表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦国転生物語  作者: 高野康木
激突!治安部隊編
18/27

十七話 長政と市方

「市ーー。あなたは、転生しても変わらないわねーー」


寂しそに、言うのは浅井長政。

俺は、動けないでいる。

頭ではわかっている。

けれど、身体が動いてくれない。


「美しく、散ってしまいそうな儚さがある人ーー。それが、あなたよね?」

「なっ、なんの話だよ」


やっとでた言葉がこれかよ。

我ながら、情けないことだ。


「あなたに会ったら、きこうと思っていたことがあるの」


そう言うと、長政は太股から拳銃を取り出して、俺にむけてくる。


「どうして、柴田勝家なのかしら?」


言いたいことは、だいたいわかった。

俺があんたと死なずに、かっちゃんと死んだことだろうーー。


「決まってんだろ。愛してたからだよ」

「なら、私のことは愛してないのねーー」


残念そうな顔の中に、喜びの顔がある。

気味悪い。


「シフトチェンジ」


扇子を、鉄扇にかえる。

姉ちゃんの話が本当なら、傷をおったら負けだ。


「その顔からして、私の能力は知っているみたいね」

「嫉妬深いあんたには、お似合いの能力だよな」


次の瞬間、長政が動いた。

拳銃から、弾丸が飛んでくる。

その数は、八発ーー。

扇子を盾にして、全ての弾丸を防ぐ。


「いきなり、全弾打ってくるとはな!数があれば、当たると思ったのかよ!!」

「あら、防ぐと思って打ったのよ?」


装填する音と共に、弾丸があたりまくる。

どうにかして、反撃に出ねーと。

防ぐばかりじゃ、話になんねー。

ふいに、背中から気配がした。


「考え込むと、回りの音が聞こえなくなるーー。あなたの弱点ね」


いつの間にか、銃弾の音がしなくなっていた。

まさか、背後に回り込んでいたなんて!


「ちっ!」


舌打ちをしつつ、扇子を振ろうとしたがーー。

致命的なことに、扇子が大きすぎて素早く動かせない。

それに、長政との距離はかなり近い。

とっさに扇子を捨てて、後方に飛び退く。

だが、長政はわかっていたように、俺の着地点に弾丸を飛ばす。


「ぐわ!」


右足をかすめただけだが、非常にまずい!


「この瞬間を待っていたわ。愛した人を苦しめる瞬間を!!」


俺の人形を握る長政。

その顔は、興奮で赤くなっている。


「ざけんな!この変態野郎!!」

「あら、ずいぶんと元気なのね?そんなに元気なら、片腕くらい折れてもいいわよね?」


笑顔のまま、俺に似た人形の左手を折り曲げる。

ボキャ!

嫌な音が、左手から聞こえた。


「てぇーな!」


やせ我慢して、立ち上がる。

この女に、恐怖を見せてはいけない。

直感で、そう感じた。


「あら、やせ我慢かしら?らしくないわね」

「うるせー。こんな痛み、屁でもねーぜ!!」


冷や汗が出てくる。

くそっ!どうすればーー。


「市、私は悲鳴が聞きたいの。あなたのね」


人形以外に、もうひとつ何が現れた。

ハートの形をした物体。

ご丁寧に、心臓と書いてある。


「これ、なんだかわかる?」

「わかりたくなかったぜ」


長政が、笑みを浮かべながら、ハートの物体を握りしめる。

とたんに、心臓が苦しくなる。


「がぁぁ!!」


たまらずに、大声をあげる。

まるで、心臓を握られているみたいだ!!


「アハハ!最高だわ!!その表情よ市!!」

「てめー、ざけんな!!」

「あら?喋る元気があるのね。なら、もっと痛くしないと!!」


心臓が、潰れそうに悲鳴をあげる。

鼓動が早くなり、口から吐血する。


「ぐはっ!げほげほ!!」

「簡単には殺さないわよ。あなたには、苦しみながら死んでもらうわ」


この状況から打開するには、あの方法しかない。

まさか、俺があの力を使うなんてな。

一番、使いたくなかったのに。


「だってよ。俺は、これで勝ったことねーんだよ」

「なんの話かしら?」


右手を懐に入れて、目的の物を掴む。


「姉ちゃん。俺も乗り越えてみるぜ!」


一瞬、姉ちゃんの笑顔が浮かんだ。

小さい頃、俺を励ましてくれた笑顔。

その映像の姉ちゃんが、頑張れと、言っている。

頑張るさ!俺も、姉ちゃんみいになる!!


「織田流奥義、雫落ち!!」


懐から取り出した、変形型の刀。

長政が、驚いた顔をする。

ざまーみやがれ!

自分の人形を跳ね上げる。


「そう。あなた、剣術も使えるのねーー」

「奥の手さ。本当は使ってなかったから、さびついてると思ったんだけどーー、意外と覚えてるもんだな」


口から、血を吐き捨てて言う。

俺の推測が当たっているなら、おそらくーー。


「これで、お前の能力は使えない。違うか?」

「っ!?」


やっぱりな。

こいつの能力は、人形を持っている時だけ使える。


「確かに、私の能力は使えないわ。でも、もう一度当てればいいだけよ!」


長政が、拳銃を取り出す。

俺は、織田流の基本である八相の構えをとる。

姉ちゃんは、覚醒していなかったからできないが、俺にはできる。

そう、銃弾をそらすこと。


「まさかと思うけど、銃弾をそらそうとしてる?」 

「だったらなんだよ」

「不可能よ。弾丸は、亜音速あおんそくの物体。人間には止められないわ」


嫌な笑みを浮かべながら、長政が言う。

これで確信したぜ。

あいつに勝てる。

織田家は、もともと拳銃に詳しい家柄だ。

だからこそ、長篠の戦いで、武田軍を倒せたのだ。


「さよなら。市」


バスン!

弾丸が、飛んでくる。

覚醒者なら、弾丸を見ることだってできる。

弾丸を、刀の峰で受け流す。


「織田流奥義、軌道ずらし!」


弾丸が、俺の右後ろに着弾する。

長政が、驚いた顔をする。

ここだ!

払い上げで、長政の拳銃を切る。


「っ!!」

「終わりだ」


刀を、長政の喉にむけて言う。

すると、長政はフラフラしながら、後退り始めた。


「頭でもいかれたのか?」

「フフっ」


笑ってる?

この状況でかよーー。


「市。あなたは甘いわねーー」

「武尊先輩よりは、甘くないつもりだぜ?」

「いいえ、甘いわよ市。拳銃を壊すなら、きちんと壊さないとーー」


拳銃をむけながら、長政が言う。


「無駄だってんだよ!まだ、わからねーのかよ!」


八相の構えをとる。

しかし、長政は予想外の行動をした。

拳銃を、自分のこめかみにあてたのだ。


「なっ!?」


バスン!

止める間もなく、引き金をひいた。

呆気なく、自殺しやがった。

折り畳み式の刀をしまい、長政の足を蹴る。

反応がない。


「本当に死んだのかよ。前世と同じじゃねーか」


扇子を拾い、もう一度長政を見る。

なんだーー、違和感がある。

美しい顔で死んでるはずなのだが、何故か心に引っかかる物がある。


「まぁ、勘違いだろ」


左手に、回復術をかける。

しばらくかけてから、左手を動かす。

治ってるな。


「さてと、そろそろこの場から離れなーー」


背中に、視線を感じる。

先ほどまで感じていたものだ。


「うそーー、だろーー」


後ろを見ると、死んでいたはずの長政が、立っていた。


「市。奥の手というのは、こういうことよ」


口から出ていた血をふきながら、言う長政。

確実に、死んでいたはずなのにーー。


「私の弾丸は、呪弾なのよ。敵に攻撃するだけじゃなくて、こういうこともできるのよ!」


いきなり、向かってきた。

だけど、今度は警戒することはない。

あいつの力は、呪いにあるんだ。


烈風波れっぷうは!!」


突風をおこして、風の刃を飛ばす。

ここで、あることが起きた。

長政が止まらないのだ。

それに、避けようともしない。

長政の服や、体に傷が増えていく。


「おいおい!死ぬつもりーー」


ブシュ!

いきなり、体から血が吹き出す。

なんで!?


「考え事をするなんて、余裕なのね!」


長政の拳が、腹に入る。


「がっ!」


肺から、空気が押し出される。

隙を与えないつもりか、背中に衝撃がくる。

情けないことに、地面に叩きつけられてしまった。


「どうしたの市?踏み潰すわよ」


その言葉と同時に跳ね起きて、鉄扇で長政の右手を切る。

すると、なぜか俺の右手も切れている。

どうなってんだよ!!


「考え事をするなんて、余裕なのね!」


長政に首を捕まれて、壁におしつけられる。


「あなたが、不思議に思っていることを教えてあげましょうか?」

「なん、だとーー」

「私の能力は呪い。呪弾を自らに受ければ、私を傷つけた相手にも、同じ傷をつけることができるのよ」


どうりで、俺も傷つく訳だ。


「市、愛しているわ。殺したいほどにね!!」


壁ごとぶっ飛ばされる。

地面に何回かバウンドして、大の字で倒れる。

空が、広く青い。

そういえば、あの時もそうだったな。


「諦めるの?市」


満面の笑みを浮かべて、長政が見下ろしてくる。

ははっ、何がおかしいんだか。


「黒のパンツが丸見えだぜ。少しは、恥らったらどうだ?」

「見物料は、あなたの命でいいわよね?」


腹を踏まれて、蹴っ飛ばされる。

体が痛い。

もう、無理だな。


「市、何か言い残すことはある?」


無理矢理立たせて、そう言う長政。

言い残すこと?


「市!?」


その時、聞き慣れた声がした。

かっちゃんの声だ。


「あら、泥棒猫さんじゃない。運がいいわねー、今から殺すところよ」

「浅井長政!!」


かっちゃんが、槍を構えている。

だめだ。

もう二度と、あの人を殺させてはいけない。


「そういえば、こんな空だったよな」

「なんの話かしら?」

「俺が、あんたに輿入れした時だよ」


懐かしい。

あの時は、政略結婚だったから、嫌な気持ちだった。

でも、長政は優しかった。

だから、政略結婚でも幸せだった。

一緒に死ねるほどにーー。

けれど、この人は許してくれなかった。

俺に、生きてくれと言った。

子どもを守るためにとーー。


「ずいぶん、昔の話をするのね」

「感謝してるぜ。お陰で、かっちゃんに会えたんだからさ」


おそらく、これが最後になるだろう。

だから、最後は俺の嫌いな技で終わらせる。

俺のあだ名がついている技名ーー。


「長政。俺の役目はこれで終わるーー」

「役目?」

「あぁ、姉ちゃんには、武尊先輩とゆう人ができたからな」


血だらけの手を、広げる。

まるで、十字架にはりつけられているようにーー。

心残りは、かっちゃんともう少し、一緒にいたかったーー。


傾国けいこくかごの鳥!!」


その言葉と同時に、鉄扇がばらける。

長政の顔が、焦りだした。

まかさ、俺が死ぬ気になるとは、思っていなかったらしい。

俺から、離れようとするが、そんなことはさせない。

残された力で、長政に抱きつく。


「な、何するのよ!?」

「決まってんだろ?今度は、一緒に行こうぜ!」


ばらけた鉄扇が、俺らの回りを囲む。

これが、籠の鳥さ。


「浅井長政。お前は、俺が連れていく!」


14本の鋭い刃が、俺と長政を貫く。

口から吐血する。

長政も、驚いた顔のまま固まっている。

これで、良かったんだ。

あの時、こうしていれば、こいつが呪いなどという物にとりつかれなかったんだ。

視界が、暗くなってくるーー。

かっちゃんが、涙を流しながら、俺を受け止めてくれたーー。

あぁ、綺麗な空だ。

あの二人も、この空を見ているだろうか?

そうだーー。

俺は、少し休むだけだ。

かっちゃんが、何かを言っている。

けれど、その声が聞こえないーー。

次に目覚める時は、この世界が平和になっているだろう。

あの二人なら、治安部隊を倒してくれる。

武尊先輩ーー。

俺も、少しだけ力になれましたよね?

懐から、折り畳み式の刀が落ちる。

そろそろ、目を閉じるかなーー。

浅井長政プロフィール


髪の色 黒色


性格 苦しむ顔を見るのが好き


武器 ルガーP08


技 主に呪い系統



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ