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Legendiaより愛をこめて〜ホルムズ危機、そして私たちは恋を知る   作者: おーがすてぃーぬ


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32/80

嵐への備え ―北太平洋ブリーフィング―

船にとって嵐は特別な出来事ではありませんが、それでも準備を怠れば、海は容赦なく牙を向けます。


今回は、レジェンディアのブリッジで行われた「嵐への備え」の回です。

その夜。


レジェンディアでは緊急ブリーフィングが行われた。


ブリッジには主要クルーが集められている。


船長ヘンリー。

リヒト。

そしてミカエラ、アレックス、リサたち航海士。


機関長と通信士も席についていた。


スクリーンには、北太平洋の気象図が映し出されている。


エディが画面を指し示した。


「低気圧の現在地はここです」


シベリア沖で発達した低気圧は、ベーリング海へ向かっていた。


中心気圧は現在――

970ヘクトパスカル。


「アラスカ海域に入るころには、960まで発達する可能性が高い」


ミカエラが小さく息を吐く。


「最悪じゃん」


アレックスが画面を睨んだ。


「この船じゃ、かなりヤバいね」


リヒトは静かに頷く。


「船の安全が最優先だ」


画面に新しい航路が表示された。


カナダ沖。

コディアック島南東沖。


エディが指し示す。


「ここで待機する」


外洋。


十分な sea room を確保できる海域だった。


船長が言う。


「大型タンカーは先行だ」


Grizzly。

Golden Bear。

Black Deal。


三隻はいずれも大型船だ。


重量も船体規模も、クルーズ船とは段違いである。


960ヘクトパスカル級の低気圧でも、

10メートルを超える高波の中を航行できないことはない。


「我々はここで低気圧をやり過ごす」


リヒトが続けた。


「ただし、油断するな」


「嵐の中ではレーダーも効きにくい。最後に頼りになるのは感覚だ」


嵐の海では、波だけが脅威ではない。


潜水艦。


漂流物。


落下したコンテナ。


20フィート。

40フィート。


そして――


クジラ。


すべてが危険になる。


ブリッジの空気が引き締まった。


船長が命じる。


「全乗組員に通達」


「対策を開始する」


レジェンディアは、コディアックへ進路を変えた。



船内では作業が一斉に始まる。


デッキクルーは備品を固定する。


窓の防護シャッター。


家具の固定。


客室の安全確認。


照明は段階的に落とされ、

非常灯だけが残る。


クルーズ船は、ゆっくりと姿を変えていった。


まるで――


戦闘配置に入る船のように。



その頃。


エディはレイコの部屋を訪れていた。


「失礼します」


レイコが振り向く。


「エディ」


エディは静かに言った。


「爆弾低気圧が来ます」


レイコは黙って頷いた。


彼女もすでに気づいていた。


窓の外の空気。


海の匂い。


海を知る者には分かる。


エディは続けた。


「しばらくの間、リヒト様が操船に入ります」


「コディアックで超低速航行を維持することになるため、しばらくお戻りにならないかと」


レイコは小さく息を吐いた。


「船の安全が最優先だもの」


「当然だと思うわ」


エディは正直に言う。


「クルーズ船には、かなり厳しい天候になるでしょう」


そして、少し微笑んだ。


「ですが――」


「クルーズ船というのは、エスコートの腕が良ければ、意外と期待に応えてくれるものです」


「駆逐艦と違ってね」


「ですから、心配はいりません」


レイコは微笑んだ。


「あなたがそう言うなら、安心ね」


エディは室内を見回す。


「ですが、念のため確認しましょう」


「嵐をやり過ごす準備です」


ローテーブル。


サイドテーブル。


鏡台。


すべて固定されている。


カーテンは厚手だ。

閉めておけば問題ない。


ランプはすでにクルーが片付けていた。


照明は壁掛けの非常灯だけ。


エディは明るさを確認する。


室内は少し暗くなった。


エディは頷く。


「これなら完璧です」


「少し不便かもしれませんが」


「あとでクルーが飲料や食糧を届けに来るでしょう」


レイコは窓の外を見た。


北太平洋の夜。


海はまだ静かだ。


だが、その先で――


低気圧は順調に育っていた。




作中に出てきた「960ヘクトパスカル」という数字ですが、これは北太平洋ではかなり強い低気圧です。


このクラスになると、外洋では10メートル近い高波が発生することもあり、船によっては航路変更や待機を検討するレベルになります。


大型タンカーのような重い船は比較的安定して航行できますが、クルーズ船のように上部構造が大きい船は横風や横波の影響を受けやすく、慎重な判断が必要になります。


レジェンディアのような船では、嵐の前に


・家具や備品の固定・窓の防護・照明の制限・船内の安全確認


といった準備が行われます。


次の回では、いよいよ北太平洋の嵐の中へ入っていきます。

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