表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Legendiaより愛をこめて〜ホルムズ危機、そして私たちは恋を知る   作者: おーがすてぃーぬ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/29

エレクトラの教え ―愛を運ぶ船―

三人娘の女子会のあと、少し静かな時間です。


今回は、リヒトの過去に少しだけ触れる回になりました。レジェンディアにかつて乗っていたダンサー、エレクトラの話です。


彼女の言葉は、リヒトの中にずっと残っていました。


「この船は愛を見つけられる船だ」


レジェンディアがどんな船なのか。それを少しだけ感じてもらえたら嬉しいです。

三人娘が去ると、部屋は急に静かになった。


さっきまでの賑やかな笑い声が嘘のようだ。


レイコはソファに座り、小さく息をついた。


「……嵐みたいな人たちね。」


リヒトは苦笑する。


「海軍ですから。」


「納得だわ。」


しばらく沈黙が流れる。


レイコは視線を落とし、何か考えるように指先を見つめていた。


やがて顔を上げる。


「ねぇ。」


「なんでしょう。」


「エレクトラさんって、どんな人だったの?」


その名前に、リヒトは少し目を細めた。


「三人から聞いたのですね。」


「ええ。」


レイコは頷く。


「あなたがダンスバトルで組んだ人なんでしょう?」


リヒトはソファの背にもたれた。


少し遠くを見るような表情になる。


「……美人でしたよ。」


「でしょうね。」


「それに、仕事に関しては恐ろしく真面目でした。」


レイコは小さく笑う。


「ダンサーなのに?」


「だからです。」


リヒトは静かに続けた。


「プロ意識がとても高かった。」


少し考えるように言葉を選ぶ。


「特にダンスに関しては……」


一瞬、苦笑する。


「恐ろしいほど厳しかったですね。平手打ちも一度や二度ではありませんでしたよ。」


レイコは興味深そうに身を乗り出した。


「そんなに?」


リヒトは頷く。


「一度だけ、彼女が本気で怒ったことがあります。」


「何をしたの?」


レイコの問いに、リヒトは少し苦笑した。


「私が、ゲストの恋愛話を軽く流した時です。」


レイコは首を傾げる。


リヒトはゆっくりと思い出す。

その夜のことを。


そして静かに言った。


「彼女は言いました。」


低い声で、その言葉を再現する。


「DMCがどうだったかは知らない。」


「でも、この船は違う。」


レイコは黙って聞いている。


リヒトは続けた。


「この船は――」


少し間を置く。


「愛を見つけられる船だ。」


レイコの瞳がわずかに揺れた。


リヒトはさらに言う。


「そして彼女はこう言いました。」


少し笑いながら。


「“あんたがそれを見つけられなかったら――”」


「“レジェンディアは愛を運ぶ船にならない!”」


部屋に静かな空気が流れる。


レイコは小さく呟いた。


「……厳しい人ね。」


「ええ。」


リヒトは頷く。


「ですが。」


少し視線を落とし、そしてレイコを見る。


「最初のパーティーであなたに会った時。」


「その言葉を思い出しました。」


レイコは驚いたように瞬きをする。


「私?」


「ええ。」


リヒトは静かに続けた。


「……こういうことなのか、と。」


レイコの頬がほんのり赤くなる。


リヒトは柔らかく笑った。


「彼女がいなければ。」


少しだけ間を置く。


「あなたを好きだと思う自分にさえ。」


「気づけなかったでしょう。」


レイコは何も言えなかった。


ただ、リヒトを見つめている。


部屋の外では、レジェンディアのエンジン音が静かに響いていた。


北大西洋の海を、船は進んでいる。


レイコは小さく笑った。


「エレクトラさんに会ってみたかったわ。」


「マイアミにいます。」


「そう。」


レイコは立ち上がり、窓の外を見る。


夜の海が広がっていた。


「……ねぇ、リヒト。」


「はい。」


レイコは振り向く。


少し照れた顔で。


「あなた、ちゃんと見つけたのね。」


リヒトは首を傾げる。


「何を?」


レイコは笑った。


「エレクトラさんの言ってたもの。」


リヒトはゆっくり歩み寄る。


そして言う。


「ええ。」


静かに。


「見つけました。」


レイコの手をそっと取る。


「あなたです。」



ここまで読んでくださってありがとうございます。


レジェンディアの航海は、まだ北大西洋の途中です。この先はいよいよ船団航行やアラスカ航路に入っていきます。


海の緊張と、船の上の穏やかな時間。その両方を書いていけたらと思っています。


引き続き、レジェンディアの航海を見守っていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ