。

信長ちゃんが、心配そうに覗き込んできた。

そう、信長ちゃんがーー。


「あのさ、もしかして信長ちゃんはーー」

「そう、らしいです」


苦笑いしつつ、うつむく信長ちゃん。

そうなのか、あの織田信長の転生者なのかーー。

織田信長と言えば、冷酷冷血とゆう感じの戦国大名である。

しかし、その反面手柄を立てた人物には、かなりの報酬などをあげたり。

かなりの幸運の持ち主だったりするのだ。

しかし、一番有名なのが、家臣であった明智光秀に裏切られ、天下統一を出来ず、志し半ばで死んだことだ。

とても、今横で歩いている信長ちゃんが、その人とは思えない。


「ところがどっこい、本当なんすよ」


俺の心の中を当てたように、目の前の市くんが振り向きながら言った。


「姉ちゃんは、まだ覚醒してないから自信ないと思うけど、まじで織田信長の転生者だって」

「覚醒?」


俺がそう言うと、市くんは、待ってましたとばかりに、得意そうな顔をする。


「そうなんすよ。いくら転生者だとしても、みんながみんな初めから、過去の記憶を持っている訳じゃないんすよ」


なるほど、それで覚醒すると、過去の記憶を思いだす訳か。


「さてと、本当にこっちなんだな姉ちゃん」

「うん。そうだよ」

「ふーん。しかし、住民区なのか」

「住民区?」


俺が、疑問を口にすると、信長ちゃんがーー。


「あのですね。この転生世界は、主に四つのエリアに分かれているんです」

「エリア?」

「はい。東西南北で、東が住民区、普通の人達はここに住んでいます。」

「そこに、祖母の家があるんだね?」

「はい、そうです」


まぁ、そこまで裕福だった記憶ないから、そうなんだろう。


「それで、ここは南エリアの商店区で、主に買い物などをするとこですね」

「だから、こんな賑やかなんだね」

「はい、いい人達ばかりなんですよ。おまけしてくれたり」

「おまけは、姉ちゃんだけだよ」


さりげなく、市くんが訂正する。

まぁ、こんな可愛い子がいたらおまけしたくなるよな。


「もぉー、市!」

「はいはい、口を閉じますよ」


ぷぅくーと、頬を膨らます信長ちゃん。


「西エリアには、何があるの?」

「えーと、西エリアは、学園区ですよ。ありとあらゆる教育をしてくれるエリアです」

「なるほど、高校とかある感じかな?」

「はい、そうですね。私はそこの高等部の一年で、市は中等部の二年なんです」


そうなんだ。

信長ちゃんとは同級生だな。

入学するならだけどーー。


「それで、北エリアは?」

「北は、貴族エリアです。将軍家とか朝廷とかの家があったりします」

「将軍とか居るの!?」

「はい、確か今の将軍はーー。えーと」


思い出そうと頑張っている信長ちゃんだが、

どうやら、思い出せないらしい。


「足利義光だよ」

「そう、その人!」


足利義光か、確か戦国時代の将軍で、刀使いがかなりの腕前だとか。

でも、殺されたんだよなー。


「おっ、ついたついた」


気がつくと、東京タワーに似た建物の前にきていた。


「何これ?」

「これはですね、中央タワーですよ。私達は、山城タワーと言いますけど」

「ここから、各エリアに行く電車が出てるんすよ」


じゃ、三人分チケット買ってくるすよ。と市くんが言ったので、金を出そうとするがーー。


「いらねーすよ。これが洋服代と思ってください」


と言われてしまった。

市くんが、混雑しているチケット売り場に行くと同時に、信長ちゃんがーー。


「あの、本当にごめんなさい。私がつまずかなければあんなことにはーー」


どうやら、味噌のことを言っているらしい。


「大丈夫だよ、だから気にしないで」

「でも、あの時避けようと思えば、避けられましたよね?」


あら、ばれてた。

確かに、あの時避けようと思えばよけられた。

こう見えて俺は、剣道を十年くらいしている。

まぁ、姉に無理やりやらされたんだが。

だからあの時、信長ちゃんが俺に触れた瞬間、俺の家に代々伝わる技を使えば、自分を回転扉のようにして、避けることができた。

けど、それをしたら信長ちゃんは、転んで、味噌まみれになってしまうだろう。

そしたら、恥ずかしすぎて、死にたくなってしまう。

俺だったら、少なくともそうなる。

だから、俺は避けなかった。

服なんて、洗えばいいだけだ。


「まぁ、確かに避けられたね」

「それって、私を助けてくれたんですよね?」

「うん。そうなるかな」


信長ちゃんが恥をかかなくて、よかったんだからな。

しかし、信長ちゃんは頬を、ほんのり赤く染めて、うつむいた。


「どうしたの、風邪気味?」

「いえ、大丈夫です」

「お待たせー」


どうやら市くんが、チケットを持ちながら、走ってきた。


「おや、随分早いね市くん」


かなりの混雑だったのだがーー。


「市!ナンパしちゃ駄目だよ」

「ちょっ、ちげーよ姉ちゃん!」


ナンパだと?まぁ、年頃でしかもこんなにかっこいいんだから、仕方ないのかな。


「まぁまぁ、信長ちゃん。市くんも遊びたかっただけかもしれないじゃん」

「そうだぜ、姉ちゃん」

「嘘だよ武尊くん。だって市には彼女が居るもん」


な、なんだと?


「かっちゃんのこと?確かに好きだぜ」

「なら、ナンパなんてしないの!」

「いやいや、ナンパじゃないぜ。ただ、本当に可愛い子だったから、お喋りしてたら、譲ってくれたんだ」

「市くん、謝ってきな」


思ったより、冷ややかな声が出てしまった。

でも、仕方ないことだ。

モテない人間の苦労を知らんのだから。


「うわ、ひっでー。そんな怖い声出さなくてもいいじゃないすか、武尊先輩」

「ううん。それくらいが、普通の反応だよ」

「いや、武尊先輩、勘違いしないでください。俺あの子達のことも、好きっすから」

「死ねばいいのに」


おっと、つい口が滑ってしまった。

けれど、何故か市くんは、ニヤニヤとしてーー。


「でも、武尊先輩と俺って、似てるんすよ。

「いや、一緒にしないでくれる」

「そうだよ、市と同じ人なんて、そうそういないよ」

「いやいや、確かに外側のでかたは違うけど、中身は一緒っすよ」


いや、認めたくない。


「てか、なんか姉ちゃん、武尊先輩のことをかばうよな」

「な、別にかばってないよ!」


腕をグルグル回しながら、反論する信長ちゃん。

また、顔が赤い。本当に大丈夫なのか?


「うお!?まさか、姉ちゃん!!」


市くんは、信長ちゃんの反応を見て、なにか感じたらしい。

ニヤニヤと、いやらしい顔をしている。


「なるほど、なるほど。そうゆうことか~、あの姉ちゃんがな~」

「なによ市!!」

「何でもねーよ。俺は応援するぜ、なんたって姉ちゃんが初めて感じた気持ちだからな」

「うっ、うるさーい!早く行くわよ!!」


ぷんぷんとした顔で、信長ちゃんが電車に乗ってしまった。


「えーと、普通の電車と同じでいいんだよね?」


二人の会話がわからなかったので、無視して市くんに言うとーー。


「武尊先輩」

「うん?なんだい」

「姉ちゃん可愛いですよね?」

「は?」


なんだ、いきなりこの子は何を言ってんだ?


「可愛いっすよね?」

「う、うん。そうだね、可愛いと思うよ」


お世辞ではなく、本当にそう思う。

ピンク色の髪の毛は、サラサラとしていて、長くも短くもないちょうどいい長さだ。

それに、目もパッチリとしていて、アイドルですと言えば、そう思ってしまうほどだ。


「で、なんでいきなりそんなことを?」

「いや、そうですよね。可愛いんすよ家の姉ちゃんは」


なんか、訳わからなくなってきた。


「それに、心もそんな強くないっすから。武尊先輩みたいに、優しい人があってるんすよね」


チラチラと、俺の言葉を待っているように市くんが、視線を送ってくる。


「何言ってんだか。俺なんかより、もっといい人なんて沢山いるだろ」


そのまんま、思ったことを言葉にするとーー。


「ぐわっ、攻略難ゲーすわ。姉ちゃん頑張れ!」

「うん?」


最後の方が聞き取れなかったが、まぁ、いいか。

どうやら、電車は普通らしい。

と言っても、モノレールなので、少しワクワクしたが。



ーーー



私は、どうしてしまったんだろう。

椅子に座りながら、自分の心臓の速さに、少し驚いています。

何故かわからないのですが、彼をーー武尊くんを見ることが、あまりできません。

おかしい、実におかしいことです。

私と市は、織田家に生まれたこともあって、礼儀作法には、自信があります。

まず、人の目を見て話すのは、常識です。

ですから、彼の目を見て話さないといけないのですがーー。


「ねぇ、信長ちゃん」

「ひぁ!」

「あっ、ごめん。いきなり話しかけて、たいしたことじゃない質問なのに」

「いえいえ!私こそ、考え事していたのでつい。市にきいてみてください」


あぁ、また、視線を外して話してしまった。

礼儀正しくないと、思われてしまいました。

しかし、市もひどい物です。

私が、こんなに困っているのに、先からニヤニヤして、助けてくれないなんて。

でも、市には、私の気持ちがわかっているんでしょう。

仕方ないじゃないですか。

あんな気持ちになったのはーー。

生まれて、初めてだったのですから。

私は、一族から嫌われています。

何故なのかは、すぐにわかりました。

私が、覚醒どころか、半覚醒すらしない落ちこぼれだからです。

だから、貴族であるお母様とお父様も、市には、甘くするのでしょう。

市は、そんな私に優しくしてくれます。

でも、他人からは、優しくなどされない。

学校でも、貴族区でも、私には冷たい視線だけでした。

けれど、彼はーー武尊くんは、そんな私に暖かい目をしてくれた。

確実に私がいけないのに、武尊くんは、私を助けてくれた。

あんな人混みの中で、味噌まみれになってしまったら、一族から説教されるところでした。

それに、先ほども一つしか空いてない席に、私を座らせてくれましたし。

でも、そんな武尊くんとも、もうすぐお別れなのです。

もう、住宅区に入ってしまいました。

できることなら、もう少しだけーー。



ーーー



楽しかったモノレールを降りて、住宅区に入った。

さすが、住宅区。

右も左も家だらけ。


「さてと、姉ちゃん。どっちに行くんだ?」

「右に曲がって、左に行ったところの、道場の看板があるところです」


何故か、信長ちゃんの声に覇気がない。

まるで、脱け殻のようだ。


「信長ちゃん、どうしたの?」

「いえ、なんでもないです」


大きなため息をしたあと、歩き出した信長ちゃん。

やばい、ものすごく可哀想。

そんなことを思っていると、目的のところについた。

駅から、徒歩一分、素晴らしい。


「ここが、そうなのか」


看板には、木下と書いてある。

祖母とは、誕生日とかに会っただけなので、家までは知らなかったのだがーー。


「広いっすね。貴族区でもいける広さっす」


市くんが、言ったとうり、デカいのだ。

扉を開けると、道場と母屋に別れている。


「おーい。ばあちゃん!!」


返事がない。


「えーと、木下おばあちゃんは、今いないけどーー」


信長ちゃんが、まさかの爆弾発言。


「えぇーー!!」

「確か、身内に何かあったから、上に行くって言ってましたよ」


まさかの、入れ違い!?


「ありゃー。大変なことになったすね」


市くんが、ニヤニヤして言う。


「市、何考えてんの?」

「さすが、姉ちゃん。実は、ここに誰もいないなら、俺ここに泊まろうかと思ってね」

「えぇ!ここにかい?」


まじかよ。いや、確かに一人だと広すぎるけどーー。


「それに、右も左もわからい武尊先輩も、可哀想だし。なぁ、姉ちゃん」

「えっ!?」


信長ちゃんが、驚いた声を出したがーー。


「そ、そうだね。武尊くんさえ良ければだけどーー」

「いや、俺はいいけどーー。二人の両親は、大丈夫なの?」

「あっ、それは、心配いりませんよ」


なんか、市くんにはめられたようなーー。


「どうせなら、武尊先輩も戦国学園に通ったらどうっすか?ここでの生活とか、わかりますよ」

「でも、そんな金持ってないよ?」

「それなら、私に任せて!どうにかして入れるようにしとくよ」


信長ちゃんが、急に元気になった。

まぁ、元気ならいいんだけどね。


「それじゃ、俺ら姉弟世話になります」

「お世話になります」

「いえいえ、こちらこそ」


こうして、俺と織田姉弟の生活が始まった。

だけど、この時の俺は、まだ知らなかった。

この世界が、俺の知ってる世界とは、あまりにも、かけ離れた世界だとーー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ