二十話 豊臣秀吉の襲来!
木下武尊が、私を見ているーー。
この男の目は、いつも輝いているな。
そうだーー。
私は、こいつのようになりたかったのだろう。
「信玄の、粘り勝ちだね」
にこやかに言う武尊。
まるで、警戒していない。
「私を、警戒しないのか?」
「する必要がないからね」
する必要がない?
こいつの頭は、どうなっている。
「謙信さんは、優しい人だからね。俺を殺すことはできないよ」
「何を根拠に言っている?」
「信玄が、生きてるからね」
「殺そうとした」
「いや、殺そうとしてないね。自分で気づかなかったの?」
なんだと?
私が、殺そうとしていないなどーー。
「一つ目は、信玄の腹を刺したこと」
「それが、どうした?」
「本当に殺すなら、心臓や脳を刺せばよかったよね?」
そう言われれば、そうなるな。
だからといって、私が殺す気がないなど。
「それに、今立っているのが証拠だよ」
「どういうことだ?」
「全力を、出さなかったんだよね?」
そうか。
私は、加減していたのか。
どうりで、防御に力をまわせたはずだ。
「完全な敗北だなー。まさか、他人に気づかされるとわー」
「それなら、信玄を頼んでいいよね?」
「あぁ、任せろ。起きるまで、近くにいるさ」
そう言うと、武尊が微笑んだ。
すると、武尊の足が光の粒子になっていく。
どうやら、時間切れのようだな。
「うおー!!まだ、きいてないことあるんだぞ!」
「なにをききたい?」
「どうして、俺らを裏切ったの?」
そのことか。
それなら、あれを渡すか。
私の役目は、終わったからな。
「武尊、これをもっていけ」
ポッケからだした紙を、武尊に渡す。
「いいのかい?」
「私の役目は終わったからな。それには、豊臣秀吉の計画の全てが書かれている」
武尊の胸まで、粒子になる。
そろそろ、お別れだな。
「そうだ!謙信さんに言わなきゃいけないことがあるんだ!!」
「私にか?」
「うん!」
顔をしかめて、言葉を考えている武尊。
そろそろ、首まで粒子になるぞ?
「時間無さすぎだろ!えーと、あーと、どう言えばいいかわかんないんだけどーー」
「なんだ。早く言わないと、消えるぞ?」
そう言うと、なぜか照れ笑いしながらーー。
「俺は、今の謙信さんが好きだよーー」
その言葉と共に、消えた。
思考が止まる。
頬が、どんどん熱くなる。
「な、なんだこれは!?」
心臓が痛い。
心臓が早鐘をうつ。
武尊の微笑みが、頭から消えない。
「まっ、まさか!これが恋なのか!?」
わからない!
前世でも、今世でも抱いたことのない気持ち。
これは、なんなのだ!?
刀を落としてしまい、自分の頭をかかえる。
すると、信玄の顔が目にはいった。
だらしなく口を開けて、よだれを垂らしている。
「こいつは、女でも男でも変わらんな」
仕方なく、隣に座る。
どうやら、私もあいつに惚れてしまったようだ。
「今の私が、好きかーー」
真田や織田が、惚れているのもわかる。
不思議な奴だ。
あの男と、血が繋がっているのに、優しさに溢れている。
その時、二羽の鳥が飛んだ。
ーーー
気づいたら、幸村ちゃんが目の前にいた。
「お帰り」
「ただいま」
どうやら、無事に戻ってこれたらしい。
信玄は、もう大丈夫だろう。
さて、謙信さんに貰った物をみないとな。
「何よ、その紙?」
「豊臣秀吉の、計画が書いてあるらしい」
「なんじゃと!?上杉謙信から、うばってきたのか?」
「使えないじじいは、黙ってなさいよ」
「木下さん。読んでみてはいかがでしょうか?」
帝理事長に、読むようにうながされたので、開いてみる。
しかし、何も書かれていない。
真っ白。
「ちょっと!?何も書かれていないじゃない!!」
「おかしいな?謙信さんが、偽物を渡すとは思えないしーー」
「開いちゃたー!!」
いきなり、知らない人物の声がした。
「なっ!?どこにいるの!」
幸村ちゃんが、抜刀して辺りを見回す。
俺もみてみるが、理事長と校長、俺と幸村ちゃんしかいない。
「君達は、頭が悪いねー。ここだよ、ここ」
「ムカつくわね!この部屋ごと吹き飛ばすわ!」
「やめか真田!理事長室を壊すなど!!」
みんなで探すが、人の気配すらしない。
しかし、理事長だけが、窓の方を見ている。
「そこですね!現れなさい!!」
どこからだしたのか、薙刀を窓の方にふる。
バキャン!
ガラスの破片のように、空間が飛び散る。
「さすが、七神。まさか、こんなに早くばれるとはねー」
頭にターバンのような物を巻いている女子生徒が、にこやかに笑って立っていた。
「治安部隊の人間ね!」
「ご名答!そして、君達に会ってもらう人がいるんだよね」
指を鳴らすと、俺らの足元に、漆黒の闇が現れた。
「うわ!」
一瞬で、回りに何もない空間に移動していた。
幸村ちゃんも、何が起きたのかわからない顔をしている。
「さて、それではご対面していただこうかな?」
理事長と校長がいない。
すごく、嫌な予感がする。
そう思ったのは、幸村ちゃんも同じらしい。
「武尊!あんたは、右から行きなさい!」
両刀を抜き、幸村ちゃんが左から斬りかかる。
俺は、抜刀で、右から斬りかかる。
「フフっ。ゆっくり、楽しんできなよ」
剣を降ると同時に、目の前に信長ちゃんが現れた。
「なっ!?」
「えっ!?」
刀と、抜けない剣がぶつかる。
ガン!
俺が目を丸くしていると、信長ちゃんは驚いた顔で止まっている。
どうなってんだ?
しかも、辺りにはビルがたくさんある。
ここは、タッグマッチの時のステージ!
「どうして武尊君が!?」
「俺がききたいよ!」
「私は、ターバンの女の子を斬ろうとしてーー」
「ええ!?俺もそうだよ!」
こんがらがってきた。
とりあえず、剣をしまう。
信長ちゃんも、刀を鞘に戻した。
「よかった!武尊君、無事だったんですね!?」
「信長ちゃんこそ!傷がないようでよかったよ!!」
そんな事を言って、安心していたらーー。
とてつもない殺気が、ビルの上からくる。
俺と信長ちゃんが、同時に構える。
「始めてだな。親族を見るのわーー」
髪の毛をオールバックにしていて、たくましい体格の男が、仁王門立ちしている。
隣には、黒い服をきた女子がいる。
まさか、あの男がーー?
「はじめまして、木下武尊。俺様が、豊臣秀吉だ」
嫌な笑顔で、そう答えたーー。
上杉謙信プロフィール
髪の色 黒のロング
性格 正義が命
武器 どれでも使えるが、刀が一番
技 圧倒的な能力圧
武田信玄プロフィール
髪の色 金髪だが、能力を使うと赤に変色
性格 単純
武器 己の身体
技 金剛同化




