十五話 本当の真実
「げほっ、げほっ」
どうやら、下流まで流されたみたいね。
隣をみると、バカが倒れてるわ。
ほんと、こいつは。
「覚醒してんだから、私のほうが頑丈よ」
スカートをしぼると、水が出てくる。
これは、服も乾かさないとね。
「へくちゅ!うー。寒いわね、もー」
武尊の頭を叩く。
反応がないわ。
気を失ってるのかしら?
それにしては、静かすぎるわね。
「ちょっと、起きなさいよ」
ゆすってみるが、反応しない。
とゆうか、息をしていないーー。
「嘘!!ちょっと、何死んでるのよ!?」
どうしょう!?
ええーと、とりあえず心臓マッサージね。
武尊を仰向けにして、胸の中心を30回くらい押す。
それで、この次がーー。
無意識に、顔が赤くなる。
人口呼吸ーー。
「わっ、わかってるわよ!わかってるけど!!」
私は、初めての物をこいつにあげるの?
いや、人口呼吸はノーカウントだとしても、いやーー!!
「せめて意識がある時がーー。ちっ、違うわよ!別にこいつからしてほしいとかじゃなくて、私からするのが恥ずかしいというかーー」
武尊の顔をみると、心なしか青くなってない?
やばい、時間がなくなる!!
「こっ、これは貸しよ!」
武尊の鼻をつまみ、顎を上に向かせる。
頭が爆発しそう!
空気を肺に入れて、武尊の口に注ぎ込む。
まさか、こんな形でファーストを奪われるなんてーー。
恥ずかしさのあまり、目から涙が出てきたじゃない!
「嘘でしょ!?一回で目を覚ましなさいよ!」
結局、五回したあと息をし出した。
思いっきり殴りたかったけど、今は我慢する。
これは、こいつが起きたあとボコ殴りね。
「さっさと、歩くわよ」
「うぅーー」
あれ、震えてる?
どうして震えてるのよ!
不思議に思い、額に手をおくとーー。
「あつ!身体は冷たいくせに」
仕方なく、無人の小屋に向かう。
ここは、ほとんど人がこないところ。
助かるには、こいつと協力しないといけない。
小屋の中には、だんをとるくらいの物しかない。
でも、それだけで十分ね。
武尊を横に寝かせて、そこら辺に置いてあった薪に火をつける。
「とっ、とりあえず服を乾かしたほうが、いいわよね」
武尊のYシャツとブレザーを脱がせて、乾かす。
ズボンも脱がさないといけないの?
でっ、でもそうしないとーー。
目をつぶりながら、武尊のズボンも脱がして乾かす。
どうして、私がこんなことを!!
殺意を武尊にむけると、武尊が震えていた。
どうやら、まだ寒いらしい。
「はぁー。ほんと、手間のかかる男ね」
私も身体が冷えている。
それに、悪夢をみているのだろう。
武尊が、苦しそうにしている。
「川には落とされるし、唇は奪われるし。本当についてないわね」
私は、ブレザーとYシャツ、そしてスカートを脱ぐ。
干してあった布団を手に取りーー。
「ここまでしてあげるんだから、きちんと復活しなさいよね」
武尊の上に覆い被さり、布団を上にかける。
なるべく、体温が逃げないように密着する。
「まだ、妖刀の借りも返せてないんだから」
できることなら、こいつの悪夢もなくなればいい。
そう思いながら、目を閉じた。
ーーー
ここは、どこだ?
俺はーー。
私は、やっとの思いで手に入れた。
この勾玉が、私の未来を決めてくれるのでしょう。
「お濃!どこにおる!」
また、あの人がきた。
あの足音は、どうにか出来ないのでしょうか?
他の妻達や、家臣にも迷惑でしょう。
「なんです?あなた」
障子をあけ、私が声をかけるとーー。
「また、ここにおったのか!」
嬉しそうな顔をして、こちらに向かってくる。
第六天魔王と言われているのが、嘘みたい。
あの人は、あんなにも表情がゆたかなのに。
「今回は何ようです?」
「聞いて驚けお濃!」
何を言おうとしているか、すぐにわかってしまうわ。
どうせ、合戦のことでしょう。
「武田家を、撃退したぞ!」
「はい、当たりました」
「何が、当たったのだ?」
「合戦のことばかりね。あなたは、予想しやすい人」
ため息が、自然と漏れてしまう。
すると、夫はムッとした顔をしてーー。
「なんだ。バカにしておるのか!?」
「違います。それより、どのようにして勝ったのです?」
「うむ。よくぞきいた!」
嬉しそうな顔で、合戦の事を話始める。
三段打ちや、徳川家康に助けられたなど、実に楽しそうに言う。
この人は、昔から変わらない。
いや、一度だけ変わってしまった事があった。
実の弟を殺した時ーー。
私は、この人が壊れてしまうのではないかと恐れた。
その予想は半分くらいあたり、この人は第六天魔王と言われるくらい、非道になってしまった。
その彼が、私が好きだった頃の彼に戻りつつある。
だからこそ、子供を産めぬ私は捨てるべきです。
「それでな、武田軍は総崩れとなりーー」
「あなた」
「なんだ?」
「私と別れるつもりは、ありませんか?」
そう言うと、彼は激しく怒った顔をする。
「またその話か!!」
「私は、本気で思っています!」
「このうつけが!もうよい!!」
彼は乱暴に立ち上がり、奥に引っ込んでしまった。
まさか、これがこの人と最後の喧嘩になるなんてーー。
その頃は、思いもしなかった。
「キャーー!!」
側室の誰かが、大声をあげる。
ついに、この部屋まで火の手がきましたか。
「光秀!なぜ裏切りなどーー!」
つい、言葉が出てしまった。
従兄のよしみで、浪人していた彼を助けてあげたのにーー。
どうして、ここにきて裏切りなど!
「おっ、奥方様!どういたせばーー」
「皆さん!落ち着いてください!!」
私は、後ろにいる女人達に言う。
本能寺は、今や火に包まれ始めている。
戦える家臣達は、みな居なくなった。
あの人が、ここに私達を集めたのだから、正妻である私がまとめなくてわ。
「よいですか、私達は戦える力がありません。私達に残されている道は、これしかないでしょう!」
小太刀をみせ、それを首に近づける。
敵に捕まれば、辱しめを受けるだけーー。
それなら、ここで果てた方が。
「何をしておる!!」
夫が現れ、私の小太刀を叩き落とす。
「勝手に死ぬとは、何事だ!!」
「あなた!?」
あぁ。
いたるところに、血がついている。
こんな姿を見ることになるなんてーー。
「お前達は、裏口からにげい!光秀なら、女達に傷をつけたりせん!!」
その言葉道理に、次々逃げ始める。
しかし、私は死ぬ場所を決めています。
「何をしてる?お主も早く行け!」
「嫌です!!」
すると、夫が顔を真っ赤にしてーー。
「バカなことを言うな!最後くらい余の言うとうりにせんか!!」
「嫌です!あなたこそ、生きようとなさい!!」
「どこに逃げるところなどある!ここは、ほとんど火の海だぞ!!」
「裏口から逃げればよいではありたせんか!ここには、誰かの死体でもおいてーー」
「あの光秀だぞ!そんな物、すぐにバレるわ!」
あぁ、最後になるかもしれないのにーー。
どうして、こうなってしまったのか?
いつから、夫婦の歯車が噛み合わなくなってしまったのか。
「私は、ここであなたと果てます」
「駄目だ。そなたは生きろ」
ついに、屋根が落ち始めた。
炎が、せまってきている。
「もう時間がない。行けお濃」
「・・・・・・」
私は落ちている小太刀を拾い、裏口の屋根に投げる。
小太刀は、狙った道理にいき、屋根を破壊する。
裏口が、炎の瓦礫に埋もれる。
「お濃!お前と言うやつはーー」
「私は、男に産まれとうございました」
懐から、勾玉を取り出す。
綺麗な緑色をした勾玉ーー。
「この勾玉に願い事をすれば、叶うらしいですよ」
夫に、勾玉を握らせる。
「もし、男に産まれていたら。あなたと、共に戦うこともできたのでしょう」
右目を片手で隠し、数秒してから、手を離す。
右目は赤く輝く。
それを見た夫が、驚いた顔をしている。
「その目は!?お濃、まさかお前がーー」
「さぁ、あなたの願いはなんですか?私は、女になってみたけれど、やはり、男の方が楽です。なので、来世では、男に産まれたいです」
涙が、頬をつたいながら畳に落ちる。
これほど、この人の事を愛していたなんてーー。
別れる時になって、始めて気づくなんて。
夫は、私の涙を見て微笑みながらーー。
「それでは、今度は余が女人になるしかないな。そうすれば、お主とまた婚儀をあげることもできるし、子も産めるだろうからな」
私が、一番望んでいる答えを言ってくれた。
それだけで、十分だった。
夫に力一杯抱きつく。
これが、今世の最後だろう。
だから、最後にこの言葉を言いましょう。
「お慕いしていました。あなたーー」
「余も、お主をーー」
最後まで聞こえなかったが、わかっている。
なぜなら、夫婦なのだから。
「まじかよ」
俺は、全ての真実をみた。
そんな気がしてたが、まさか本当に俺がーー。
「そう、あなたは私だったのです」
後ろに、斎藤帰蝶が現れる。
美しい顔立ちだ。
まじで、俺の前世の人かよ。
「と言っても、私もあなたも、あの人のためにできた人物ですけれど」
「あの人?」
「不思議ではありませんか?なぜ、あなたには鎌倉時代の記憶があるのか」
そいういえば。
どうして、鎌倉時代の記憶があるんだ?
「それは、俺達が一人の人間の生まれ変わりだからでござる」
今度は、右側に武士が現れる。
誰だよ?
「申し遅れた。某、源義経という」
はい?
まさか、この人の記憶がーー。
「さよう。某の記憶をみたから、お主は驚いたのでござろう」
すまなそうに、頭を下げる。
な、なんかこっちが悪い感じだ。
「小僧、許してやれ」
左側に、新たな人物が現れた。
今度は、誰だよ!!
「伊藤博文という。小僧も知っているだろ?」
やめてくれよ。
なんで、有名人ばかりなの?
「それは、僕が原因なんだよ」
最後に、あの声が聞こえた。
いつも、俺のことをからかっていた人物。
「やっと、ここまでこれたね。待ちわびたよ僕」
「混乱してきたぞ。あんたの格好、鎌倉時代より前の格好じゃね?」
すると、威張った顔でーー。
「当然さ。君達に、世界の行く末を見てもらうには、君達よりも昔に産まれていたないとね」
「まぁ、あなたの人生の中で女として生きたのは、戦国時代だけでしょう」
「そうなのよ。いやー、あの男。織田信長は、本当にいい人だったよ」
三人が消えて、俺とこいつだけになる。
「さて、やっと君にも完全覚醒する力がついたね。まぁ、真田幸村は、覚醒の口づけをしたから覚醒状態に一足早くなったけどね」
うん?
こいつ、今大変なこと言わなかった?
口づけが、どうのこうのとか。
「ここで、注意が1つある。君は覚醒することができるけど、ここぞというところじゃないと、駄目だからね」
「なんで?」
「君は、他の人と違って次元を4つ越えないといけないんだよ。僕の所までは、メチャクチャ遠いからね」
よくわからんが、とりあえずタイミングが必要なのか。
「覚醒する時は、僕の名前を大声で叫んでね」
「あんたの名前?」
「時間がないから、一度しか言わないよ。僕の名前はーー」
俺は驚きすぎて、口がふさがらない。
こんなことって、あるのかよ!!




