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Legendiaより愛をこめて〜ホルムズ危機、そして私たちは恋を知る   作者: おーがすてぃーぬ


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30/73

北太平洋の決断―牙を剥く海―

北太平洋の海は、ときどき牙を剥きます。


今回はカナダ沖での判断の回です。船団をどう動かすのか――


レジェンディアのブリッジが、静かに動き始めます。

カナダ沖の海は、夕暮れの光に静かに染まっていた。


さきほどまでムーンカフェデッキで賑やかだったレジェンディアも、今は落ち着いた空気に包まれている。


その一方で、ブリッジには緊張が漂っていた。


通信士が振り返る。


「キャプテン。カナディアン・コーストガードから通信です」


船長ヘンリーが頷く。


「繋げ」


スピーカーから英語の声が流れる。


“Legendia convoy, this is Canadian Coast Guard.”


(レジェンディア船団、こちらカナディアン・コーストガード)


エディが神経を研ぎ澄ませた。


「こちらレジェンディア」


コーストガードの声が続く。


“Be advised.”

(通告します)


“A deep low pressure system is developing in the North Pacific.”

(北太平洋で強い低気圧が発達しています)


ブリッジのモニターに気象図が映し出された。

渦を巻く雲が見えた。その真ん中にははっきりと目があった。


“Currently 970 hectopascals near Siberia.”

(現在シベリア付近で970ヘクトパスカル)


“Expected to deepen to around 960 hectopascals near Alaska.”

(アラスカ海域に到達する頃には960まで発達する見込みです)


ミカエラが顔をしかめた。

「960?!マジかよ…」


アレックスが肩をすくめる。

「あたしムリだよ。」


コーストガードの声は続く。


“Passenger vessels transiting this route may encounter severe sea conditions.”

(この航路を航行する旅客船は、非常に厳しい海象に遭遇する可能性があります)


そして、短く告げた。


“Alter your passage plan.”

(航海計画を変更してください)


わずかな沈黙。


続けて、はっきりと言い直す。

“I repeat.”

(繰り返します)


“Alter your passage plan.”

(航海計画を変更してください)


通信が途切れた。


ブリッジに沈黙が落ちる。


船長ヘンリーが海図を見つめた。


「……命惜しけりゃ言うこと聞けと言うことだな。」


航海士が頷く。

「かなり強い勧告です」


しばらくの沈黙。


だがその時、エディが海図に指を置いた。


「船団を分けます」


全員の視線が集まった。


「低気圧とのバッティングポイントまで、およそ9日程。低気圧は速度を早めながら気圧を下げてくるでしょう。大型タンカーバッティングポイント手前で7ノットに減速すれば、レジェンディアが低気圧を避けるため3ノットの超低速航行でも船団はギリギリ維持出来ます。」


エディは険しい顔で続けた。


「大型船を先行させます。」


モニターに三隻の名前が並ぶ。


Grizzly

Golden Bear

Black Deal


「この三隻です。」


さらに別のラインを指す。


Legendia

Little Bear

Silver Wolf

Black Dober


「こちらはカナダ沖でやりすごします」


ミカエラが腕を組んだ。


「合理的ね」


船長がエディを見る。


「理由は?」


エディは静かに答えた。


「嵐だけではありません。」


海図に赤いラインが引かれる。


「低気圧の予想進路から、国籍不明機が出現するポイントを絞り込みました。」


さらに別のポイント。


「そして、このあたりが潜水艦が潜む可能性が高いポイントです」


リサが息を吐いた。

「変態だ…」


船長はしばらく考えた。


そして頷く。

「よし、大型船団を先行させよう。最大7ノットまで落ちると想定して、計画を変更し、データを送れ。」



“Grizzly, this is Legendia.”

(グリズリー、こちらレジェンディア)


“I’m sending you a marked chart.”

(危険ポイントをマーキングした海図を送る)


通信士が操作する。


衛星回線で電子海図が送信された。


“Possible aircraft approach along this line.”

(不明機が現れる可能性があるのはこのライン)


“Submarine activity likely here.”

(潜水艦が潜むならこの海域だ)


数秒後。


低く落ち着いた声が返ってきた。


“Legendia, Grizzly here.”

(こちらグリズリー)


“Chart received.”

(海図を確認した)


“We’ll take the lead.”

(こちらが先行する)



アラスカ海域まであと9日。

嵐の気配はまだない。




嵐の海では、船の大きさがそのまま強さになるとは限りません。


小さな船は小さな船なりに、大きな船は大きな船なりに、海と向き合います。


台風などの荒天のとき、船たちは安全最優先で行動します。陸から見るとそうでもないように見えて、海ではこんな戦いが静かに繰り広げられています。

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