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Legendiaより愛をこめて〜ホルムズ危機、そして私たちは恋を知る   作者: おーがすてぃーぬ


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4/27

揺れるグラス、揺れる心 ―女王の船の夜会―

今回は船内パーティー回。

ヒロイン視点を交えつつ、リヒトの心の揺れを描いてみました。


まだ恋とは呼べない感情。

けれど確実に、何かが動き始めています。


女王の夜を、どうぞお楽しみください。

レジェンディアは、バルセロナへ向けて穏やかな航路を進んでいた。


夕刻。


船内パーティーを前に、スイートルームの一室では柔らかな灯りが揺れている。


豪奢な鏡の前に立つレイコは、ネイビーのドレスに袖を通していた。


深い海を思わせる色。

繊細な銀糸の刺繍が、波のように光を反射する。

肩には白のファーショール。

髪は上品なハーフアップ。

耳元には小粒のダイヤのみ。


華美ではない。


だが――気品がある。


まるで、レジェンディアのように。


「レイコ様、中東情勢がさらに緊張を増しております。保険料も上昇傾向。タンカー関連株は神経質な動きです」


背後で執事が淡々と告げる。


レイコはリップを引きながら、鏡越しに微笑んだ。


「今月は予定どおりで構わないわ。外務省の発表もまだ決定的ではないもの。BMMも他社も、当然予防策は講じているでしょう」


落ち着いた声。


「それより為替の動きが気になるわね。円が弱いなら、ドル建てを少し優先するわ。買い増しは半分程度。まとめては動かない」


「慎重なご判断で」


「勇敢さと無謀は違うもの」


鏡越しに視線が合う。


「今日もお美しい。まさに女王のようです」


「今この船で、レジェンディア以上に美しい存在はないわよ」


軽やかに笑い、レイコは立ち上がった。


執事が自然な所作で腕を差し出す。


「参りましょう」


 


豪華なシャンデリアの光が降り注ぐホール。


シャンパンの泡が弾け、笑い声がさざめく。


レイコが姿を現した瞬間、空気がわずかに変わった。


「オーガスティア様!」


「お久しぶりです」


「今回もご一緒できて光栄です」


株主たちが次々と声をかける。


レイコは一人ひとりに丁寧に応じた。


「総会以来ですわね。皆様、お元気そうで何よりです」


媚びることなく、しかし柔らかく。


会話は自然に市場の話題へ移る。


「中東は開戦間近とも聞きますが」

「ええ。ただ、私はBMMを信じていますわ。船たちが無事に戻ることを祈るだけです」


「エネルギー株は狙い目ですぞ。米国市場は強い」


「存じております。でも小口に留めますわ。勇気ある皆様のようには参りません」


微笑みながら、主導権は決して渡さない。


その様子を、少し離れた場所でリヒトは見ていた。


昼間、白鳥の前で微笑んでいた女。


今は、女王の色をまとっている。


そしてその隣には、執事。


自然な距離。

息の合った動き。

迷いのない信頼関係。


親密だ。


「とんでもない株主様だな。まるで男を従える女王のようだ」


思わず零れた言葉に、自分でも驚く。


「……やけに辛辣だな」


横に立った同僚オフィサーが小声で言う。


「そうか? 俺はああいう女は好みじゃない」


「昼からずっと機嫌が悪いぞ、お前」


同僚は苦笑し、グラスを傾けた。


リヒトは無意識にシャンパングラスを握りしめる。


彼女は株主だ。


評価する側の人間。


それだけだ。


そう言い聞かせても、視線は勝手に追ってしまう。


レイコがふと顔を上げた。


視線が、一瞬だけホールを横切る。


リヒトのいる方向へ。


だが焦点は合わない。


そのまま執事に何かを囁き、席へ向かう。


女王の船内で、

女王の装いを纏う女。


胸の奥で、静かに何かが軋む。


これは反感か。

それとも――


グラスの中で、シャンパンの泡が小さく震える。


船は穏やかに進んでいる。


だがリヒトの心は、穏やかではない。


揺れるグラス。

揺れる心。


まだ名前のつかない感情が、

静かに波紋を広げていた。


第四話をお読みいただき、ありがとうございます。


リヒトはまだ認めていませんが、

心は確実に揺れています。


誇りと嫉妬。

尊敬と反発。


この複雑な感情が、次回どんな形で言葉になるのか。


いよいよ二人が本格的に向き合います。


ブックマークや評価、とても励みになります。

引き続き、レジェンディアの航海を見守っていただけましたら嬉しいです。


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