お酒の味
私は何も知らない小娘でしかなく、ただ、受け入れることしかできなかった。世界はなんて広く、そして残酷なんだろう。
捨てられた。
あっさり。
虚しい。
こんなにも簡単な関係だったのだろうか。
二十歳の誕生日を迎えたばかりの私は、大人の男性とお付き合いしていた。
会社員の彼。保険の営業をしているんだって。大学生の私からみれば一々彼は大人に見えた。そこら辺にいるタメの男の子達とは違う。全てが違う。
私は酔っていたんだ。きっと。
好きな時にヤレる相手としてしか見られていなかったのに。
別れはメール一通。
すぐに返信した。納得いかなかった。別れたくなかった。私の中で彼がこんなにもお大きくなっているなんて、その時までわからなかったというのに。
人は失って初めてその価値を知るって何かの本で見たことがある。その時は結局後の祭りじゃん…と鼻で笑ったものだ。
今初めてその意味がわかった気がした。
捨てられた…その事実を受け入れたくなかった。
とりあえず会って話そう
そのメールは送信元が見つからずにすぐに私の元へと戻ってきた。
こうも呆気なく、終わる恋だったのか?
こうも簡単に捨てられてしまう存在なのか。
二十歳の誕生日を迎え、お酒を嗜む私。
十代の頃から興味本位で手を出したお酒。
今、初めてその苦さがわかった気がした。