一話 不幸すぎる
辺りが光りに包まれた瞬間、身体が下降する感じにおそわれた。
「うわっ!」
あまりの速さに、少し恐怖するが、光りのおかげで、それほど怖くわなかった。
もし、これが真っ暗だったら・・・・・・。
いや、想像するだけで恐ろしい。
かなりの深さまで行くらしい。
止まる気配が、まるでないのがその証拠だ。
「あれ、もしかして、俺海の中に沈んでんのか?」
よくよく考えてみると、船の上から下降してんるんだから、俺は海の中を通ってることになるのだ。
すると、急に下降が止まった。
「うわっとと!」
急に足が、地面についたので、少しよろけてしまった。
光りが、少しずつ消えていく。
「えっ!?」
変な声が出でしまった。
しかし、仕方ないだろう。
何故なら、足下にはタイルでできた道があるが、裏道などは、土の道だ。
さらに、見える限りの家々はみな、江戸時代のような作りになっていた。
時代劇を見ている感じだが、あることに気づいた。
「和服の人があまりいないな。てか、洋服を着ている人の方が多いぞ」
もしも、和服を着ている人しかいなかったら、タイムスリップしたと思っただろう。
しかし、洋服を着ている人もいるし、制服を着ている学生も、ちらほらと見えるので、タイムスリップではないとわかる。
「なら、ここはどこなのだ?」
一人で考えていると、船のじいさんの言葉が思い浮かぶーー。
お前が、暮らしていた世界とは別物じゃわい。
「そうか!ここは戦国島なのか」
やっと、場所がわかったところで、俺は歩き出した。
場所がわかったなら、今度は目的地を探すのだ。
「えーと、確かこの辺にーー」
バックの中で、祖母の家までの道のりの地図を探す。
探している最中、ここは市場のようなので、商人と客の声がものすごい聞こえる。
「うわーん。待ってよー市!」
だからだろう。
女子生徒が、俺の方に近づいてくるのに、気がつかなかったのはーー。
「きぁ!」
「うわ!」
地面につまずいたらしい女子生徒が、俺にぶつかってきたのだ。
ドンッ!
あっ、意外に痛かった。
「あっ!ごめんなさい!!」
「いえいえ、こっちらの方こそよそ見していたものですから」
頭から、俺の胸にあたってきた女子生徒が、ものすごい勢いで謝る。
こちらも、地図なんか見てたのが悪いんだから、そんなに謝れても困るんだがーー。
「あっ!!」
女子生徒が、驚いた顔で、俺の胸を見ている。
どうしたんだ?
そこで俺も、やっと気づいた。
なんと、彼女が持っていた何かが、俺の胸にめちゃくちゃかかっていたのだ。
「うわーん!ごめんなさい!!」
「あっ、いや大丈夫ですよ」
苦笑いしつつ、女子生徒が持っている物を見る。
どうやら、買い物帰りだったようだ。かなりの食べ物を両手に持っている。
その中の味噌が、俺の胸についたらしい。
しかし、服なら洗えばなんとかなるさ。
それよりも、この子に地図を見せて教えてもらった方が得ーー。
そこで、俺はやっと気づいた。
俺の手の中にある地図が、味噌だらけで見えなくなっていたことをーー。
「あぁー!!」
「ひゃ!?」
女子生徒が、いきなり大声をあげた俺に、驚きの声をあげた。
しかし、そんな事を気にしている余裕などない。
味噌を落とそうとしたが、どうやら読めるものではなくなってしまったらしい。
もともとが、家の倉庫にあった古い地図だ。寿命がきたのだろう。
しかし、味噌で留めをさされるとはなーー。
ついてないなー。
「あのー、本当にごめんなさい」
今にも泣き出しそうな顔で、女子生徒が、ショックで石化した俺に、謝ってきた。
「だ、大丈夫だよ」
実際、背中に冷たい汗が流れた。
「あぁー!姉ちゃん何してんだよ」
すると、俺の後ろから男の子の声がした。
「うわーん、市!!」
「あぁーあ、姉ちゃんのドジが炸裂したのかよ」
どうやら、男の子は、この女子生徒と姉弟らしい。
「すいません。家の姉はドジッ子なんすよ」
申し訳ない、と言った感じに謝る男の子。
「えーと、服は弁償しますんで」
「いや、服は大丈夫なんだよね」
さりげなく、地図に視線を落とすとーー。
「あれ、もしかして上の人すか?」
「上?」
何の話だ?
「やっぱり、上の人すね。あぁ、上って言うのは、あなたが住んでいた所の事を言うんすよ」
そう言いながら、ホットしたように笑顔を浮かべる男の子。
どうやら、こちらに住んでいる人達は、俺のように外からきた人間のことを、上からきた人と言うらしい。
実際、船からここに来るのに、下降してる感じがあったので、あっているといえば、あっている。
「うん、実はそうなんだよね。だからここのこと全然わからないんだよね」
素直に、そう言うとーー。
「なるほど。その手に持っている味噌まみれの物は、地図か何かすね?」
おぉ、この子鋭い。
「そうなんだよ」
「やっぱり」
納得したように、首を縦に振る男の子。
「どこに行こうとしてたんすか?」
「木下って言うおばあちゃんの家なんだけど」
「木下って、木下おばあちゃんの家かな?」
どうやら、女子生徒の方は、祖母の家を知っているらしい。
「たぶん、その人だ」
「なんだ、姉ちゃん知ってたのか」
そう言うと、何か閃いた顔をする男の子。
「それじゃ、そこに案内しますよ」
「えぇ!いいのかい?」
もちろんすよ。と言いながら、胸を叩く男の子。
「じゃ、まずは自己紹介すね。俺の名前は、織田市方す」
市くんと言うらしい。
「そんで、こっちが」
「あっ、織田信長です」
「どうも、木下武尊です」
うん、変わった名前だな。
「変わった名前ですけど、仕方がないんです」
どうやら、彼女ーー。信長ちゃんも自分で気づいているらしい。
「まぁ、この世界じゃ珍しくないんすよ」
「えっ、そうなの?」
「そりゃ、そうすよ。だってここ、転生世界は、昔の人達が転生するところすから」
・・・・・・。
はい?
「えっ、ごめん。どうゆうこと?」
「いや、だから」
そこで、市くんは言葉を区切り。
ありえないことを、言うのだった。
「ここは、過去の記憶を持った人達の世界なんすよ」
嘘だーー!!
俺の頭は、真っ白になってしまった。