飼ってみたいペット
気力が無いので、全編は脳内保管にしてます。移譲もOK
魔道具を取り扱っている店に、私は初めて足を踏み入れた。新米魔道士に欠かせない使い魔を手に入れたかったからだが。どうにもその店に引き寄せられたみたいだった。これもある意味、天の啓示かもしれない。
錬金用の材料から、武器、防具に至るまで、魔道士が欲しがる物ばかりが取り揃えらえている。予算は無いのに、あれもこれもと目移りしてしまい、気づけば随分長居をしてしまっていた。
「嬢ちゃん。欲しい品物は決まったかい?」
気さくそうな店主が私に声をかけてくる。いけない、こんなんじゃいつまで経っても買い物が終われないわ。
「あの…これから先の魔道を共にしてくれるような使い魔が欲しいんですが。」
勇気を振り絞って、私は店主に訊いてみた。ああ、と納得したように笑顔で店主は奥の倉庫へと案内する。つられて付いて来た私はそこで、大きな怪物と目が合った。
辰砂の獅子の鬣に狼の顔をしたホムンクルス…というべき生き物だった。逞しい胸筋と上腕二頭筋が、毛に覆われていない玄肌にくっきりと浮かぶ。鱗に覆われた手腕は少し青味を帯びていて、水掻きのついた指先は細く長くて奇麗だった。腰から下は暗くてよくわからない。狭い檻に、伏せてこちらを見ている。
「使い魔なら、この辺りが良いだろうな。まあ最初はペットのつもりで飼うと良い。色々慣れてくると使い魔として利用することも出来る。」
店主は倉庫内を移動して、私に小さな愛くるしい生き物達を紹介してくれていた。勧められるまま、ケージの中の子達を見つめる。確かにみんな、愛嬌があって可愛い。きっと私でなくても貰ってくれる人はいるだろう。
私はもう一度怪物のいる檻を見た。先程から喉が鳴るような低い音が響いている。私は2、3歩下がってあの怪物のいる檻の前まで戻った。
彼は体を起こし、這うようにゆっくりと私に近づいてきた。私の元へやって来ると、鉄格子越しに私にかしずく。低くグルグルと喉を鳴らす。
けれど、それは私には澄んだ透明感のある低音でこう聞こえた。
『飼うなら、俺にしろ。俺を選べ。』
青く深い針のような瞳が、私を必死に見つめていた。
「どれか飼ってみたいと思うペットは有ったかい? 嬢ちゃん。」
店主の声で我に返って、私は思わず訊ねていた。
「あの、この子はどういったものになるのでしょうか。」
私が指差す檻を見て、店主は深く溜息を吐いた。
「ああ、これは。偏屈な魔女の遺したガラクタさ。大方実験の道具だったんだろう。でもどんな魔力反響があるかわからないし、大体喋れないから意思疎通も難しい。やめておいた方が良いね。」
そんな風に彼を見下げて言う。私は彼がそこまでヒドイ生き物のようには思えなかった。
「言葉がわかれば、この子でも大丈夫ですか?」
店主に確認を取り、私は彼に向き直る。
「あなたの名前を教えてくれない?」
『名など…無い。アイツはダンテと呼んでいた。』
「ダンテ、ね。じゃあ私もそう呼んでいい?」
彼は不服そうに目を背ける。
「嫌なら私が新しい名前をつけていいかな? あなたに似合う名前を考えるから。」
そう言うと、彼は耳先をピンと立てて上目遣いに私を見た。余程嬉しかったのか、潤みを帯びた期待する眼差しを私に送ってきた。そのやり取りを見て、店主は目を丸くして私を見た。
「コリャ驚いたな。嬢ちゃん、本当にコレと会話が出来るみたいだ。」
頭を掻きながら奥から彼の魔統証書を持ち出し、店主は私に差し出した。
天翼皮で作られた紙に書かれている契約紋が彼の刻印らしい。魔統証書を見るのは初めてだし、本物の魔統証書に使われる天翼皮紙も初めて触った。思わず私は見入ってしまった。
「ハハハ。嬢ちゃんは本当に初めてなんだな。」
豪快に笑いながら店主は丁寧に説明をしてくれる。魔力を注がないと文字が定着しないことや、証書に書かれている内容など、教えてもらった事を私は余す事無く記憶していった。
「じゃあ此処に契約印を押してくれ。」
独り立ちをするにあたって新調した篆刻を取り出し、私は契約紋の上に乗せて、自身の魔力を注いだ。彼の契約紋と私の印章が呼応して、光が天翼皮紙の上で渦を巻く。程なく光の筋が立ち、彼の額へと飛んでいき、吸収された。
「さあ、これでコイツは嬢ちゃんの物だ。」
開かれた檻の扉から、彼がゆっくりと歩み出てきた。私は彼の姿に驚きつつ、とんでもない使い魔を手にしてしまったんだと、改めて思った。
こうして、魔法陣の中のラヴクと新米魔導士の物語は、幕を開けたのだった。
で。誰か続きを書いてくれんかな。
必要なら
2026年08月の 活動報告書「使い魔の見えない下半身について の設定見本」も参考にしてくださいな。




