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♯17 土曜日のオフ会!

 大井蒼空付属中学校の体育館は、ちょっとした熱気に包まれていた。ギャラリーが多いという訳ではないが、普段の練習風景とは一線を画する雰囲気が漂っている。

 時間は土曜日の午後1時半。近所の中学校とのバスケット部同士の練習試合は、既にスタートを切っていた。弾美もスターターの一人、張り切りようは傍から見ても分かる。

 蒼いユニフォーム姿で、勇ましくコートを駆け回っている。

 

 試合は最初からずっと、一進一退のシーソーゲーム。弾美の中学も強くは無いが、相手もレベルは似たようなものらしい。もっとも弾美の中学は、ちゃんとした指導者もいないような超アマチュアチーム。ハイレベルな戦術など、当然ある筈も無く。

 ゾーンディフェンスも適当で、機能してるんだか怪しい感じ。


「お兄さん~、頑張って下さい~!」

「弾美~、しっかりボール追え~!」


 今日に限って、弾美の私設応援団となった『蒼空ブンブン丸』の一同。それにプラスして、イベントで知り合った美井奈と薫達は、ゲームの始まりから元気に声援を飛ばしている。

 幸い敵の補欠の声出しや他の見学者の声援で、ブンブン丸の一団も浮いてはいない様子。肝心の弾美も、結構な活躍振り。チームの得点源となり、カットインを主体に得点を叩き出す。

 さすがに毎朝、個人練習を欠かしていないだけある動き振りだ。その度に湧き上がるブンブン丸のメンバー達。特に女性陣のはしゃぎ様は、声質も手伝ってテンションも高い。

 美井奈など自分事のように、弾美にパスが通るたびに嬌声を上げている。


「お姉ちゃまっ、お兄さん活躍してるじゃないですかっ!」

「2年生なのに、レギュラー取ってるだけでも凄いのになぁ。淳はまだ出番無いみたいだな」

「弾美君、上手いわねぇ……でも、ディフェンス頑張り過ぎてファールがもう3つかぁ」

「前半もまだ途中なのに……ちょっと不味いなぁ、薫さんはルール知ってるんですね?」


 はしゃぐ女性陣、瑠璃とそのクラスメートの静香と茜、薫と美井奈の5人の中で。バスケットのルールを完全に把握しているのは、実は瑠璃と薫のみの様子。

 残りの三人は、本当に弾美の活躍しか目に入っていない感じである。まぁ、ルールが分からないから、そこでしか盛り上がれないというのが実情なのだが。

 村っちは残念ながら、バイトのシフトの関係で遅れるとの通達があって。男性陣、特に弘一と晃のテンションは、若干下がり気味なのは仕方の無い事かも知れない。

 後に予定されているオフ会から、一応合流する予定ではあるのだが。


 試合は薫の懸念通り、ディフェンスに頑張り過ぎた弾美のファールがかさみ。前半を何とかリードで折り返す事に成功したチームだが、後半に入ると途端に失速模様。

 後半早々に退場になってしまった弾美は、チームの3分の1以上の得点に絡んでいたのだが。味方のレギュラーのもう一人も退場を喰らってしまうと、あっさりと逆転を許してしまい。

 淳も弾美の代わりに出て来たけれど、ガチガチに緊張していい所無しの結果に。


「あ~、お兄さん下がっちゃいましたねぇ、お姉ちゃま。もう出て来れないんですか?」

「うん、ファール5つしたら、その試合もう出れないんだよ~」

「残念ですねぇ、他の人は外からしかシュート打たないじゃないですか。お兄さんは頑張って敵を掻い潜って行って、とっても格好良かったのに」

「まぁ、果敢な弾美君らしいスタイルだよね~! あの14番の選手もブンブン丸のメンバーらしいから、美井奈ちゃん一緒に応援しよう?」


 薫の言葉に、少女は一応頷いて見せるものの。美井奈をはじめとする女性陣のテンションは、どうしてもやや下がり気味。それでも静香や茜は、健気に同級生に声援を送り続ける。

 しかしその声援も、結局は空回りに終わってしまう結末に。一度離されてしまった点差は、そのままじりじりと広がる一方。一度も追いつく気配も無く、試合は残念ながらの逆転負け。

 声援の努力も報われず、応援陣もがっかりである。


 進や弘一、晃達同級生も、一応最後まで応援は続けていたものの。負け試合の事は、終わってしまえば頭の片隅に追いやられ。あっさりと、この後のオフ会に思考を移してしまう。

 冷たいようだが、彼らにとって今日のメインイベントは完全にこの後の行事に違いないのだ。幹事というか進行役を担っている弘一と晃は、もの凄い気合いの入れようである。

 バスケット部の方は、このあと4時までは試合をした中学校と合同練習をするらしいので。邪魔してはいけないと、応援団は近くのファミレスに移動する事に。

 元気に別れの挨拶を告げる美井奈に気付いた弾美も、返事は力の抜けた頷きのみ。


「お兄さん、落ち込んでましたねぇ……」

「そうだねぇ、後で瑠璃ちゃんに慰めて貰うように頼んでおこうか?」

「茜ちゃん……聞こえてるけど?」

「途中退場はねぇ、全部出し切れてないだけに辛いよねぇ?」


 オフ会は慰め会に変更だと、特に気楽な男性陣の外野は呑気に構えている様子。実際、大井蒼空町の学校は中学高校と、スポーツには力を入れていない。地区大会でも勝ち上がる方が珍しがられる始末なのだ。

 そこまで深刻に友達の負けっぷりに感じ入らないのも、道理と言えるかも知れない。


 総勢八名の団体は、ぞろぞろと体育館を後にして。それから校庭を横切って、繁華街へと向かう道をしばらく進んで行く。待ち合わせのファミレスは知らせてあるので、残りのメンバーが到着するまでそこで待つ事になっているのだ。

 先ほどのバスケットの試合をネタにしているのは、美井奈ただ一人。初めての試合観戦に、感受性をいたく刺激されたらしい。薫が相手になって、色々とルールの説明を始めると、目を輝かせてそれに聞き入っている。その他のメンバーも、話に聞き入ったり他の話をしたり。

 騒々しい団体は、ゆっくりとお店に入って行く。


 

 4時を過ぎるまで、賑やかな集団の話の中心はやっぱり美井奈だった。つい昨日の夜に体験した、竜退治や裏の装備取りの苦労話を勢い込んで話しまくっている。

 薫が時々補足を入れて、話の潤滑さの手助けに入る感じ。瑠璃は同意の言葉を挟むくらい、実際に美井奈の話を聞いても、自分がその場にいたとは信じられないのが実情。

 進達同じギルドメンバーは、結構仰天して聞き入っていたのだが。美井奈が証拠の写真を見せると、食いついて来たのは静香と茜の女性陣だった。朝から学校が休みで暇だった美井奈、こんな事をして時間を潰していたらしい。

 ワイワイはしゃぎながら、皆で美井奈のプリントアウトした写真を眺め始める。


 美井奈は持参したデジカメを見せびらかし、オフ会の写真も撮るのだと大張り切り。進が気を利かせて、写真を眺める女性陣を、美井奈を中心に数枚撮影してみたり。

 土曜の昼下がりだけあって、ファミレスは結構な混雑振りを見せている。あまり目立つ訳にも行かないが、他のテーブルにも話に興じる学生達の姿をちらほら見掛ける。

 賑やかなのは、どのテーブルも同じ事だし平気だろう。


 先に一行に合流したのは、弾美と淳のバスケット部員ペアだった。二人とも試合のダメージで、練習疲れとは一味違った憔悴振り。暗い顔付きで、盛り上がっている一団に近付いて来る。

 お疲れ様とか仲間の労わりの言葉にも、呻き声に似た言葉でしか返答出来ない始末。弾美は詰めて貰って出来た席に腰を降ろすと、ふうっと重いため息一つ。

 試合の結果に騒ぎまくる美井奈をゲンコで黙らせ、これ以上の失言と慰めに睨みを効かせる弾美である。

 

「弾美はレギュラー貰って、初めての試合だったからなぁ。練習とは言え、似たような強さの中学相手だったし、勝ちたい気持ちが強かったみたいなんだ」

「は~、それで退場するほど力んでたんですか!」


 淳のフォローにまたも失言の美井奈。再び殴られそうになって、慌てて薫の膝元に逃げ込む素振り。瑠璃が何とかフォローに入るが、弾美はその必要も無い落ち込み振り。

 負け試合の話の矛先は、いつの間にかほとんど活躍をしなかった淳にも向いていた様で。弘一や晃に、応援してやったのにあの体たらくは何事かと詰め寄られてしまっている。

 反論も出来ずに、大きな身体をモジモジさせる淳であった。


 実際、弾美より淳の方が身長は8センチ以上高いのだが。ルールを知っている薫も、まさか大きい身体をして情けないなどと追い討ちをかける訳にも行かず。

 傷付きやすい少年相手に、ドンマイなどと差し障りの無いコメントを掛けるのみ。


 そんな騒ぎの治まらない集団の中に、遅れてゴメンとやって来たのが村っちこと村重春奈。マリモ店員の仲間である潮崎も、何故か後ろに引き連れている。

 薫が事情を聞くと、どうやら会計役にと強引に付き合わされたらしく。ご愁傷様と痛み入るが、村っちにしたら連休中の宿泊旅行で、只今絶賛金欠中らしいのだ。

 彼もしかし、若い子達と喋るのも嫌いじゃないし、限定イベントの話を聞けるとあっては嫌は無いよう。いつもの様にニコニコしながら、この場も持ってあげるから場所を変えようと言って来る。


 太っ腹な発言に、メンバーからはここの会計くらい出しますと遠慮の声も出るのだが。幸いコーヒーや紅茶やジュースバーとか、全員安いモノばかりでの2時間近い長居だったので。

 年長者に任せなさいと、いなされてしまった少年少女達。各自お礼を述べながら、店を続々と後にする事に。顔見知りの弾美は、潮崎に大丈夫かと小声で訊ねるのだが。

 指先でオーケーのサイン。それより、面白い場所に連れて行ってあげると、意味ありげな言葉。


「あの男の人誰だ? 春奈さんの彼氏かっ?」

「村っちと同じく、マリモの店員さんの潮崎さんって人……付き合ってるかどうかは知らないけど。なんか、今から面白い場所に案内してくれるらしい」

「はぁ……マリモのペット広場でお茶会とかだと、私はちょっと嫌ですけど」

「安心しろ、それは俺も潮崎さんも、きっと全力で嫌だ」


 美井奈の言葉には、力いっぱい同意の言葉を返す弾美。村っちの彼氏発言に否定の言葉を聞けなかった弘一や晃は、ライバル出現かと色めき立っているのだが。

 本気で狙っているのかどうかは定かでないが、薫などは内心面白がっているよう。村っちはそこそこ美人だし、気風も良いし。こっそりと弾美に、彼らは歳上が好みなのかと訊ねて来たりして。

 弾美は肩を竦めて、そうでもないと返すしかない。


「一時期、静香や茜にモーション掛けてたけど、一向に相手にされなかったからな。ノリのいい村っちなんかは、モロ好みなのかも知れないなぁ」

「はぁ……要するに振り向いてくれる女性なら、誰でもいい感じなのかしらねぇ」


 村っちと潮崎が会計を終えて出て来るまで、一行は勝手な会話で盛り上がる始末。静香と茜が改めて潮崎に礼を述べに近付くのを見て、弘一と晃は男の嫉妬メラメラ。

 変な事にならない内にと、弾美が村っちに盛り上げてくれと耳打ち一つ。先ほどまで落ち込んでいたのも忘れるほど、世話の掛かるメンバー達だったけど。そこまで計算していたとも思えないのだが、結果的に弾美の落ち込んだ気分をガラリと変えてしまったようである。

 村っちは言われるままに最大限のノリで、今からオフ会のメッカに皆を導くと宣言。聞き慣れない言葉だけど、何だか秘密っぽいセリフ廻しに盛り上がる一同。


「何だ、オフ会のメッカって? ちゃんとしたお店なのか?」

「大丈夫だよ、弾美君。もっとも、以前は居酒屋だったんだけどね。今は未成年でもちゃんと入店出来るし、寛げるお店には間違いないよ」

「へぇ、そんな店が近くにあるんだ。知らなかったなぁ、弾美?」

「ほ、本当に大丈夫なの? 小学生もいるんだし、変な雰囲気の場所はNGだよっ?」


 潮崎の返事に、興味津々の様子の進や他の男性メンバー達。元が居酒屋だったと言う怪しさも、少年達の好奇心を刺激するのには充分だったらしいのだけれど。

 心配する声も、ちらほらと瑠璃や茜あたりからこぼれるのだが。男性陣の勢いに待ったを掛けるほどではなく、隣の弾美をつついてみるのが精々。主に美井奈を心配しての行為だが、当の少女は同じく好奇心いっぱいのワクワク顔。

 ワイワイと先頭の村っちをせかしながら、移動を開始するメンバー達。静香や茜は、このノリには少し不安そうだったが。瑠璃や薫の存在に信頼を見出したのか、後ろをおどおど付いて来る。

 美井奈は心配の素振りも見せず、相変わらず瑠璃と手を繋ぎながら弾美と会話の日常振り。


「バスケットって面白そうですよねぇ! 私、中学に上がったらやってみようかなぁ?」

「おうっ、面白いのは保証するぞ。今なら、俺の弟子にして練習見てやるっ!」

「あ~、いいねぇ! 今度、公園で一緒にやってみようか?」

「午後よりは朝の方がいいかな、運動公園はいつも混むからなぁ」


 後ろで会話を聞いていた静香と茜は、弾美チームの仲の良さにちょっとホンワリした気分。先ほど拳骨で脅されていた美井奈だが、弾美と本当の兄弟のような雰囲気を醸し出している。

 ゲームをしていなかったら結ばれなかった、不思議な縁を感じつつ。年齢も性別もばらつきのある集団は、いつしか繁華街の端っこの、小さく古ぼけた感じの扉前へ。

 店構えも小さいのかと思いきや、中は案外拡がりを見せており。古木をふんだんに使い、中世の洋風に統一された雰囲気がどこか哀愁を漂わせている。中二階や階段下の奥まったテーブル、カウンターなどの設えは、さながら洋風のRPGの冒険者のギルドのよう。

 入った途端に、どよめく年少者一同。ここまで徹底したセットの店があるとは驚きだ。


 お客の入りは、午後の遅い時間にしてはまぁまぁ。前もって空きを確認しておいた潮崎は、一同を店の奥へと導く。十二名の大所帯となると、奥の大テーブルしか収容出来ないのだ。

 潮崎が、入店するなり店のマスターらしき人と何やら話し合っている。マスターはスキンヘッドの厳つい顔付きで、そこまで雰囲気作りに貢献しなくてもと思うほど。

 ウェイトレスの洒落た格好も、特に男性陣には大ウケである。何というか、メイドさん姿やネコ耳装着は当たり前な感じで。他にも色々と、コスプレ衣装が盛りだくさんのよう。

 美井奈もはしゃいで、撮影は可能なのかと訊ねる始末。


「大丈夫だよ、話は通しておいたし……ネコ耳とかも貸してくれるサービスあるんだ、ここ。無料だから、飲み物が届くまでは撮影会しようか」

「しまった……俺もデジカメ持って来れば良かった!」

「静香……何逃げようとしてんだ? 茜と一緒に、ネコ耳姿を撮影して貰え」


 はしゃぎながら、瑠璃や薫を撮影に巻き込んでいる美井奈組はともかくとして。照れのある静香や茜は、弾美が乱暴に強制参加の方向に持って行く始末。

 アンティークの椅子が飾られた小さなステージが設えてあり、そこが撮影場所となっているようだ。後悔する弘一や晃と違い、潮崎はちゃっかり自前のデジカメを持参している。

 お店からもデジカメを借りられると聞いて、再び盛り上がる男性陣。一番はしゃいでるのは美井奈と村っちで、巻き込まれた瑠璃や静香達は、最初やや表情も固かったり。

 それでも、弾美が壁に掛けてあった作り物の剣を持って乱入すると。茜辺りから固さもほぐれて来るように。


「ほらほら、短槍もあるよっ! 誰か使ってるキャラいない?」

「おっ、こっちには弓矢もあるなっ……美井奈、そらパスだっ!」

「はいっ、お兄さんっ! ……これ、矢筒って背負えばいいんですかね?」

「いいね~、ハイ、ポーズ♪ よしっ、今度はイベントチームで撮影しようか!」


 いつの間にか茜が、積極的に撮影指揮に携わるようになって。コスプレ撮影から記念撮影へと、現場は速いサイクルで被写体を代えて行く。和気藹々の撮影会だが、やがてスタッフの一人がテーブルの支度が出来たと告げて来た。

 テンションの上がっていた一行は、落ち着くまでに一苦労だったり。ようやく全員がテーブルに席を定めると、潮崎が乾杯の音頭を取るようにと弾美に振ってくる。

 純粋な蒼空ブンブン丸の会合ではないのだけれど。まぁいいいやと、弾美が乾杯の合図。


 団長の音頭取りに、盛大に声を揃えての乾杯が返って来る。各自のグラスに注がれている怪しい飲み物は、この店一押しの『エリクサー』なる飲み物らしいのだが。

 何がベースなのか不明な味だが、意外と美味しくて一同には好評な様子。フルーツ系のミックスジュースらしいのだが、どこかスパイシーな口当たりも感じられる。

 おつまみも数種類用意されていて、焼きマシュマロに『スライム焼き』との名前が付いていたモノは大好評。金のメダルが周囲に散らばっているが、これは包装されたチョコのようだ。

 しばらく全員で、この穴場的なお店の話題で盛り上がる事に。


「面白いな~、ここ。冒険者の気分が満喫出来て、コスプレ風味も混じってたりと、何か変な感じはするけど。有名なギルドとかも、ここでオフ会してるのかな?」

「そうらしいね、大学生のギルドとか、常連もいるらしいよ? 夜はお酒飲めるみたいだし、割と盛り上がってるとこ見た事あるね。だから夜は、ちょっとガラが悪くなる」

「そうなんだ……それじゃあ夜は、お子様連れでは来れないなぁ。道理でメニューに、おつまみ的な料理が多いと思った」

「そうだよ……別に定食モノをオーダーされたら財布にダメージあるからって理由で、ここを選んだ訳じゃないからねっ! まぁ、そういう理由もちょっとあるけど」

「だから俺らも払うって、村っち。金欠なんだろ、無理するなってば」


 村っちと潮崎の大人の事情と、弾美と進のギルドの締め役コンビが、何となく小声でせめぎあってみたりして。他のメンバーはデジカメの出来を確認し合ったり、笑えるメニューを探して大笑いしてみたり。

 オーダー控え目な理由は、学生組は夕食前だから。名物の飲み物と、笑える名前のサブメニューを古めかしい感じのテーブルに並べて、もっぱら会話で盛り上がるメンバー達。

 獣人古銭型クッキーとか、矢弾ポッキーとか、出て来るのは至って普通のスナックなのだけど。そんな名前のお遊びだけで、結構笑ってしまうのは若さ故なのかゲーマーだからか。

 アルコール抜きでこの盛り上がりようは、立派だと思う。


 現在は、会話の場は全くの2つに分断している感じ。ゲームの話題を中心に騒がしく語り合うメインの集団は、最近の攻略であった出来事をそれぞれ報告し合っている。

 地上エリアはこうやって廻った方がいいとか、金のメダルの使い道だとか。2パーティともようやく固定メンバーが決まって、手強いイベントエリアを前にして。いかにキャラ強化するべきかを、皆で熱く語り合っている。

 お互いに本腰をすえて巡ったエリアは、まだまだ半分位しか無いのだけれど。それでも裏エリアの情報をかんがみるに、実際に用意されたマップはもっと多いと推測する一同。

 弾美チームは、用意されたマップは全部廻るのだと鼻息も荒い。


 もっとも、それを主張しているのは、リーダーでもない美井奈だったりするのだが。肝心の弾美は進と一緒に、村っちと塩崎を相手にライバル有名ギルドのチェックを小声で行っている最中。

 上位入賞を狙っている『蒼空ブンブン丸』としては、競い合う相手の動向も気になるところ。一番気になるのは、やはり大学のサークル関係の巨大ギルドの噂あたりか。

 メイン世界では、その大人数の勢力を活かしてブイブイ言わせているその彼等も。今回の限定イベントでは、いささか分が悪いと風の噂で聞こえて来てはいるのだが。

 こっちも風邪引きや混雑でインを諦めたりで、数日を無駄にしている事情が。


「今回の限定イベントは、皆がレベル1からって事もあって公平ではあるね。数の優位もあまり関係ないし、色んなルートが用意されてるのは順位付けにどう影響があるのかな?」

「噂では、早解きとか遅解きとかのルートが分かれてるし、順位付けの採点方法がかなり複雑になってるって。キャラのレベルとか持ってるスキル数とか、NMを倒した回数や訪れたマップの数とか……早解きボーナスも、もちろん相当に影響して来るらしいけど」

「早解きかぁ……大学サークルの連中、一度地上エリアですれ違ったけどさ。皆で迅速装備着込んでて、同じユニフォーム着たどっかの体育系みたいで笑えたなぁ」

「大人数で一緒にプレイするのも、そういう意味では考え物だわよね。思考が偏っちゃうから、間違える時は一蓮托生だもんねぇ? 弾美君たちは、今のところNM遭遇率やマップコンプリート率に関しては凄いって聞いてるけど。レア装備だけでも高得点上げてる予感があるわよねぇ!」


 そうだと良いけどと、弾美はやや謙遜気味な返答。金のメダルも今のところ潤っているが、キャラの強さや所持スキル技、所持魔法数も得点に加わるという村っちの話が本当ならば。

 そちらにメダルを使うのも、あながち間違ってはいないという意味で、その点では安心出来るかも知れない。自分のチームは暗塊装備や流氷装備を地下で入手している分、他にメダルを使えるのも大きい気がする。

 リーダーの弾美としては、皆で強くなってこれからの難関強敵に挑みたいところだ。


 向こうの話の輪では、美井奈がまだまだ昨日の出来事で場を盛り上げていた。昨日の妖精の泉から水のトリガー使用まで、そしてそこで変なパーティが加わって来た事も。

 弾美は思い出して、何気なく村っちと塩崎にハヤトというキャラについて聞いてみる。とにかく装備の良さとスキルの充実振りに、かなりの凄腕冒険者的な雰囲気が漂っていたのだ。

 それを耳にした進が、また揉め事を起こしたのかと呆れ顔を弾美に向けて来る。違うと目で返事をしつつ、何故か信頼の無い自分の行動に憮然とした表情を浮かべてしまう。

 それはともかく、塩崎の方がその名前に心当たりがあったよう。


「前回の限定イベントの、優勝ギルドのリーダーじゃなかったかな? 僕らの所属ギルドのメンバーの一人が、確かそのハヤトって人と知り合いでさ。大学生だけど、ゲームサークルには所属して無かったような。高校生から大学生、社会人のごった煮ギルドだった筈?」

「私たちのギルドは、フリーターが8割占めるもんねぇ。お蔭で時間が揃わなくって、合同イベントやり難いんだけどさ。まぁ、オフ会は盛り上がるし楽しいよ? 弾美君達のギルドも、かなりノリが良いし仲良さそうだけどさ」

「ノリが良いっていうか、ただのお莫迦な連中なだけのような気が。いやいや、仮にも同じギルド員だし友達だもんな……多少の品性の無さには目を瞑ってもらうとして……」


 ブツブツ言い始めた進の視線は、主に弘一と晃のニヤケ顔に向けられている様子。小学生の美井奈は別として、茜や静香や瑠璃や薫と、周囲を見回せば美人揃いである。

 自然と顔の筋肉が緩むのも、まぁ男としては無理の無い事なのかも知れないけど。傍で見ていると、確かにお莫迦ヅラと言われても仕方の無いワンシーンではある。

 それぞれギルド内で、色んな諸事情を抱えていてちょっと笑えるような。


 村っちと塩崎は、同じギルドに所属しているらしいのだけど。元々が自由人の集まりな感じのギルドだけに、がっちり横の繋がりというのは、実は希薄だったりするらしい。

 マリモの店長も、しっかりそこに在籍しているとは村っちの話。その店長であるが、限定イベントでは切り捨てにあって資格を失ったと、本人から耳にしている塩崎たち。

 村っちなど、店長と限定イベントを勧めると約束していただけに、かなり後ろめたい気分に陥っているらしいのだが。職場で顔を合わすたびに、恨みがましい視線を向けられる身になってくれと、変な同情を欲する彼女ではあるのだが。

 約束を破る方が悪いと、弾美などは素っ気無い。


「だってさぁ、急に旅行に行きたくなっちゃったんだもん。薫がただで泊めてくれるって言うし、そしたら電車賃だけで済むわけじゃんっ! あっ、そう言えば店長が弾美君を呼んでたよ。連休中に手伝ってくれたバイト代を払うから、瑠璃ちゃんと取りに来て頂戴って」

「ああっ、了解……って、旅行って薫っちの帰郷について行ったのかよっ! まぁ俺たちも、明日は薫っちの部屋で合同インする予定だけどな」

「なにっ、弾美……お前そんな美味しい事を企んでたのかっ!」


 うっかりと弾美が口にした企画が、何故か反対側で話に興じていた弘一の耳に届いてしまって。物凄い地獄耳、場は結構他の者たちの歓談で騒がしいほどだったのに。

 その後は喧々諤々、矢面に立たされた弾美は滑った口に一抹の後悔。責めてる方の弘一と晃が、何故か涙目のおかしな構図。そんなに悔しいのかと、何故か責められてる弾美の心中に同情心が湧き起こる。

 村っちが機転を利かせて、入賞したらもっと豪華にお祝いしようと飢えた男どもにセクシーアピール。なかなか堂に入った♂のコントロール振りに、塩崎と弾美は笑顔も引き攣り気味。

 簡単にほだされる弘一と晃は、それはそれで幸せそうだったり。



 時間はあっという間に過ぎて行き、6時になろうかという頃には。学生たちは慌て出し、そろそろ家に戻らないと駄目な時間帯だと口にする。夕食が控えているので、スナックをつまむペースも控え目な面々だっただけに、外食の醍醐味を満喫出来なかったのは残念なところ。

 それでも仲間とのオフ会は楽しかったし、このお店の独特な雰囲気も味わえたし。非日常というスパイスは、ちょっとした事で味わえるものだという事も再発見出来た。

 ゲームの中だけでなく、こんな場所でもレアな体験が出来るとは。


 会計は有言実行で村っちと塩崎が受け持つ事に。薫も払おうかとこっそり友達に尋ねたが、ここは任せておけとの頼もしい言葉。実際はどうか分からないが、塩崎もまた呼んでと不満のなさそうな顔付きである。

 メンバーたちは、ここでもやっぱりご馳走になったお礼を口にして。門限のある女子たちは、やや早足で岐路につく模様。薫は美井奈を送って行くので、店の前で別方向に。

 少女と一緒に皆に手を振り、また今度と爽やかに別れを告げる。


 弾美達パーティにとっては、限定イベントの進行があるのでまた今夜という事でもあるけれど。茜と静香の早足に合わせて、学生組も急ぎ足で住宅街のゆるい坂道を登り始める。

 夕暮れが地上に降り注ぐ頃には、弾美と瑠璃も自宅の玄関をくぐって遅い散歩の打ち合わせ。犬達が、いつにも増して飼い主に抗議模様なのは仕方が無い事だろう。

 二人の幼馴染みは、大急ぎで着替えて玄関口で再合流。


「マリモの店長が、バイト代くれるから寄ってくれって。散歩のついでに寄ろうか?」

「ああ、そっか。それじゃあ……ドックフードとか買い足しておきたいなぁ。でも今の時間だと、あんまり話し込めないよね、平気かな?」

「そんなに話し込む必要も無いだろ、店長も仕事中なんだしさ。さっさと戻る口実があった方が、むしろいいんじゃないか?」


 それもそうかと、ちょっと薄情な少年少女。頑張りの割には報われない評価のマリモの店長、そんな性格なので仕方が無いとも言えるけど。弾美は家から引くタイプのカートを持ち出し、重たいペットフードの買い込みに準備万端。

 何しろお隣さんのと合わせて、大型犬2匹分の買い込みである。担いで帰ろうと思ったら、ちょっと大変な事になってしまうのは体験済み。春休みには配送のバイトもしていた身なので、そこら辺の事情は良く分かっている。

 店長も実は腰痛持ちで、くどい位にそんな話は耳にしている二人である。


 散歩のルート変更には、2匹の兄弟犬は渋々の同意。それでも駆け足で道を進む姿は、全く行き先の迷いは無い感じである。マリモにも、その隣の動物病院にも、二人と2匹は何度も通った事があるので当然かもだけど。

 それでも一行が店に辿り着いたのは6時半くらい。瑠璃は母親宛にメモを残しておいたものの、遅い時間の外出には少しだけ後ろめたさを覚えている様子。

 それでも店長は上機嫌で二人を迎えてくれて、寛いでくれと言わんばかり。時間的に、ゆっくりしている暇はないと、すかさず牽制を入れる弾美の読みはばっちり。

 店内はほどほど混んでいるのに、相変わらずお客は放っておく方針らしい。


「村重さんの伝言が届いたみたいだね、良かった。えぇと、こっちが津嶋さんの、こっちが弾美君の5月分のバイト代、二人とも、有り難う!」

「こちらこそ、有り難うございます。ついでだから、ペットフードとか買って行きますね、店長さん」

「有り難う、店長。夕食の時間があるから長居出来ないけど、限定イベント終わったら、ゆっくり顛末を話しに来るから」

「限定イベント終わったら、すぐに中間テストが始まっちゃうよ、ハズミちゃん。あっ、その前に茜ちゃんと静ちゃんのピアノ演奏会があるんだった」


 瑠璃にとっては、店長に限定イベントのあらましを言って聞かせるより、友達の演奏会の方が大事なのは当然なのだけど。どこまでも放っておかれる体質の店長は、ちょっと寂しそう。

 瑠璃が品物を選びにレジ前を去ってしまうと、犬たちもそれに追従の構え。弾美は店内の客の流れをチェックしつつ、少しくらいなら話し込んでも大丈夫と判断して。

 寂しそうな店長に、地上エリアで廻った場所をかいつまんで説明してあげる。


「葉っぱを8枚集めながら、クエストエリアとか遺跡エリアとか、フリーエリアを探索するんだけどさ。裏エリアなんかも存在してて、まだまだ半分も廻れてないんだよね。ライバルとの差がどれだけあるか分からないし、取り敢えずは楽しみながらクリアして行くつもりだけど」

「へえっ、社会人のギルドから流れて来る噂では、今回は自分たちみたいに、じっくり腰を落ち着けて攻略しているパーティが有利だって言ってるみたいだけど。僕はそっちにも在籍してるから、今回上位に入るのは案外社会人チームかもって思ってるけどなぁ」

「ギルドを掛け持ちなんかして、節操がないな店長。確かに今回の限定イベントは、勢いだけでは攻略が難しい感じだけど。順位をどうやって付けるかが不明だから、有利不利は何とも言えないかもなぁ」


 弾美の言葉にも、店長は大して感銘を受けるでもなく。どちらにせよ、自分はもう資格を失ってるので関係のない事だと肩を竦める素振り。大きな体躯だけに、その動作は少しコミカル。

 ところで店長のように、ギルドの掛け持ちしているキャラは実は意外と多いとの噂。ギルドによっては、活動時間に大幅なばらつきが生じてしまって、それを緩衝する為でもあるらしいのだが。

 例えば夜の8時から12時までしか人が集まらないギルドがあるとして。週の半分も、その時間に自分が入れなかったら、やっぱりそれは寂しく感じてしまう。

 それなら深夜過ぎに活動するギルドとか、夕方に活動するギルドとか、はたまた知り合いに誘って貰ったギルドと掛け持ちするのも悪くはないという考えなのだが。

 それを実践している人は、少なからずいるらしいのだ。

 

 それはともかく、瑠璃が品物を選んでしまうまでに、他にも色々と二人で世間話を交えたりなど。それから店員割引をして貰って、品物を数点購入。貰ったばかりのバイト代は、すぐさまペットフードや何やらに変化する。

 それをキャリーカートに乗せてしまって、岐路に着こうと店長に別れの挨拶。合計が20キロ以上の荷物は、引くのも割と大変だったり。力持ちの犬たちに引かせたいとか、犬橇にコイツ等は適しているのかとか、帰りの会話も他愛ないものだったけど。

 食事を済ませたら、素早くインまでの準備を済ませないと、もう時間が無い事に気づく二人。


 マリモの店長との会話で、弾美が一つ気になった点があったのだけど。さっきまで居酒屋風のお店でオフ会をしていたのだと、弾美が店長に報告をした時に。

 羨ましそうな店長がポツリと漏らしたのは、自分もかなり前にギルドのオフ会に参加した時に。前回の限定イベントの優勝者が、確か同じ席にいたとの事。

 何でそうなったのかは定かではないが、とにかくギルマス同士が知り合いだったらしくて。大学生のその優勝ギルドのリーダは、確かにハヤトという名前だったとか。

 食事を終えて風呂に浸かりながら、弾美はこのハヤトなる人物を勝手にライバル候補に指名する事に。何事も、目標が明確でないと弾美は盛り上がらないタイプなのだ。

 目を付けられた見知らぬ相手からすると、ちょっと気の毒な話ではある。


 初めてのスタメンでの練習試合に負けてしまって、内心落ち込んでいた弾美だったけど。新たな目標に切り替えて、自分を鼓舞するのも弾美ならではのやり方。

 風呂上りに、気分も疲れた身体もリフレッシュしつつ。そろそろゲームにインする態勢を作っておかないと、リーダーなのに集合時間に遅刻してしまう。

 他のメンバーは、女性だけあって時間にはやたらと律儀なのだ。





 お馴染みの集合時間には、ちゃんと全員がインして雑談に興じているいつもの風景。話題はやっぱり、夕方のオフ会の感想とか明日の合同インについての打ち合わせとか。

 女性陣はかしましく、明日の準備などを計画中らしい。薫がやたらと、狭いし綺麗じゃないから期待しないでねと連呼しているのが気になるのだけど。結構朝の早い時間なのは、昼から大学内を案内して貰うため。

 そのために、午前中に限定イベントの攻略を終わらせてしまおうという目論見なのだけど。休日を一日遊び倒してしまおうという、子供たちの熱意も見え隠れしているよう。

 薫としては、パーティに馴染む絶好のチャンスと言えなくもないのだが。特に最年少の美井奈との確執も、最近はようやく薄らいで来た感じもあるので。

 そんな事を思いつつ、ただしこちらにも部屋の事情などある訳で。


『部屋がなかなか片付かなくって、どうしようって悩んでる所なの。一応、明日早起きしてスペース作ってみる予定ではあるんだけど』

『そんなに狭い部屋なんですか、薫さんの入ってる寮って。時間があれば、お掃除とか手伝うんだけど……』

『お姉ちゃまは甘やかしさんですよっ! 部屋の掃除なんて、基本中の基本じゃないですかっ!』


 小学生に諭されて、初っ端から意気消沈の薫だったけど。それでヤル気も注入されたようで、何とか明日は全力でメンバーをもてなしますと、新たに決意の固まる年長者。

 そこまで気持ちを込める問題ではないだろうと、弾美などは思うのだけど。同級生の部屋に遊びに行くと言っても、片付けるのに半日待ってくれと返事をする者などまずいない。

 女子寮を借りているとの話だが、その辺がネックになっているのだろうか?


 とにかく、もう決まってしまった合同インの計画だ。出来るならば、そのままスムーズに進めてしまいたい。サブ行事の大学見学など、弾美だけでなく皆が楽しみにしている事なので。

 明日の9時に、大学の正門前に集合という事で全員に通達済みである。もてなし役の薫に対しては、来なかったら皆で押しかけるぞと脅しを掛けるのも忘れない弾美だったけど。

 逃げはしないよと、薫はやや冷や汗まじりの返答振り。


『ううっ、ちょっと気が重いけど部屋を片付ける良い機会かなぁ? よしっ、気を取り直して今日の冒険頑張ろうっ!』

『そうですねっ、頑張りましょう。買った薬品配るから、みんなどこにいるか教えて~』

『ここです、お姉ちゃまっ! 今日はどこを攻略するんですか、隊長?』


 それを受けて、今まで巡った場所と行ってない場所を、頭の中で探り始める弾美。時間縛りがあるので、なるべく効率的に攻略を進めたい所ではあるのだが。

 そんな事を考えつつ、取り敢えずはメンバーの現状チェック。



 先日29にまで上がったハズミンだが、皆の厚意によって竜の宝珠と複合スキルの書を貰う事となった。それによって覚えた魔法の《竜人化》と、スキル技の《ドラゴニックフロウ》は、もの凄いレアな存在に違いないのは確か。

 久々の武器の交換と共に、胴装備と盾の交換で防御力も格段のアップを見せた。見た目がなり変わったが、タゲ取りキャラ的には頼りになる成長振りである。

 ちなみに新スキルの《上段斬り》は、しばらく魔法を唱えられさせなくさせる技。魔法がウザい敵には良いかも知れない。


名前:ハズミン  属性:闇  レベル:29

取得スキル  :片手剣60《攻撃力アップ1》 《二段斬り》 《複・トルネードスピン》 

                 《下段斬り》 《種族特性吸収》 《攻撃力アップ2》

                  《上段斬り》 《複・ドラゴニックフロウ》

          :闇52《SPヒール》  《シャドータッチ》  《闇の断罪》 

              《グラビティ》  《闇の腐食》   :竜10《竜人化》

          :風23《風鈴》 《風の鞭》   :土23《クラック》 《石つぶて》

種族スキル  :闇29《敵感知》 《影走り》  :土10《防御力アップ+10%》


装備  :武器  石割りの剣 攻撃力+19、防+4《耐久10/10》

     :盾    龍鱗の盾 耐ブレス効果、防+18《耐久15/15》

     :筒    大麻袋 ポケット+3、HP+5、SP+5%

     :頭    暗塊の兜 闇スキル+5、土スキル+5、HP+25、防+15

     :首    鬼胡桃のペンダント HP+8、体力+2、防+6

     :耳1   砂塵のピアス、土スキル+3、体力+1、防+3

     :耳2   遺跡のピアス 器用度+1、HP+5、防+2

     :胴    龍鱗の鎧 耐ブレス効果、体力+4、防+18

     :腕輪  暗塊の腕輪 闇スキル+5、土スキル+5、HP+25、防+15

     :指輪1 サファイアの指輪 腕力+3、SP+10%、防+5

     :指輪2 古代の指輪 体力+1、防御+5

     :背    砂嵐のマント 風スキル+3、敏捷度+4、防+8

     :腰    獅子王のベルト ポケット+2、攻撃力+4、HP+15、防+8

     :両脚  魔人の下衣 攻撃力+3、体力+2、腕力+2、防+10

     :両足   暗塊のブーツ 闇スキル+5、土スキル+5、HP+25、防+10

 

ポケット(最大8) :中ポーション  :中ポーション :中ポーション :闇の水晶玉

           :中ポーション  :中ポーション :万能薬     :万能薬



 ベルトや指輪の交換で、細部に少しずつ変更のあったルリルリだが。今回はこれと言った大きな成長も無く、他のキャラに譲った形となった。昨日はレベルアップもしなかったし、色々と譲り過ぎた気もする結果となってしまったかも。

 それでも装備ではバトルグローブも貰える事となって、ハズミンからお古の盾も回って来た。防御力も見た目も結構様変わりを見せたのだが、やっぱり黒いタキシードは悪目立ちしてしまう。

 当分はからかわれるのを覚悟しつつ、でもちょっと格好良いかもと思い始めてる瑠璃であった。


名前:ルリルリ  属性:水  レベル:27

取得スキル  :細剣44《二段突き》 《クリティカル1》 《複・アイススラッシュ》 

                《麻痺撃》 《幻惑の舞い》

       :水50《ヒール》 《ウォーターシェル》 《ウォータースピア》 

              《ウォーターミラー》  《波紋ヒール》 

         :光30《光属性付与》 《エンジェルリング》 《ライトヒール》

          :氷30《魔女の囁き》 《魔女の足止め》 《魔女の接吻》

種族スキル  :水27《魔法回復量UP+10%》 《水上移動》


装備  :武器  戦闘ネコの細剣 攻撃力+15、敏捷度+2、MP+8《耐久12/12》

     :盾    豪奢な大盾 体力+4、防+12《耐久8/8》

     :筒    大麻袋 ポケット+3、HP+5、SP+5%

     :頭    流氷の髪飾り 水スキル+5、氷スキル+5、MP+25、防+8

     :首    サファイアのネックレス 腕力+3、SP+10%、防+5

     :耳1   天使のピアス 光スキル+3、知力+2、MP+8、防+3

     :耳2   流氷のイヤリング 水スキル+5、氷スキル+5、MP+25、防+5

     :胴    タキシード ポケット+2、SP+10%、MP+15、防+10

     :腕輪  バトルグローブ 攻撃力+3、HP+8、防+12

     :指輪1 光の特級リング 光スキル+4、HP+15、攻撃距離+4%、防+4

     :指輪2 プラチナの指輪 腕力+3、HP+15、攻撃速度UP、防+4

     :背    クモの巣のマント HP+7、MP+7、防+7

     :腰    複合素材のベルト ポケット+4、器用度+4、MP+8、防+6

     :両脚  流氷のスカート 水スキル+5、氷スキル+5、MP+25、防+10

     :両足   ゾゲン鋼の戦靴 体力+2、HP+6、防+10

 

ポケット(最大12):小ポーション :中ポーション :中エーテル :水の水晶玉  

           :中ポーション :中エーテル  :万能薬   :闇の水晶玉   

           :中ポーション :大エーテル  :中エーテ  :万能薬



 昨夜の最終ドラゴン戦の結果、27にレベルアップを遂げたミイナだが。フリーエリアから集落への冒険によって、新たな隠し装備らしき妖精シリーズをゲット。

 そのせいかどうか、覚えた魔法は《風の癒し》と《フェアリーウィッシュ》という、強力な支援系の効果を発揮するものだった。特に光魔法の《フェアリーウィッシュ》は、使い方次第では強力なサポート力を揮いそうである。とは言え、MPはどちらもそれなりに必要なのだが。

 弓術の複合スキル技の《スクリューアロー》も、本人の活躍の場を広げるものになりそうな気配がする。使い過ぎるとタゲが離れなくなるが、《フェアリーウィッシュ》と一緒に使えば、ソロでのキープ&撃破も夢ではない。

 装備によるSPの上昇で、連続スキル技使用も可能になったミイナ。フィニッシャーとしての立場も固まりつつあるが、更に矢束や修繕費にお金が掛かると言う弱点は酷くなったとも。


名前:ミイナ  属性:雷  レベル:27

取得スキル  :弓術40《みだれ撃ち》 《近距離ショット1》 《攻撃速度UP1》 

                《貫通撃》 《複・スクリューアロー》

          :光41《ライトヒール》 《ホーリー》 《フラッシュ》 《フェアリーウィッシュ》

          :風20《風の陣》 《風の癒し》   :水10《ヒール》

          :雷26《俊敏付加》 《俊足付加》

種族スキル  :雷27《攻撃速度UP+3%》 《雷精招来》


装備  :武器  大樹の長杖 攻撃力+11、知力+3、MP+20《耐久12/12》

     :遠隔  雷鳴の弓矢  攻撃力+17、器用度+4、敏捷度+4《耐久12/12》

     :筒    貫きの矢束 攻撃力+14

     :頭    船長の帽子 腕力+4、SP+10%、HP+5、防+10

     :首    サファイアのネックレス 腕力+3、SP+10%、防+5

     :耳1   血色のピアス 耐呪い効果、HP+10、防+2

     :耳2   金のピアス 敏捷度+2、MP+4、防+2

     :胴    妖精のドレス 光スキル+4、風スキル+4、MP+20、防御+20

     :腕輪  星人の腕輪 光スキル+2、闇スキル+3、MP+8、防+8

     :指輪1 雷の特級リング 雷スキル+4、器用度+4、攻撃速度UP、防+4

     :指輪2 サファイアの指輪 腕力+3、SP+10%、防+5

     :腰    複合素材のベルト ポケット+4、器用度+4、MP+8、防+6

     :背    砂嵐のマント 風スキル+3、敏捷度+4、防+8

     :両脚  妖精のスカート ポケット+2、光スキル+3、風スキル+3、防御+12

     :両足   戦闘ネコの長靴 敏捷度+2、MP+6、防+10

 

ポケット(最大9) :小ポーション  :中ポーション  :中ポーション  :万能薬  :万能薬

           :エーテル     :中エーテル   :中エーテル   :キングのカード



 レベルUP果実と、正真正銘のレベルアップにより、27になったカオルだが。長い事決定力不足に悩んでいたが、武器の交換と新スキル技の《貫通撃》の取得により、ようやく削り力の大きな飛躍へと漕ぎ付けた次第である。

 さらに炎の宝珠の使用で、いきなり《炎のブレス》という範囲魔法を取得した形になり、パーティ的にも大助かりである。何しろ昨夜のドラゴンとの激戦で、範囲攻撃アイテムを綺麗に使い切ってしまったのだ。

 ただ、カオル的にはMPの少なさは気になるところ。ブレスの威力を上げる為にも、炎スキルを伸ばそうかと密かに思案中な年長者である。


名前:カオル  属性:風  レベル:27

取得スキル  :長槍60《二段突き》 《攻撃力アップ1》 《脚払い》 《石突き撃》

               《クリティカル1》 《貫通撃》

          :炎28《炎属性付与》 《炎のブレス》 :雷15《俊敏付加》 :風13《風鈴》

種族スキル  :風27《回避速度UP+3%》 《魔法詠唱速度+6%》


装備  :武器  赤龍の大槍 攻撃力+32《耐久15/15》

     :筒    絹の腰袋 ポケット+4、HP+10、SP+10%

     :頭    迅速の兜 炎スキル+4、雷スキル+4、器用度+2、防+7

     :首    進みがちな懐中時計 SP+10%、攻撃速度UP、防+4

     :耳1   サファイアのピアス 腕力+2、SP+10%、防+3

     :耳2   銀のピアス 器用度+2、HP+4、防+2

     :胴    超プニョンの赤鎧 火スキル+3、腕力+2、防+14

     :腕輪  迅速の腕輪 炎スキル+4、雷スキル+4、腕力+2、防+7

     :指輪1 迅速の指輪 炎スキル+3、雷スキル+3、防+4

     :指輪2 遺跡のリング 器用度+2、HP+5、防+3

     :腰    迅速のベルト ポケット+3、器用度+2、防+7

     :背    迅速のマント 炎スキル+4、雷スキル+4、防+7

     :両脚  迅速のズボン ポケット+2、腕力+2、防御+7

     :両足   迅速のブーツ 腕力+3、器用度+3、防+7

 

ポケット(最大12) :中ポーション  :中ポーション  :万能薬    :万能薬

            :中ポーション   :中ポーション  :中エーテル  :聖水

            :中ポーション   :中ポーション  :中エーテル  :クイーンのカード



 ドラゴンの秘宝とレベルアップ果実の取得で、パーティ的にも大いに強運が舞い込んで来た前回の冒険結果だったけど。どちらかと言えば、全員のレベルが均等にこなれて来たのが嬉しい変更点かも知れない。

 特に一人だけレベルの低かったカオルの追い付きによって、前衛として頑張れるHPの値に。風種族は元々前衛に向いている種族なので、その辺は心配は要らないとも言える。

 SPこそ少ないが、武器を振るう回転速度はかなりのものなのだ。範囲魔法も覚えて、存在感が途端に出て来た前衛の片翼に。前衛の成長は、つまりは後衛の安心感に繋がる訳で。

 美井奈も安心、さらには瑠璃も後衛に徹する機会も出て来るかも。


 強敵相手の場合には、色々とフォーメーションを選べる事が可能になって来るかも知れない。とにかくこれから先のエリアも、一筋縄では行きそうもない気配がプンプンである。

 パーティ一丸となって、これに対峙しなければ。





 ――そんな訳で、物語は後半の冒険編に続くのであった。


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