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半径三メートルの箱庭生活  作者: 白い黒猫
太陽の力で、月は輝いている?
19/23

二メートルの世界 <3> (そして1メートルの世界に)

『小さな事を頑張る

 肩の力を抜く

 あとは天に任せる』

   【28日後】

挿絵(By みてみん)


 私は、メールでまず大陽くんに蟹のお礼を送る、そしてそのメールの中で今電話しても大丈夫かとも確認する。

 すると、すぐにミッションインポッシブルの着信音がする。大陽くんの方から電話が掛かってきた。

「蟹ついたんだ、よかった。ご家族で、楽しんで下さいな」

 長閑な声が電話の向こうから聞こえる。

「ありがとう、凄く嬉しいよ! 帰ったら美味しく頂きます」

 へへへという笑い声が聞こえる。

「所で、どうしたの? 何かあった?」

「いや、鰻好き? お礼にと思って」

「大好き! あ、でも、マンションの方に送ってもらっても調理道具ないし困るかな」

 そうだだよね、料理を一切しないと聞いているし。私は別の物何が良いかなと悩む。  

「だから、実家の方に送ってくれる? そしたら週末実家に行って食べるから」


 大陽くんは実家も、彼が暮らすマンションも同じ川崎にある。去年デカくて邪魔だからと実家追い出され、分譲マンション購入し一人暮らしを始めたばかりの状態。

 とはいえ、そちらのご家庭は大丈夫なの? 行き成り見しらぬ女性から息子宛に鰻が届いても大騒ぎしないのだろうか?

「大丈夫? ご家族の方、行き成り鰻届いて驚かない?」

 怖々と聞いてみる。

「大丈夫、鰻届くと説明しておくから~」 

 私は、彼が私の事をどう家族に説明するのかが気になるが、そこが怖くて聞けない。彼女? 友達? どちら? 大陽くんの事だから『週末鰻届くからよろしく~』とだけ言いそうな気もする。家族が驚いても、その時はその時だ、なるようになれ!

「……分かった、なら実家の住所メールで教えて、今週末で大丈夫?」

「オッケー! あ、じゃあそろそろ仕事戻るね」

「ゴメンね、忙しい所。お仕事頑張ってね!」

「ゆり蔵さんも、ほどほど程度に頑張ってね! じゃ~!」

 電話は切れる。私は大きくため息をついた。都合の良いようにとって良いのか、それは勘違いなのか悩む所。相変わらす本心が読めない。私はどうするべきなのだろう? 悩ましい。ただ心臓だけがバクバクしている。


 ※   ※   ※


 電話を終え、打ち合わせ室に戻る。

「どしたの?」

 信子先輩が不思議そうに聞いてくる。

「いえね、友達からお土産の蟹が届いて、親が慌てちゃって」

 まあ、何となく聞いていたと思うけど、説明する。

「ほう、蟹を! 剛毅な友達をもってうらやましいのう」

 私もそう思う。やることが豪快だ。

 「私も、『北海道いくんだ! 羨ましい、なら蟹くらい買ってきてよ』と冗談で言ったんですよ。そしたら本当に送ってくれました。言ってみるものなのですね!」

「そうだね、私も旅行前の友人にコレから片っ端から言ってみることにしよ!」

 妙な決意を口にする信子先輩。

 横で、夏美ちゃんがニコニコしている。

「いいね~蟹♪ お日様みたいな形だし!」

 彼女は、大陽くんとの関係について知っているので、彼女なりに良い感じだね! と祝福してくれているようだ。なので、私もヘラっと彼女に笑い返す。

 私はふと、意味ありげな顔で笑っている、黒くんと目が合う。

 その顔を見て、頭の中で弾けるように何かが閃く!

「あ! クリスマスバージョンのアソーテッド・クッキー! 欲しいな~」

 部屋にいる、黒くん意外の全員の目が光る。黒くんの顔が途端に引きつる。

 チョット可哀想な事をしたかな…。


 でも律儀な黒くんは、ちゃんとアソーテッド・クッキーを三つ買ってきてくれた。

 信子先輩と夏美ちゃんのいるデザイン課に一つ、自分の課に一つ、私のいる営業製作課に一つ。ありがたい、課のみんなで美味しく頂くことにした。そして私にはいつも仕事をしてくれているからと、パイレーツオブカリビアングッズをコッソリとつけてくれた。こういう気遣いがさりげなく出来る所が、黒くんという男の良い所。

 嬉しそうに、ドヤ顔で面白いものを持ってくる身長百九十センチの男とは、エライ違いである。

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