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Legendiaより愛をこめて〜ホルムズ危機、そして私たちは恋を知る   作者: おーがすてぃーぬ


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15/29

光の中で ―お返しです―

バルセロナ寄港の午後。


昨夜の出来事を思い出してしまうレイコと、

それを見守る執事エディ。


そして航海士リヒトに、

思いがけない「お茶会」の招待が届きます。


夕暮れの光の中で、

小さな「お返し」が交わされる回です。


皆様、どうぞ悶絶してください。


バルセロナの街は、夕暮れの光に包まれていた。


レイコはショーウィンドウの前で足を止める。


小さな宝飾店だった。


ガラスの向こうで、金色のペンダントが柔らかく光っている。


レイコは小さく呟いた。


「……綺麗ね」


隣に立つエディが目を向ける。


「お気に召したのですか?」


レイコは少しだけ笑いながら呟いた


「……まるで、あの人の髪みたいにね。」


エディは一瞬沈黙した。


そして穏やかに尋ねる。


「あの人とは…航海士ですか?」


レイコは慌てて顔を背ける。


「お、思い出しただけよ!」


その瞬間、昨夜の出来事が頭をよぎる。


情熱のタンゴ。


低く響く音楽。


壁際での距離。


そして――


頬へのキス。


レイコは心の中で呻いた。


(……やってしまったわ)


エディは静かに微笑んでいた。


「それなら、航海士をお招きしましょう。贈り物としてお渡ししては?」


レイコが振り向く。


「え?」


「彼はクリスタニアの船長候補ですし、お招きすることは不自然ではありません。」


エディは穏やかに続けた。


「まぁ、レイコ様がお呼びになれば、ブリッジから飛んできそうな気はしますが。」


レイコは少し考える。


そして頷いた。


「……そ、そうね」


慌てたように言う。


「迷惑かけちゃったし。じ…じゃあ、お茶会の準備をしなくちゃ。手伝って!」


エディは静かに一礼した。



レイコは急ぎ足でレジェンディアに戻った。





レイコのスイート。


テーブルには紅茶と菓子が用意されていた。

アールグレイの香りが漂よう。


リヒトは少し困惑した様子で座っている。


レイコは窓の外を見ていた。


外は午後の陽射しが差し込み、部屋は金色の光に包まれていた。


「……昨夜は…ありがとう。それから、ごめんなさい。」


レイコが言う。


リヒトは静かに答えた。


「務めですので。」


「…ねぇ、あなたはどうしてBMMに来たの?DMCはこの世界では大帝国よ。そこを辞めてまで来たのだもの、理由があるんでしょ?」


レイコは振り向かず尋ねた。


「恋したの?」


リヒトは黙った。


その沈黙のあと、レイコが振り向く。


「恋…。そうですね。そうかもしれません。」


リヒトはゆっくり答えた。


「DMCは……奔放すぎたのです。」


レイコが眉を上げる。


「奔放?」


「ええ。船が好きだと言いながら」


短い沈黙。


「クルーと深い仲になるゲストも多い」


リヒトはレイコを見た。


「あなたもそういう方だと思っていました」


レイコはすぐに言い返す。


「失礼ね」


レイコは振り返って言った。


「私は、船を愛してるから株主なだけよ。こっちへ来て。」


レイコはそのままリヒトに手招きした。


リヒトがレイコのもとへ近づくと、レイコは金の小さなペンダントを持っていた。


「町でね、これを見たらあなたを思い出したの。……昨夜の…お詫びよ。」


口ごもりながら、レイコはリヒトにペンダントをつけてやる。



リヒトは少しだけ笑った。


「では」


一歩近づく。


「あなたが愛しているのは、本船だけでしょうか」


レイコが言葉を失う。


その瞬間だった。


リヒトは不意に近づき、


レイコにそっと口づけた。


ほんの一瞬。


リヒトはすぐに背を向ける。


「お返しです」


静かに礼をする。


「では、失礼します」


そして部屋を出ていった。


 


ブリッジに戻ると、何故か様子がおかしい。


副航海士がしきりに唇に指を当てている。


別の航海士も同じ仕草をする。


「……?」


リヒトが眉をひそめる。


その時、船長が顔を上げた。


「ヴェルナー」


「少し疲れているようだな」


リヒトは首を傾げる。


船長は苦笑した。


「部屋で少し休んでくるといい。」


一瞬の沈黙。


「……イエッサー」


リヒトは怪訝な顔をしながら敬礼し、ブリッジを出た。


 


自室に戻り、布団鏡を見る。


そして固まった。


唇に


わずかな赤。


レイコのリップだった。


リヒトは頭を抱える。


「……バレちまった」


 

その頃。


レイコはベッドに潜り込んでいた。


枕に顔を押し付ける。


「んもう!」


 


ラウンジでは、エディが紅茶を飲んでいる。


窓の外の海を見ながら、静かに呟く。


「……どうやら、うまくいったらしい」


 


その時だった。


船内アナウンスが流れる。


「乗客の皆様にお知らせいたします」


エディは顔を上げる。


「本船は情勢悪化に伴い、バルセロナ出港を前倒しいたします」


紅茶の湯気がゆっくり揺れる。


レジェンディアは、


まもなく海へ戻る。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


今回は少しだけ穏やかな寄港の時間……

のはずだったのですが、

レジェンディアの船内では相変わらず波が立っています。


そして物語の外では、

世界の海も静かではありません。


バルセロナを発つと、レジェンディアは再び外洋へ向かいます。


恋と航海、そして世界情勢。


それぞれの波が、少しずつ重なり始めています。


次の航海も、どうぞお付き合いください。

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