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半径三メートルの箱庭生活  作者: 白い黒猫
星は、月と同じように空で輝くものの、とっても遠くにあります
7/23

一メートルの世界 <5>(から圏外を覗く)

『子供っぽい空想遊びはそれで終わった。成長とともに信じる心は薄れる。

そう望んだからではなく、それが現実なのだ』

   【Dear フレンズ】より

挿絵(By みてみん)


 シネコンの劇場内、開場とともに人がゆっくり満ちていく。スクリーンでは映画マナーを促す動画や、劇場サービスを紹介する動画が流れる。

 映画が始まる前の、この期待に満ちたザワザワした空気は、映画好きには堪らない空気である。パンフを読んでキャストを確認している人、一緒に来た人と映画の話をする人、世間話をする人、皆それぞれの好きなように時間を楽しんでいる。

「なんか ナツッちと映画も久しぶりだよな~つうか~、デートも久しぶりじゃ~ん!」

 チャラい感じの男は上機嫌で、バカでかいポップコーンの器も持ってシートにドッカリと座る。

「そうだね……」

 彼女と思われる女性は短い言葉で答える。肩までの黒髪のストレートヘアで、OLっぽいメイクで、ブラックジーンズに原色のTシャツに細身のジャケットというシンプルな格好をしている。

「電話嬉しくて、俺すっげ~テンションあがったよ」

「そうなんだ……あのさ、私、来年から、就職でしょ?」

「だよな! OLってカッチョイーよな! ナツっちも、最近大人~!って感じになったよな」

「そう……でね、そうすると、学生のタクくんと生活リズムもズレてくるから、このまま付き合っていくのって難しいと思うの!」 

 真剣な女の子の言葉に、男はヘラヘラっと軽い笑顔を返す。

「え~関係ないよ! それに土日に会えば問題なっし、細かい事気にしな~いよ俺!」

「……」

 そんな事をしていると、スクリーンで予告編が始まる。某世界的に有名な児童文学原作映画の第五シリーズが来年春に公開されると華々しく伝えてくる。

「これ コレすっげー楽しみなんだ、ナツっちとの思い出の映画だし」

「そうだね、この映画の続きって、私一体誰と観ることになるのかな~」

「え! 俺と行けばいいじゃん?」

「それはないと思う」

「またまた~!」

 会話を続ければ続けるほど、二人の温度差が広がっていくカップル。 


   ※   ※   ※


 そのカップルの後ろのシートで、口を手で隠し笑うのをこらえる私。隣の黒くんは自分も笑っているくせに、私を突いて笑うのを止めようとしてくる。

「いや~凄いドラマだね~」

 前に聞こえないように、隣の席に話しかける。

「喜劇だよ!」

 意地悪そうな顔で、黒くんが返してくる。

「映画もうすぐ始まる。落ち着かないと! ほら、顔引き締めて!」

 そして、映画は始まる……『そんな彼なら 捨てちゃいな!』 というタイトルの。(※注 実在する映画は『そんな彼なら 捨てちゃえば?』です)

 映画が終わり、前のシートのチャラ男は、『ブラボ~』と無邪気に手を叩きながら喜んでいる。映画はかなり楽しめたようだ。そんな男に隣の彼女は冷たい視線を送り、男を置いてさっさと外へと歩き出す。男は慌てて彼女を追いかけて出て行く。

「いや~最高に面白かった」 

 黒くんは、やっと普通の声で話せるという感じで晴れやかに言い放つ。

「本当に色んな意味で、面白すぎた! この映画は別の意味で記憶に残る映画になったよ~」

 私も笑いが止まらない。というかやっと気兼ねなく笑える。映画館で交わされる会話には、映画以上のドラマが詰まっていたりすることがある。

 私達に未来を見る力などないが、あのカップルが多分今日中に別れて、来年の春一緒に、人気児童文学原作のシリーズ映画『バリン・ボッタ-』の第五弾を観に行くことはないのだろうなというのは分かった。

 この物語において、映画館で観る設定の映画は架空のタイトルにしていました。でないと公開時期の問題で違和感でそうなので。ビデオとか過去に観た映画についてはそのもので表現していく事にしました。


『そんな彼なら 捨てちゃえば?』は、結構最近多いテーマ、男と女の恋愛の考え方の違いを描いた作品です。

【物語の中にある映画館にて】

「そんな彼なら 捨てちゃえば?」

http://ncode.syosetu.com/n5267p/2/

の解説があります


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