表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のんびり暮らすはずが、隣人全員チートでした ~仕方なく俺も覚醒します~  作者: 妙原奇天


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/20

第7話 暴走する共鳴塔、国を揺らす

 王都の夜空が赤く染まっていた。

 爆音のあと、塔の先端から白い閃光が伸びる。

 王都の象徴である魔導研究塔――魔力制御の中枢施設だ。

 そこから、確かに聞き覚えのある言葉が風に乗って届いてくる。


《共鳴開始……》


「……俺のスキルだよな、これ。」

 思わずつぶやく。

 ジークが青ざめて叫んだ。

「おいリオ! お前、また何かやったのか!?」

「やってねぇよ! 寝てただけだよ!」

「寝てる間に発動すんな!!」


 衛兵の列が走り抜ける。

 空の上で、白い光が幾重にも裂けていく。

 セリアが夜空を仰ぎ、低く唸った。

『あの塔の波動……確かに汝のものに似ている』

「似てるじゃなくて、完全にコピーされてないか?」

『共鳴は、感情や記憶に繋がる力。誰かが、汝の“残滓”を利用しているのだろう』

「残滓って言うな!」


 焦燥とともに、胸の奥がざわつく。

 共鳴スキルは自分の意思で使っているわけじゃない。

 それなのに、他人が模倣できるほど情報が漏れている。

 ――何かがおかしい。


 ガルドが荷車の後ろから顔を出した。

「行くんだろ?」

「いや、行かない。」

「行くだろ。」

「……行くのか。」

 気づけば、また三人と一匹セリアに囲まれていた。

 抗う余地は、いつもながらゼロだ。



 魔導研究塔のふもとは混乱していた。

 魔法使いと衛兵たちが押し合い、建物の中からは唸り声のような音が漏れてくる。

 塔の表面に走る紋章が赤く点滅し、壁の一部が生き物のように脈打っていた。

 熱気と光が肌を刺す。


「止めろ! 誰か魔力遮断を!」

「駄目です、塔が意思を持ったように反応を!」

「まさか、“自己共鳴”が発動しているのか!?」


 近くにいた研究員らしき男が叫ぶ。

 俺はその言葉に反応した。

「自己共鳴?」

 男は振り向き、俺を見るなり目を見開く。

「あなたは……賢者リオ・クラウス殿!」

「いや、その肩書きもう外したいんだけど!」

「お願いです! 塔があなたの魔力波形を感知して、共鳴を求めています!」

「求められても困る!」


 塔の光がさらに強くなる。

 まるで“何か”を呼んでいるようだ。

 嫌な予感しかしない。


 ジークが剣を構えた。

「リオ、あれをぶっ壊すか?」

「いや、壊したらたぶん王都ごと消える!」

「じゃあどうすりゃいい!」

「知らねぇよ、俺に聞くな!」


 セリアが前に出た。

 彼女の体から青い光が滲み、空気が冷たくなる。

『我が声で呼びかけよう。共鳴の根を見つける』

「頼む、俺がやるとまた爆発するからな!」


 セリアの鱗が淡く光る。

 その光が塔の表面に触れた瞬間、世界が静止した。

 時間が止まったかのような静寂。

 次に響いたのは、幼い声だった。


《……たすけて……》


 全員が息をのむ。

 光の中から、子どものような影が浮かび上がる。

 透明な体、淡い瞳。

 それは人ではなく、塔の“意識”そのものだった。


《こわい……消えるのはいや……》

 ソフィアが囁くように言った。

「共鳴が……感情を生んでる?」

『そうかもしれぬ。塔は魔力を集める装置。感情を持った魔力が一定量集まれば――心を持つ』

「つまりこの塔、“俺のスキル”が原因で自我を持ったってことか?」

『そうなるな。お前の平穏願望、案外感染力がある』

「感染しないでいい願望なんだけどな!」


 光の中で、子ども――塔の意識が泣いていた。

《みんな、怒ってる……私が壊れるって……いやだ……》

「……あぁもう。」

 俺は一歩前に出た。

「怖くない。壊さないよ。」

《……ほんと?》

「ほんとだ。俺は“静かに暮らしたい”。だから、お前にも静かに眠ってほしい。」


 塔の光がゆっくりと弱まり、震えが止まる。

 最後の瞬間、声が小さく笑った。

《ありがとう……》


 静寂が戻る。

 風が塔を通り抜け、空が青く晴れていく。

 魔導師たちは歓声を上げた。

「共鳴停止! 制御成功!」

「塔の暴走、収束しました!」


 俺はその場にへたり込んだ。

「……また勝手に救世主扱いされるんだろうな。」

 ジークが肩を叩いた。

「まぁ、結果的に救ったんだからいいじゃねぇか。」

「いや、救ったつもりはないんだけどな。」

『それが平穏の形だろう。争わずして静める。立派な賢者の所業だ。』

「やめろ、その呼び方マジで呪いに聞こえる。」


 遠くで鐘が鳴る。

 王都の人々が空を見上げていた。

 だが、俺の胸の中には奇妙なざわめきが残っていた。

 あの“共鳴”は、意識を生んだ。

 なら、この力はいったい何なのか。

 俺の“平穏”は、誰かの心を作ってしまうほどのものなのか。


 風が吹く。

 セリアが穏やかに言った。

『リオ。汝の願いが、また新たな世界を揺らすだろう』

「……それ、フラグってやつだろ。」

『我は学んだ。人の言葉でそれを“次回予告”と言うらしいな』

「使い方間違ってるぞ!」


 ――平穏、またも爆散。


次回予告:「第8話 “平穏感染”と呼ばれた男」

王都に広がる“共鳴現象”の余波。

人々が次々と“リオの影響”を受け始め、世界の価値観が変わり始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ