たなばた
「何、空ばっか見てるの?」
後ろから、脇の下から小さく柔らかい腕がまわされ、優しく抱きしめられる。
今は 7月6日の23時45分。
部屋の一番大きな窓を開け放ち。
空に広がる一面の星空を見上げる。
「ん? 七夕、晴れるかな・・・って」
背中に顔をくっつけて、甘えてくる相手を見つめる。
目が合うと、キス。
優しい、キス。
柔らかい体を抱き寄せて、夜空を見上げる。
明日は、晴れるかな。
それとも、雨かな。
「さっき、天気予報で朝方から雨だって。彦星、可哀想だね」
ちょっと寂しそうな声で彦星を思う彼女。
とても愛しい。
「なんで?」
少し、潤んだ瞳を見つめて質問。
「だって。雨。・・・七夕に雨降ると、二人、逢えないじゃん。一年に一回しか逢えないのに。可哀想って思わないの?」
優しい彼女の心に触れた。
そんな一瞬が、僕には宝物。
僕は彼女の頬にキスを贈る。
「思わないよ」
「えっ、だったら。なんで空ばっか見てるの?」
意外そうに、寂しそうに、僕の答えを待っている。
愛しい彼女を。
大切な想いを。
伝える為に彼女を力強く抱き寄せる。
「七夕の日の夜によく雨が降るのはね、彦星と織姫が願うから。一年に一度の逢瀬の日。どうか二人の幸せな時間をくださいってさ。その願いを神様が叶えてくれてんだよ。
だから・・・
だから、僕は七夕の日は雨でも悲しくない。ね、二人は幸せなんだよ」
にっこり笑顔を向けると。
顔に盛大なキスが贈られる。
「いいね、それ」
「うん。幸せなんだ」
お互いに抱きしめあって。
キスを贈り合う。
幸せな時間。
「あっ、七夕になった」
「今、二人が再会してんだな」
今はまだ、広い空には幾千の星の絨毯。
もう少し。
今度は雨の絨毯が空に広がる。
その時はもう、すぐそこだ。
二人きりになれたら、どんな話をするのだろか。
お互いの想いを伝え合うのだろうか。
幾千の星のした
「いま、同じ様なコトしてるんだろうな」
大切な愛しい君とキスを交わす。