ちびっこバルカー女王に出会う ―おおぐまと子グマ―
ジブラルタル海峡に入るレジェンディア船団。
世界情勢が不安定になる中、海の上でも船たちはそれぞれの判断で動いています。
今回は、小さな船がレジェンディアの船団に出会うお話です。
ジブラルタル海峡。
岩壁の間を抜けるように、レジェンディア船団は静かに進んでいた。
先頭には巨体のタンカー Grizzly。
左右には Golden Bear と Black Deal。
後方を Silver Wolf と Black Dober が守る。
そして中央。
ネイビーの船体を朝の光に輝かせながら、
Legendia が優雅に進んでいた。
海峡を通りすがるタンカーたちが、その姿を見て次々と汽笛を鳴らす。
――ボオォォ……
長い挨拶の汽笛。
まるで
「ごきげんよう、女王さま」
とでも言うようだった。
アレックスが笑う。
「人気者ね、女王陛下は」
レジェンディアもゆっくりと汽笛を返す。
――ボオォォ……
優雅な長音。
まるで女王の会釈だった。
その時。
遠くから短い汽笛が聞こえた。
――パッ、パッ。
ミカエラが眉をひそめる。
「……なに?」
レーダーに、小さな船影が現れる。
リヒトが双眼鏡を構えた。
「船だ。小さいな……バルカーか?」
「バルカー? 地中海から?」
船団はわずかに速度を落とす。
やがてその船が姿を現した。
小さなバルクキャリア。
船首には、可愛らしい熊のマーク。
船名は――
Little Bear
慌てた様子で短音を鳴らしながら、こちらへ向かってくる。
無線が入った。
震えた声だった。
“Her Majesty… Queen Legendia…”
ブリッジが一瞬、静まり返る。
リサが小さく笑った。
「かわいいわね」
Little Bear は続けた。
“This is BMM bulk carrier Little Bear.”
「ぼくはBMMのバルクキャリア、リトルベアです」
“Requesting permission to join the convoy.”
「船団への合流を要請します」
リヒトは頷く。
「続けてくれ」
Little Bear は息を整え、話し始めた。
“Mediterranean… it’s not safe anymore.”
地中海は、もう安全じゃない。
“Tankers were attacked.”
タンカーが攻撃され、
“Some of them were burning.”
何隻も燃えていたんだ。
リヒトが息を飲む。
ミカエラが低く呟く。
「……マジかよ」
リサが舌打ちする。
「クソったれ」
アレックスはレーダーを睨んだ。
「地中海がそこまでとはね……」
Little Bear は続ける。
“Ships were scattering everywhere.”
船はあちこちへ散り、
“Everyone was trying to escape.”
皆、必死に逃げていた。
そして小さく言った。
“I was alone.”
ぼくは一人だった。
“Then Cristania contacted me.”
そのとき。
クリスタニアから通信が届いたんだ。
Little Bear は、その声を再現するように続けた。
“Little Bear.”
“Head for Gibraltar.”
(ジブラルタルへ行くんだ)
“Legendia convoy is there.”
(レジェンディアの船団がそこにいる。)
“You’ll be safer with them.”
(君はその方が安全だ)
沈黙。
その時、低く落ち着いた声が無線に入った。
Grizzly だった。
“I’m glad you’re safe.”
「無事でよかった」
“Don’t worry.”
「心配するな」
“You’re not alone anymore.”
「もう一人じゃない」
その瞬間。
船団が動いた。
Black Dober が外側へ。
Silver Wolf が静かに間隔を広げる。
小さな航路が開く。
まるで、
――ここへ来い。
そう示すように。
Little Bear の声が震える。
“Oh my God…”
“I’m alive…”
すすり泣く声。
“Thank you…”
小さなバルカーは、ゆっくりとその隙間に入り、
Legendia の船団に加わった。
子熊は――
ついに群れに入った。
海の上では、船はときどき群れになります。
大きな船も、小さな船も、互いに位置を取り合いながら航海します。それは単なる航行ではなく、どこか「守り合う」ような感覚にも似ています。
今回のリトルベアは、地中海の出来事から生まれたエピソードでした。
書きながら、ニュースを見ているのが辛かったです。




