意外な空白
警察からの事情徴収に何となく答えて。
コンビニに行き気にならなくて、何となくそのまま家に帰って寝て。
朝起きてなんとなく学校に行って。
何となく授業を受けて。
何となく一人で昼食をとって。
そのままずるずると、放課後になった。
バスや電車の時間に間に合わないと、即刻帰る生徒や、部活動に行く生徒。今後の行動を友達と相談する生徒など、さまざまな生徒が教室にいた。
緋翠の姿はない。今日は、学校を休んでいる。
今日は一日晴れていた。今だって、日が強い。こんな日はつらいのかなと思いながら。
僕は机に突っ伏す。
馬鹿みたいだ。自分で言っておいて。
こんなにも、自分の言葉に自分で傷ついているなんて。
吸血鬼の事情なんて知らない。人の血を飲まないと生きていけないのかもしれない。それでも、人を殺しておきながら僕に好きと言った緋翠が許せなかった。
もしかしたら僕は、緋翠に、自分から招待を明かして欲しかったのかもしれない。
ならばこの感情は、何かが抜けたようなこの空虚な感情は、裏切られて寂しいとか、そういうものか。
・・・・・はは。
なんだそれ。
仲良くなって大した日もたっていない人間に、自分は吸血鬼だと明かす勇気なんて誰にもあるわけないだろう。
もし僕が彼女だったら、絶対言わない。言えない。
嫌われたくないから。
昨日の、僕みたいに――――――・・・。
「・・・最低」
最低だ、僕。
でもどうしたらいいかわかんないよ。
つんつん、と、背中をつつかれた。
こういう時にこういうことをする奴を、僕は一人しか知らない。
「・・・拓。僕は眠たいんだ。早く部活に行ってきなよ」
「まだいい」
「そう。じゃあほっといてよ。僕はもう少し睡眠をとるから」
机に伏したまま答える僕。
今は誰とも、目を合わせたくなかった。
「なんで元気ねーの?昼も一人で食っちまうし。緋翠ちゃんきてねーからか?」
「・・・・・」
「それとも喧嘩でもしたとかーー?」
「・・・喧嘩ならよかったな」
身を起こして、窓から空を見た。日光がさんさんと降り注ぐ。彼女が肌をさらせない日光が。
「たとえばだけど」
「おう」
「夕菜が、人が死んじゃうような不幸をばらまく体質で、普通に暮らしていけない子だったら、どうする?」
「・・・ファンタジー・・・」
「いいから考えてよ」
こんなことを聞いてどうするんだろう。
もう、どうしようもないのに。
僕には、どうすることも、
「一緒にいる」
「えっ・・・・」
振り返る。
拓は、僕の後ろの席で笑っていた。
「死のうがなにしょうが、俺は夕菜といるね。だって好きだもん」
「・・・死んだら、一緒にいられないよ?」
「いいよ。どちみち生きてたって、一緒にいられなきゃ死んでるのと同じ」
へらへら笑う拓。だけど声は、真剣そのものだった。
「―――――――拓」
「ん?」
「こんなところでそんなこと言っていいの?みんなニヤニヤしながらこっち見てるけど」
「ぐあ!」
---------一緒にいられなきゃ死んでるのも同じ、ね。
別に僕はそこまで思わないけど。
でも。
そう、思いたい、かも。