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Legendiaより愛をこめて〜ホルムズ危機、そして私たちは恋を知る   作者: おーがすてぃーぬ


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36/80

暴風域―性悪な低気圧―

北太平洋の嵐は、単に波が高いだけではありません。


周期の短い波が連続して押し寄せると、船は休む間もなく持ち上げられ、叩きつけられます。

特に暴風域では、雨と風によって視界も大きく制限されます。


今回の回は、まさにその「暴風域」に入った瞬間です。


まだ嵐の中心ではありません。

しかし海はすでに牙を剥いています。


北太平洋の夜の海を、レジェンディアたちはどう乗り越えるのか。

ブリッジの緊張した時間を描いた回になります。

深夜を過ぎた。


北太平洋は、完全に低気圧の暴風圏に入っていた。


中心気圧965hPa


低気圧は南寄りへ進路を変えながら、なお発達を続けている。


直撃ではない。


それでも外縁の暴風域が、レジェンディア船団を覆っていた。


ブリッジの窓を、横殴りの雨が叩く。


視界はほとんどない。


レーダー画面も、雨と波のノイズで荒れていた。



ミカエラが計器を確認する。

「波高……約7m!」


アレックスが続けた。

「周期……十秒!!」


短い沈黙。


周期十秒。


つまり、波が休む間もなく襲ってくるということだ。


三人娘が顔を見合わせる。


ミカエラが吐き捨てた。


「性格わっる!!」



次の瞬間。


船体が持ち上がる。


巨大なうねりがレジェンディアを押し上げる。


船首が空へ向かう。


そして、


落ちる。


――ドォン!!


海面が船底を叩いた。


ブリッジの床まで衝撃が伝わる。


船体が低く軋んだ。


ミカエラが歯を食いしばる。

「いつからうちの女王さまは暴れ馬になったんだよっ!!」


アレックスが叫ぶ。

「低気圧のくせに!性格悪りぃな!!」


リサが半分悲鳴で叫んだ。

「エ、エレクトラさぁぁん!!」


船長が静かに言う。

「落ち着け」



その時。


無線が割り込んだ。


ノイズ混じりの声。


Little Bearだ。


“Help! Help!!”

(助けて!助けて!)


“I’m rolling!!”

(転がっちゃうよ!!)


次の瞬間。


――ドン!!


大きな衝撃音。


“OUCH!!”

(痛い!!)


ブリッジの空気が張り詰めた。


船長が短く言う。


「落ち着くんだ。Little Bear」


「速度を維持し、波に船首を向けろ」


無線の向こうで、誰かが慌てている。


それでも小さなバルカーは、必死に波へ向き直っていた。



レジェンディアにも次の波が来る。


船体が再び持ち上がる。


空に浮くような感覚。


そして落下。


――ドォォン!!


船が震えた。


船長がレーダーを見たまま言う。

「流されたままだ」


ミカエラが操船レバーを握りしめる。

「分かってるってば!女王さまが言うこと聞いてくれないんだよ!!」


巨大な船体は、わずかに横へ押されていた。


暴風が船体を叩いている。


船長が短く命じる。

「ヴァルナー」


ブリッジにいたリヒトを見る。

「交代しろ」



リヒトは一歩前に出た。


「了解」


操船輪を握る。


「スタビライザー最大」


船底のフィンスタビライザーが完全展開する。


巨大な水中翼が海を掴み、横揺れを抑える。


「エンジン出力調整」


「波に正対」


舵を微調整する。


「針路、右三度」


レジェンディアがゆっくり姿勢を変える。



次の波が迫る。


壁のような黒い海。


船体が持ち上がる。


そして、


落ちる。


――ドォォォン!!


だが今度は違う。


衝撃が、わずかに柔らいだ。


船長が小さく頷く。


「よし」


「立て直せ」


リヒトは前を見たまま言う。


「このまま維持します」



外では、


嵐が北太平洋を叩き続けていた。


だがレジェンディアは、


まだ進んでいる。

今回登場した「スタビライザー」は、大型客船やクルーズ船にとって非常に重要な装置です。


正式には フィンスタビライザー と呼ばれ、船体の左右に取り付けられた水中翼のような装置です。

通常は船体の中に格納されていますが、海が荒れた時には外へ展開されます。


この翼が水中で角度を変えながら水を押さえることで、船の横揺れ(ローリング)を抑える働きをします。


特にクルーズ船では乗客の快適性が重要なため、この装置は非常に強力です。

大型客船の場合、数メートルもの大きさのフィンが海中で動き、船体を安定させています。


ただし万能ではありません。


スタビライザーが効果を発揮するのは主に横揺れに対してで、

船首が上下する縦揺れ(ピッチング)までは完全に抑えることはできません。


そのため嵐の海では、


・船首を波へ向ける

・速度を調整する

・スタビライザーを展開する


といった操船と装置の両方を組み合わせて、船は嵐をやり過ごします。


巨大な船であっても、海の前では決して無敵ではありません。

だからこそ航海士たちは、常に海と相談しながら船を動かしているのです。

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