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半径三メートルの箱庭生活  作者: 白い黒猫
星は、月と同じように空で輝くものの、とっても遠くにあります
12/23

一メートルの世界 <7>

『人のこと嫌いになるってのは、それなりの覚悟しろってことだぞ』

   【バトル・ロワイアル】

挿絵(By みてみん)


 九月半ばになり、私は二十五歳になった。

 なんなのだろう、『二十四歳』というのと、『二十五歳』この言葉の響きの違いは。一歳違うだけで、えらく老けた気持ちになってくる。

 ロッカールームでため息をついていると、夏美ちゃんがソッと近づいてきて、可愛い包みを私に差し出してくる!

「誕生日おめでとう! 素敵な一年の始まりだね」

 夏美ちゃんのこんな綺麗な笑みを貰えるなら、年をとるのも悪くないかなとも思えてくる。

「ありがとう、開けてみてもいい?」

「いいよ!」

 フフフと笑う夏美ちゃん。

 開けてみると彼女手作りの切り絵のカードと、表が月で裏が太陽のアップリケのついた可愛いポーチが出てくる。ヨーロッパっぽいデザインのそれは、なんともいえなくお洒落で素敵である。

 そのカードと、ポーチに込められた彼女の心が伝わってきて、感動してしまう。

「可愛い! ありがとう~」

「太陽の光いっぱい浴びて、まん丸お月様になってね」

 意味ありげに夏美ちゃんはニッコリと笑う。

 二人でロッカールームを出て、フロアに向かっていると、黒くんが近づいてくる。

「おはよう! なんか楽しそうだけど、どうしたの?」

「おはよう! 分かる? 今日は私誕生日だからね~」

黒くんは、目をチョット見開き暫く何か考えるようなそぶりをした後、ニッコリ笑う。

「そうなんだ! おめでとう! お祝いしないと、良かったら今夜奢るよ! 二人で飲みに行こうよ」

 夏美ちゃんは、眉を顰めてジッと黒くんを見る。

「……よかったら、河瀬さんもくる?」

「……悪いわね、私までごちそうになって」

 夏美ちゃんは、上品で穏やかにニッコリと笑う。

「え!」

 黒くんは絶句する。


 珍しいこともあるもんだ、夏美ちゃんは黒くんをあまり良く思ってない。だからあまり積極的に絡まない。また黒くんもそんな空気を察してか夏美ちゃんに距離をおいている。

「ついでに、同期会でもする? 久しぶりに五人で飲んでも楽しいかも」

 夏美ちゃんは笑顔でさらにトンデモナイ事いってくる。

「河瀬さん、みんな忙しいと思うから、今日は三人でも……」

「そうだよ、三人で楽しもう、奢るから!」

 可哀想に黒くんは慌てて、そう言いながら逃げていった。

 同期は、私達三人の他、実はあと二人いる。私と夏美ちゃんは他の二人とも仲良くやっている。でも何故同期会がこんなにもやりにくい環境になったのか? それは一重に黒くんに原因がある。

 残り二人が、黒くんの初代彼女と、三代目彼女だった(コチラも過去形で、しかも近い過去)、という状況でその三人を含めた飲み会は、私としては遠慮したい会合である。

 しかも、何で私は誕生日にそんな飲み会に参加しないといけないというのか……そうならなかった事に胸をなで下ろすが、残りの三人での飲み会というのも、どう共通の話題をしていけばいいのか悩む所である。

「別に私達二人だけも、楽しめたのにね」

 夏美ちゃんは、ため息をつきながら、去っていく黒くんの背中を恨めしそうに見つめている。

 そこまで、嫌いですか……。黒くんは友達として付き合う分には、そう悪いヤツではないんですが。

『バトル・ロワイアル』まさか3Dになって帰ってくるとは驚きですよね……。

あと、黒沢明彦が主人公の物語が『伸ばした手のチョット先の お月様』のタイトルでスタートしています。黒沢明彦の恋愛論にご興味ある方はそちらもどうぞご覧になってください。彼からみた月見里百合子の姿も楽しめる?と思います。

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