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半径三メートルの箱庭生活  作者: 白い黒猫
太陽の力で、月は輝いている?
16/23

一メートルの世界 <9> (一メートル先から何やら)

『この飯 おろそかには食わぬぞ』

   【七人の侍】より

挿絵(By みてみん)


 いつもの昼休み、信子先輩と夏美ちゃんと実和ちゃんと私と、何故かまた黒くんと一緒に打ち合わせ室にてお昼を食べている。

 黒くんは脳天気に情報雑誌を広げニコニコ笑っている。次のデートに彼女とディズニーランドに行くらしく、『どういうコースが楽しいかな?』という無神経な話題を振ってくる。夏美ちゃんの冷たい目と実和ちゃんの悲しそうな顔に気付いていない。

 かといって、彼女が出来たばかりで楽しい盛りの男にまわりを気にしろというのも無理な事なのかもしれない。私はため息をつくしかない。

「最近、ディズニーランドに行ってたよね? 月ちゃんも」

 確かに行ったけど、何故知ってるんだろう? そういえば、チョコクランチを配った時に少し話をしたような気がする。ブログでもその事を書いた。

 そんな時に、私のスマフォが鳴る。ディスプレイを確認すると母からである。通話を押す。

「ねえ、百合ちゃんに、なんか北海道からクール宅急便が届いているんだけど」

 母の怪訝そうな声がスピーカーから聞こえてくる。

 北海道に何か物を送ってくるような知り合いなんかいたかな? と私は記憶をたどる。

「え? 宅急便? 私に?」

太陽たいよう渚さん? って知ってる?」

 私はそれに合点する。

「あぁぁあ、蟹!」

 半分冗談で言ったのに、本当に送ってくれたんだ。チョット感動しつつ、動揺する。

「蟹? なんで?」

 母に聞かれ、私はどう答えるべきか悩む。

「北海道土産かと……」

 これで、納得してもらえただろうか? 私は電話越しに母の様子を伺う。

「で……誰? 太陽渚さんって?」

 やはり、ソコ聞いてこられますよね……。

「それ、『太陽たいよう』さんじゃなくて、『大陽おおよう』さんです、お母さん覚えていませんか? 昔、社宅にいた……」

「北九州時代のお友達?」

「……ええ……六年の時同じクラスで、桜公園の方の社宅に住んでいた子で……」

 母の『うーん』という言葉から、良かった、覚えてないようだ。私は、ジェスチャーで皆に断ってから部屋から出る。

「そんな女の子いたかしら? それに仲良かった? 初めて名前聞いたけど」

 そうでしょうね、話したことありませんし、小学校の時、存在すら気にしてませんでしたから……。

「そうでしたっけ?」

 惚けてしまう。

「まあ、いいわ、ならその子にも、ちゃんとお礼するのよ、こんな高価なもの送ってもらったんだから、そうだ! 寛人さんの鰻がいいかも!」

 寛人さんとは、母の従兄弟で鰻屋さんをしている。そこの鰻が、関西風で柔らかくて身内のひいき目を差し引いてみても凄く美味しい。頼めばクール宅急便で美味しい選りすぐりの鰻を郵送してくれたりするのだ。

「分かりました! 今すぐお礼の電話して、鰻の件も相談してみます」

 そう言って電話を切る。渚という名前が幸いして、母は女の子と勘違いしたようだ。私は胸をなで下ろす。嘘は言ってない。

 これが、むくつけき巨漢の男性だと知ったら、どんな大騒ぎするのか……。


 私の姉は真面目に恋人とかを母に紹介していたが、その度に母が過剰に干渉してくるのを見続けていた。なので私は星野秀明と付き合っているときも母にはあえて伝えてなかった。自分の大事な場所に踏みいって掻き乱して欲しくはなかったから。友達と遊びにいくとか、旅行いくときも部活の合宿とか言って誤魔化してきた。

 彼と別れた後も、黒くんなど男性の友達と遊びにいくときも、『友達』という言葉で濁していた。ここで、いきなり男性という存在が出てきたら、母は家に連れてこいと五月蠅く言ってくるだろう。私は大きく深呼吸する。


【七人の侍】私が説明するまでもない、黒沢明監督の名作です。

農民達の命ともいうべき、お米を食べた後に勘兵衛言うが名台詞です。

今現在みても、心を熱くする映画ですよね!

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